妊娠出産は女性にとって命がけの大仕事。出産を無事に終えてからも、赤ちゃんに昼夜つきっきりでいるのは心身の負担を大きくしがちです。それがひどくなると産後うつとなりますが、それは、母親はもとより、赤ちゃんにも大きな影響があることがわかっています。海外研究によると、産後うつに対する認知行動療法により、母子への悪影響が最小限にできそうだと報告されています。早めの対処が大切になりそうです。
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産後うつの影響とは?
出産後は授乳や夜泣きなどで睡眠時間が大幅に削られる毎日。出産前後のホルモンバランスの大きな変動もあり、母親のメンタルは必然的に不安定になります。産後うつに悩む母親は数多いのですが、産後うつは赤ちゃんにも影響は小さくないことがわかっています。具体的には、脳の機能が影響を受け、そのために成長後に感情や行動をコントロールする能力が低下してしまう可能性があるのです。そのため、産後うつに早めに手を打つことが大切と考えられています。
カナダのマクマスター大学の研究グループは、産後うつの母親に対する治療により、母子への悪影響がどう改善するかを検討しました。対象は、産後うつの治療を受けた母親の子ども40人と、健康な母親の赤ちゃん40人。産後うつには、9週間にわたる認知行動療法が施されました。認知行動療法は、カウンセリングを通して、認知・行動パターンを整えていく治療です。治療前後に、母親(およびパートナー)が赤ちゃんの行動についての質問票に回答。赤ちゃんの状態にどのような変化が見られるかを確認しました。
ママのうつが治ると、赤ちゃんも元通り
こうしてわかったのは、産後うつを治すことで、赤ちゃんの感情や行動がより健康的に変化するということ。健康な母親から生まれた子どもと変わらない、正常な状態になることが確認されました。
研究グループは、短期間の治療によって、母親が抱えた問題が子どもに受け継がれるリスクを減らせる可能性があると指摘しています。産後うつの悩みは抱え込んでしまわず、早期の対処が大切。赤ちゃんへの悪影響を防ぐことを考えると、つらいときには早めの相談を考えるのがよいかもしれません。
<参考文献>
Treating moms with postpartum depression helps their babies’ brains
https://brighterworld.mcmaster.ca/articles/treating-moms-with-postpartum-depression-helps-their-babies-brains/
Krzeczkowski JE, Schmidt LA, Van Lieshout RJ. Changes in infant emotion regulation following maternal cognitive behavioral therapy for postpartum depression. Depress Anxiety. 2021 Jan 19. doi: 10.1002/da.23130. Epub ahead of print. PMID: 33464686.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/da.23130