過敏性腸症候群は、腹痛のほか、便秘や下痢などの腸の不調に悩まされる病気。仕事や勉強などに支障が及ぶので、日常生活を送るうえで問題になります。海外の研究では、こうした腸疾患がどのような原因で起きているのかが詳しく調べられています。食べ物との関係について新しい発見がありました。
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どうして腸のトラブルが起こる?
世界的見ると、過敏性腸症候群に悩まされる人は最大でおよそ20%にも及ぶといいます。日本でも少なくない人が症状をもっていると見られます。潜在的に病気を抱えている人もいるかもしれません。
その症状は、便秘や下痢のほか、腹痛などの腸のトラブルです。特定の食物アレルギーの症状が現れるわけではないのですが、腸内で食べ物に対する免疫反応が起き、症状が現れるメカニズムがわかっていました。症状を起こさないために、食事療法やグルテンフリーといった食事への配慮も行われています。
このたびベルギーのレーベン大学の研究グループが注目したのは、食中毒など感染症の影響です。これまでに食中毒のあとに症状が始まったと報告する人が多かったためです。健康な腸では食品への免疫反応は起きないので、感染症の影響によって腸に変化が起きるのではないかと考えたのです。このたび動物実験により詳しく調べました。
食中毒などが引き金に?
ここからわかったのは、過敏性腸症候群の引き金として感染症が関係する可能性です。感染症をきっかけとして、腸が食品に対して免疫反応を起こすようになったのです。健康な腸では見られないのですが、感染症が起きたあとには、腸内にある「肥満細胞」というアレルギーに関係する細胞が反応して、ヒスタミンという物質を出すようになっていました。これによって腹痛が起きていたのです。
さらに、研究グループは、過敏性腸症候群の人の腸でも、グルテン、小麦、牛乳などといった食品に反応するかを調べています。すると、健康な人では見られなかった免疫反応が起こることが確認できました。こうした研究から、過敏性腸症候群は、弱いアレルギーの症状が現れたものである可能性があると研究グループは指摘します。ヒスタミンを抑える薬で症状が治まることと一貫性があり、これから新しい治療を生み出すヒントになるよう。過敏性腸症候群に悩んでいるならば、やはり食べ物に気をつけるのは意味があるかもしれません。
<参考文献>
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https://www.nature.com/articles/s41586-020-03118-2