新型コロナウイルス感染症の影響で生活が大きく変化して、それに伴って気持ちが沈みがちという人も増えているかもしれません。実際に国内でも減少傾向にあった自殺が増えていることが問題視されるようになっています。海外の研究から、新型コロナウイルス感染症が心理的な苦痛や不安などメンタルへの影響が明らかになっています。注意すべき点とは―?
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新型コロナが招くストレスとは?
新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が国内でも3桁となる日が続き、大幅な増加ではないながらも長続きする気配を見えています。生活に制約があり、経済活動も滞るなかで、人々にはストレスの負担がかかってきます。うまく解消できる人であればいいですが、対処しきれない人ではメンタルの問題を引き起こす恐れもあります。
米国マイアミ大学の研究グループは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きた最初の1か月について心理的苦痛の状況を分析するため、米国在住2000人以上を対象にオンライン調査を行いました。調査票は感染者と死亡者数が指数関数的に増えていた時期の2020年3月22日から26日の間に行われました。
個人の心理的苦痛を測定する尺度「ケスラー10」を使って点数化。さらに、新型コロナウイルスについてどれだけ恐れているかを7項目の尺度から測りました。ここからわかったのは、心理的苦痛の点数が高まっているということ。なかでも、ヒスパニック系と精神疾患の診断を受けていた人で影響を受けやすいことも判明。うつ病、不安、アルコールや薬物の乱用といった問題を抱える人は特に注意すべきだといえそうでした。
薬物依存などのある人も影響を受けやすい
さらに別の米国ヒューストン大学の研究グループは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関連した心理的な問題と薬物、アルコール、たばこなどの中毒性の問題について検証しました。新型コロナウイルス感染症が起こるなかで、日本でも麻薬の問題が注目されたことがありました。麻薬に限らず、アルコールやたばこなどの依存の問題に新型コロナウイルス感染症は悪影響をおよぼす可能性が海外では指摘されていました。
研究グループは、160人の薬物依存経験者と薬物依存が始まった人を対象に、新型コロナウイルス感染症に関連した心配や恐怖がどう現れてくるのかを調べました。対象者のうち5.8%は新型コロナウイルス感染症と診断されました。そのうえで、コロナ禍における影響によって、アルコールやたばこ、薬物などへの依存が強まり、不安がある人では影響が出やすいと考えられました。
研究グループは新型コロナウイルス感染症の影響でメンタルの問題が大きくなっており、こうした依存の問題への対処が必要と指摘しています。不安などがあって耐えられず自分で解決できないときには、施設に相談に訪問するなどは意味があるといえそうです。
<参考文献>
Pandemic Sets Off Future Wave of Worsening Mental Health Issues
https://uh.edu/news-events/stories/2020/september-2020/09282020-zvolensky-anxiety-covid-two-reports.php
French MT, Mortensen K, Timming AR. Psychological Distress and Coronavirus Fears During the Initial Phase of the COVID-19 Pandemic in the United States. J Ment Health Policy Econ. 2020 Sep 1;23(3):93-100. PMID: 32853158.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32853158/
Rogers AH, Shepherd JM, Garey L, Zvolensky MJ. Psychological factors associated with substance use initiation during the COVID-19 pandemic. Psychiatry Res. 2020 Aug 18;293:113407. doi: 10.1016/j.psychres.2020.113407. Epub ahead of print. PMID: 32827993; PMCID: PMC7434361.
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https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165178120322563