炎症性腸疾患と呼ばれる腸の難病のひとつ「クローン病」に悩まされている人は少なくありません。難しいのは、その原因がはっきりしないこと。このたび海外研究から、症状の引き金になる要因について新しい発見がありました。病気を治す治療につながるでしょうか。
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クローン病は、日本ではおよそ4万人が悩まされている病気。男女比は2:1で、女性ならば、10代後半に多いとわかっています。食生活が影響していると考えられており、動物性脂肪やたんぱく質を多くとっている人がかかりやすいとされます。
このたびカナダのマクマスター大学と米国ハーバード大学の研究グループは、クローン病の引き金になる可能性のある要因として、腸内の大腸菌の関与について詳しく分析をしました。大腸菌とひと口に言ってもさまざまな種類があることがわかっており、そのなかでも「付着性侵襲性大腸菌(AIEC)」と呼ばれている菌との関係性について調べたのです。これは、クローン病にかかっている7~8割の人の腸内に見られるタイプとなっています。
症状の引き金になるのは…
こうしてわかったのが、クローン病の腸のなかで細菌が増えやすくなる仕組みが存在しているようだということ。大腸菌のもっている特定の遺伝子があると、腸のなかで「バイオフィルム」という膜のようなものを作り出して、細菌を免疫系や薬から守ってしまうのです。結果として、このバイオフィルムのなかで細菌が増え続けてしまうと考えられました。
クローン病は腸内細菌への免疫系の炎症反応をスイッチオフができないのが問題になります。そのために下痢や体重減少、栄養失調が起きます。炎症を和らげるのが治療になっていますが、根本的な治療法がまだありません。今回のような異常な細菌をとり除くことができれば、病気を解決できるのかもしれません。
<参考文献>
クローン病(難病情報センター)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/81
McMaster-led team unlocks possible Crohn’s disease trigger
https://brighterworld.mcmaster.ca/articles/mcmaster-led-team-unlocks-possible-crohns-disease-trigger/
Elhenawy W, Hordienko S, Gould S, Oberc AM, Tsai CN, Hubbard TP, Waldor MK, Coombes BK. High-throughput fitness screening and transcriptomics identify a role for a type IV secretion system in the pathogenesis of Crohn’s disease-associated Escherichia coli. Nat Commun. 2021 Apr 1;12(1):2032. doi: 10.1038/s41467-021-22306-w. PMID: 33795670; PMCID: PMC8016931.
https://www.nature.com/articles/s41467-021-22306-w
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33795670/