梅雨の間は空気がベッタリと重たく、寝苦しい毎日が続いていた人も多いでしょう。また、気温が上がるにつれて熱帯夜に悩まされることも増える季節。「なかなか寝つけない」「夜中に覚醒してしまう」といった悩みをお持ちではありませんか。寝不足や睡眠の質の低下は、体はもちろん心にも悪影響を与えてしまいます。そこで、安眠を手に入れる方法について、東京・自由が丘のたまきクリニック院長の玉木先生に教えていただきました。
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寝不足は、生活の質を下げるリスク大!
人間は夜眠っている間に、心臓や腎臓などの臓器を日中の活動で受けた負担から修復し、体温や糖代謝などホルモンバランスの調整をして回復します。そのため、十分な睡眠がとれないと、抗体などの免疫システムが制限され、感染症にかかるリスクが増大してしまいます。睡眠は、飲んだり食べたりしたものをエネルギーに変換する消化器系や新陳代謝にも不可欠なので、寝不足は肥満の原因にもなると考えられます。
また、睡眠が不十分だと集中力や認知機能が低下してしまい、仕事の効率が落ちてしまう可能性もあります。イライラしたり過敏になったりと、人とのかかわりに悪影響を引き起こすことも。健康な肉体と精神を守るために、質のよい十分な睡眠は欠かせないのです。
誰でもできる、簡単な安眠テクニックをご紹介
眠れない理由は、「寝る前にスマホやテレビを見てしまう」「仕事や人間関係でストレスを抱えている」などさまざま。とはいえ、睡眠に悪影響だとわかっていても、寝る前にスマホを見ることが習慣になっている人にとってやめるのはむずかしく、ストレスを取り除くのも簡単なことではありません。そこで、誰でも簡単にできる睡眠環境改善法をご紹介します、
<1>寝る前にお腹に手を当て、腹式呼吸をする
寝つきが悪い人は、次々と思考が止まらず覚醒してしまう傾向があります。そこで、意図的に思考を断ち切るために、呼吸だけに集中する方法がおすすめ。
あお向けになってお腹に手を当て、吸うときにお腹がふくらむ腹式呼吸をしてみましょう。このとき大切なのは、息を吐く時間を吸う時間の2倍にすること。複式呼吸をくり返しながら、自分の体がだんだん床に沈み込むように意識すると、副交感神経が優位に変わっていきます。
<2>毎朝必ず、太陽の光を浴びる
夜ふかしをしてしまった場合でも、朝はがんばって早起きをして、日光を浴びましょう。
睡眠ホルモンの分泌を調整でき、体内時計がリセットされます。直射太陽の光を浴びなくても、リビングなどの明るい場所に行くだけでOK。朝起きる時間を一定に保ち、生活リズムを崩さないようにすることが大切です。
<3>通気性のよい寝具を使い、体のつけ根を冷やす
暑い季節にエアコンをつけたまま寝ることに抵抗がある人は、肌ざわりが冷たくて湿気を逃してくれる、通気性のよい寝具を活用しましょう。日本古来の寝ゴザや竹枕のほか、除湿敷きパッドなどもおすすめです。また、足もとに扇風機を置くと、やさしい風で全身をクールダウンできます。氷枕の使用や、アイスノンなどで首や太もものつけ根やわきの下など血流の多い部分を冷やすのもよいでしょう。ただし、首は冷やしすぎると肩こりの原因にもなるので気をつけましょう。
病気になる前に、医師に相談を
睡眠不足が長引いていたり、症状がつらかったり、という場合には、医師に相談してみましょう。生活習慣改善のアドバイスや薬物治療など、その人の症状に合った治療を提案してくれます。治療法のひとつとして活用されているのが、各種“漢方薬”です。以下に、体質・症状別の代表的な漢方薬を紹介します。
・酸棗仁湯(サンソウニントウ)…体力中等度以下で、心身が疲れて眠れないときに。
・加味帰脾湯(カミキヒトウ)…体力中等度以下で、心身が疲れている人の不眠。
・抑肝散(ヨクカンサン)…体力中等度で、興奮して眠れない。
・柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)…体力中等度以上で、精神不安があり眠れない。
・帰脾湯(キヒトウ)…体力中等度以下で不安があり、心身が疲れ血色が悪い人の不眠。
まだ病気ではないものの、なんらかの継続した自覚症状がある状態を、東洋医学では「未病」といいます。これは、体が発している警告であり、漢方治療の対象となります。睡眠障害や不眠症といった病気になる前に、早めの対策を行いましょう。
<PROFILE>
玉木優子先生
東京・自由が丘のたまきクリニック院長。西洋医学と東洋医学を融合させ、心療内科を中心に保険診療による漢方薬処方などを行なっている。
<たまきクリニック>
東京都目黒区自由が丘1−7−14 ドゥーブルビル3F TEL 03-5731-7216
文/MFC