お酒の飲み過ぎが健康によくないのはたしかですが、適度に飲む場合の健康への影響についてはいろいろな情報があってはっきりしていません。そんななか、適量のお酒を飲む人は、ほとんど飲まない人やたくさん飲む人よりも、心臓発作や脳卒中などの病気で亡くなるリスクが低いという研究報告がありました。どのように解釈するとよいのでしょうか。
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飲酒は少なければよい?
コロナ禍で自宅でお酒を飲む機会が増えているという人も多いかもしれません。ほどほどのお酒はリラックス効果が期待できて、体にとってもよいという研究報告もあります。もっとも、禁酒が体によいという考え方も出ており、そのあたりに注目した研究も進んでいます。
今回、米国マサチューセッツ総合病院の研究グループは、少量の飲酒が神経をリラックスさせて、ストレスを軽くする効果がある点に着目。精神的な効果と、心臓発作や脳卒中など心臓および血管の病気との関連性を調べてみました。
研究グループによると、ストレスがかかると、脳内で物事の好き嫌いに関係するエリア「扁桃体」という部分が活発になるそう。これが活発なままだと、心臓および血管の病気になるリスクが高くなると過去の研究からわかっているといいます。
研究グループは、病院で行っている追跡調査の参加者5万人以上(およそ6割が女性)のデータを使い、飲酒量ごとに「少ない(週に1杯未満)」「中位(同1〜14杯)」「多い(同14杯超)」の3グループに分け、心臓および血管の病気の発生率を比較。うち752人では、脳の検査によって扁桃体の状態も調べました。
ストレスに影響されにくく
分析の結果、わかったのは「中位」の飲酒量が脳卒中や心臓発作などの心臓および血管の病気のリスク低下に関連していたことです。
全体的に心臓、血管の病気になった人の割合は15%でしたが、飲酒量が中位のグループは13%、少ないグループは17%と差が見られました。お酒を飲まない人たちは病気であるためにお酒を飲まないだけかもしれませんので、研究グループはほかのリスク要素や社会的な要素などを加味して分析。そうしてやはり飲酒量が中位のグループは少ないグループに比べても、心臓、血管の病気になるリスクが20%低くなっていました。
さらに、活発だと問題になると考えられている扁桃体の働きも、飲酒量が中位のグループはいちばん低い結果になっていました。飲酒量が多いグループは最も高い結果です。適度のアルコールは、脳に作用してリラックス効果をもたらし、ストレスを緩和するのではと研究グループ。これが心臓、血管の病気になるリスクを下げる可能性も考えられるようです。
ただし、この結果は決して飲酒を奨励するものではないとも研究グループは指摘します。お酒にはがんや肝臓の病気のリスク増加、依存症の問題などもあるためです。ストレスを和らげるのは、運動やヨガなどでも可能ということで、研究グループはそうした運動などの効果も発表。何より、ストレスを和らげることに気をつけて、そのなかで適度にお酒をとり入れるのがよいのかもしれません。
<参考文献>
Dietary Guidelines for Alcohol
https://www.cdc.gov/alcohol/fact-sheets/moderate-drinking.htm
Alcohol in Moderation May Help the Heart by Calming Stress Signals in the Brain
https://www.acc.org/about-acc/press-releases/2021/05/05/19/14/alcohol-in-moderation-may-help-the-heart-by-calming-stress-signals-in-the-brain
ALCOHOL’S BENEFICIAL EFFECT ON CARDIOVASCULAR DISEASE IS PARTIALLY MEDIATED THROUGH MODULATION OF STRESS-ASSOCIATED BRAIN ACTIVITY
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109721013498