新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が関心を集める一方で、新型コロナの病気そのものについても徐々に詳しく理解が進んできました。たとえば、治ったあとも疲労感や味覚障害などが続く問題など。このたび、海外の研究から、メンタル面でも後遺症が見られるという報告がありました。軽症だった人で、以前には問題がなかったのに、回復後にうつ症状、不安症、あるいは心的外傷後ストレス(PTSD)を訴える人が2〜3割近くに上るそうなのです。
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ブラジルの約900人にアンケート
一般的に、重病から回復した人はメンタル面の症状が出ることが多く、うつ病、不安症、PTSDがもっともよく見られるそう。以前に、新型コロナウイルス感染症と同じくコロナウイルスによって発症する「SARS」や「MERS」が発生したときも、回復後に1年以上続く精神的苦痛が増えていました。今回の新型コロナウイルス感染症でも、多くが軽症とはいえ、感染すれば隔離による孤独感や先の見えない不安から、メンタル面で影響を受けやすくなると考えられていました。
このたび、米国コロンビア大学やブラジルなどからの国際グループは、新型コロナウイルス感染症で軽症だった人について、回復後の精神症状を検証。結果を神経・精神医学および薬理学の専門誌に報告しました。対象としたのは、ブラジル・サンパウロ州の1都市で鼻腔スワブ検査により陽性と判断されて、軽症だった人のうち、およそ2か月後のアンケートに回答した895人(18歳以上)。感染症による症状の数(発熱、せき、呼吸困難など)と精神症状(うつ病、不安症、PTSD)との関連性を調べました。
感染症の症状が多いほど出やすい
アンケートから明らかになったのは、うつ症状、不安症、PTSDがあると答えた人がそれぞれ26%、22%、17%に及んだことです。研究グループによると、比較基準として、ブラジルにおけるPTSDの一般的な発生率は8.5%という研究結果が出ており、新型コロナ後の数値は高いといえそうです。また、新型コロナの症状がたくさん見られた人ほど、精神症状が現れやすいとわかりました。これは感染前のメンタルの状態など、影響を与えそうな要素を考慮して分析した結果です。
新型コロナウイルス感染症では大半が軽症で、長期間の自宅隔離を余儀なくされるため、精神的な影響は重要な問題と研究グループは指摘。回復後もメンタル面のフォローを続ける必要があり、セラピーや支援グループなどを通じた早期の援助が大切なのではないかと提案しています。
<参考文献>
The COVID-19 Pandemic: Even Mild Disease Impacts Mental Health
http://www.publichealth.columbia.edu/public-health-now/news/covid-19-pandemic-even-mild-disease-impacts-mental-health
Ismael F, Bizario JCS, Battagin T, Zaramella B, Leal FE, Torales J, Ventriglio A, Marziali ME, Martins SS, Castaldelli-Maia JM. Post-infection depressive, anxiety and post-traumatic stress symptoms: A prospective cohort study in patients with mild COVID-19. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2021 Apr 30;111:110341. doi: 10.1016/j.pnpbp.2021.110341. Epub ahead of print. PMID: 33940097; PMCID: PMC8086265.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278584621001007
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33940097/