脳卒中というと縁遠い病気と感じるかもしれませんが、若い年代でも起こり得ますし、将来を考えると早いうちから気をつけておきたい病気のひとつです。著名人がこうした病気にかかって後遺症に悩む例も知られています。ふだんの生活も関係するとわかってきており、海外の研究では飲酒との関係が指摘されています。注意すべきは飲み過ぎです。
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アルコールの飲み過ぎの問題とは
従来、たくさんアルコールを飲むほどに、脳卒中を含めた心臓や血管の病気になりやすいのではないかと考えられていました。脳卒中は、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血を含んだ病名です。過去の研究では、自己申告のデータに基づいて、飲酒量と病気の関係が指摘されてきました。
このたびスウェーデンのウプサラ大学の研究グループは、飲酒が本当に脳卒中などの心臓や血管の病気につながるのかについて、より偏りのないデータから調べる研究を行いました。英国50万人の遺伝的な情報も含めた英国バイオバンクの情報を使い、飲酒の量によって脳卒中などのリスクが変わるかを調べました。
「メンデルランダム化」という手法を使うことで飲酒が脳卒中などの原因になるのかを分析しています。94の「一塩基多型(SNP)」と呼ばれるアルコールの消費と関係した遺伝子に注目し、遺伝情報に基づいて飲酒のリスクを計算するという新しい方法を採用しています。
飲酒によって血管の病気が増える
こうした分析から判明したのは、飲酒量が増えると「脳卒中」、足の血管などが詰まってしまう病気である「末梢動脈疾患」などのリスクが高まること。ほかにも、心臓に血液を送る血管が詰まってしまう「冠動脈疾患」、心臓の筋肉がけいれんしてしまう「心房細動」、全身の血液を送る大動脈が膨張してしまう「腹部大動脈瘤」も関連している可能性が確認されました。
研究グループは今回の研究から、飲酒は脳卒中などの病気を引き起こす直接的な原因になっていると指摘します。たまたま関連性が見られるばかりではないとして、問題をより重くとらえたほうがいいとアドバイスしています。自宅での飲酒など、飲酒量が増えていると自覚している人は、この研究でリスクが指摘された病気に特に気をつけたいところです。
<参考文献>
Genetic study ties higher alcohol consumption to increased stroke and PAD risk
https://newsroom.heart.org/news/genetic-study-ties-higher-alcohol-consumption-to-increased-stroke-and-pad-risk
Larsson SC, Burgess S, Mason AM, Michaëlsson K. Alcohol Consumption and Cardiovascular Disease: A Mendelian Randomization Study. Circ Genom Precis Med. 2020 Jun;13(3):e002814. doi: 10.1161/CIRCGEN.119.002814. Epub 2020 May 5. PMID: 32367730; PMCID: PMC7299220.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32367730/
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCGEN.119.002814