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最近、テレビや雑誌でよく見かける「スーパー大麦」。腸内環境をよくするということで便秘がちな人はもちろん、美容や健康に気を遣う人たちにも注目されています。そこで、スーパー大麦を知らない人のために、スーパー大麦とは何なのか、普通の大麦とは何が違うのかを、帝京平成大学 健康メディカル学部の松井輝明教授に伺ってみました。
3つの食物繊維が大腸の入口から出口まで全体に届き、善玉菌のえさになる!
スーパー大麦は、選び抜かれた大麦を品種改良し、さらにパワーアップさせたもの。「β-グルカンやフルクタンといった食物繊維が多く含まれ、食物繊維の含有量は大麦の約2倍、玄米の約7倍にもなります。ほかにも、第3の食物繊維と呼ばれているレジスタントスターチが、大麦の約4倍も含まれているのです」(松井先生)
スーパー大麦の最大の特徴は、この3種類の食物繊維が3段階で腸の奥まで届くこと。「食物繊維は善玉菌のえさになることで、善玉菌を増やすのですが、一般的な大麦に含まれる食物繊維は、ほとんどが大腸の奥まで届きません。ところが、スーパー大麦は食物繊維が3段構造になっているので、大腸の入り口ではフルクタン、中間でβ-グルカン、大腸の奥ではレジスタントスターチが善玉菌のえさとなり、腸内全体の善玉菌を増やすのです」
短鎖脂肪酸が大腸内でつくられ、腸だけでなく、体にもよいことをする!
善玉菌が増えると発酵が盛んに行われ、腸内で短鎖脂肪酸がたくさんつくり出されます。「短鎖脂肪酸には、腸の働きをよくして便秘を改善するほか、大腸のバリア機能を高めて肥満を予防したり、免疫力を高めたりする働きがあります。また、糖尿病、高脂血症、動脈硬化といった生活習慣病やうつなどの予防効果にも期待が寄せられています」
ヒトの大腸内でつくり出される短鎖脂肪酸は、主に酢酸、プロビオ酸、酪酸です。「酢酸はお酢の主成分ですが、だからといってお酢を直接飲んでも意味がありません。それだと、短鎖脂肪酸は胃や小腸で分解、吸収されてしまうため、短鎖脂肪酸としての働きは得られないのです。スーパー大麦は、食物繊維の一部が消化されずに大腸の奥まで届き、そこで短鎖脂肪酸がつくり出されて体内へ再吸収されるので、体によい効果が得られるのです」
大腸内を酸性にして、善玉菌が棲みやすい腸内環境に整えてくれる!
腸内環境をよくするには、ヨーグルトや発酵食品など、善玉菌を多く含む食品を摂取するのが一般的ですが……。「土壌が悪い畑に種を植えても食物は実りにくいもの。それと同じで、まずは腸で善玉菌が育ちやすい環境をつくってあげるほうが先決です。善玉菌は腸内のphが酸性の環境を好みますが、短鎖脂肪酸が増えると腸内は酸性に傾き、善玉菌が育ちやすい環境になります。さらに、大腸の奥には、入り口の10倍にもあたる約1000兆個の細菌が存在しています。スーパー大麦は、腸内細菌がたくさん生息する腸の奥まで善玉菌のえさを届けるので、効率的に腸内環境を整えることができるのです」
スーパー大麦を1日12g、2週間摂取することで腸内環境に改善がみられたという研究結果が出ているので、気になる人は、まずは2週間を目安に摂取してみましょう。
文/オフィス・エール イラスト/藤井昌子