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適度な飲酒でも体への影響はネガティブ? 海外研究がお酒の「代謝物」に注目

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飲酒

お酒を適量たしなむ場合の健康への影響、特に心臓や血管への影響に関する研究では、さまざまな結果が出ていて、はっきりとした結論が出ていません。しかし、このたび海外研究において解明の手がかりになりそうな注目すべき発見がありました。お酒が体内で代謝されてできるさまざまな物質を分析すると、心臓や血管の病気になるリスクを上げるものと下げるものが確認されたのです。適量でもネガティブな変化は見られるようです。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

飲酒は体にどのように影響する?

アルコール

私たちの体は代謝活動を通して、アミノ酸や糖などのさまざまな化合物を作り出しています。これらは「代謝物」と呼ばれ、健康状態や病気の状態を示す重要な指標として利用されています。

これは飲酒が病気に与える影響を理解するうえでも同じです。従来、お酒が代謝されたあとにできる代謝物についての研究も行われてきました。

今回、米国国立衛生研究所(NIH)を含む研究グループは、20年にわたる長期の飲酒がどんな体内の代謝物と関連するのか、またそれらが心臓や血管の病気と関連するのかを検討。米国で行われている心臓や血管の病気に関する大規模な追跡研究のデータに着目して、分析しました。

分析に利用した追跡研究では、4〜8年ごとに詳しい健康チェックと飲酒の質問を含むアンケートをしてデータを集めています。お酒はビール、ワイン、リキュールに分け、それぞれの1日平均摂取量と、それらの合計を計算し血液中に見られる代謝物200種類以上との関連性をチェック。参加者およそ2500人のうち600人以上が、研究期間中に心臓や血管の病気になっていました。

お酒の種類や性別によっても影響は異なる

アルコール

こうして研究で確認されたのが、お酒を長期間にわたって飲むことで生じる代謝物には、健康にとってポジティブなものと、ネガティブなものがあるということです。

具体的には、血液中の60種類の代謝物が長期にわたる飲酒と関連し、そのうち7種は長期間の適度の飲酒による心臓や血管の病気になるリスク増加に関連。3種はリスク低下に関連していることがわかりました。

なお、今回の研究では適度の飲酒量を女性でビール1日350ml、ワイン120ml、アルコール度40%のリキュール44ml以下とし、男性はそれぞれ2倍としていますが、このような代謝物の現れ方はお酒の種類や性別によって違いも見られました。たとえば、9種類の代謝物はビールよりも、ワインやリキュールのほうが強い関連性がありました。言い換えれば、それらのお酒を多く飲むほど、代謝物も多く現れるということです。また、13種類の代謝物は女性のほうが男性よりも強い関連性が見られました

適度な飲酒量は体にとって好ましいといわれることがありますが、今回の研究結果からは、ポジティブな変化もネガティブな変化も両方が複雑に見られるということがわかりました。病気と関連するネガティブな変化も起きている点は注意したほうがよいでしょう。

また、将来的にさらに研究が進むと、代謝物を調べることでお酒の影響をより深く理解できる可能性もあります。こうした発見を通じて、お酒とよりよい関係を築くことができるのかもしれません。

<参考文献>

Alcohol Consumption May Have Positive and Negative Effects on Heart Disease Risk
https://www.bu.edu/sph/news/articles/2023/alcohol-consumption-may-have-positive-and-negative-effects-on-cardiovascular-disease-risk/

Li Y, Wang M, Liu X, Rong J, Miller PE, Joehanes R, Huan T, Guo X, Rotter JI, Smith JA, Yu B, Nayor M, Levy D, Liu C, Ma J. Circulating metabolites may illustrate relationship of alcohol consumption with cardiovascular disease. BMC Med. 2023 Nov 16;21(1):443. doi: 10.1186/s12916-023-03149-2. PMID: 37968697; PMCID: PMC10652547.
https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-023-03149-2

飲酒量はどのくらいの量が健康にいい? 海外研究が注目するストレスと心臓・血管疾患への影響とは
https://fytte.jp/news/healthcare/141653/

やっぱり飲酒は控えたほうがいい? 心臓に与える影響を調べた海外研究の結果は…?
https://fytte.jp/news/healthcare/171144/

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