フィットネスや病気の予防などの目的から、世界的に運動を奨励する機運が高まっていましたが、コロナ禍で一層運動に取り組む意義が高まったといえるかもしれません。というのも、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクにも関係する可能性が明らかになってきているのです。海外の研究によると、運動していない人は、新型コロナにかかった場合に重症化しやすいと報告されました。感染予防のためのフィットネスという考え方が出てくるのかもしれません。
Contents 目次
1週間の運動量でグループ分け
海外では、新型コロナウイルス感染症によって重症になるリスクの高い人の特徴が報告されています。米国疾病対策センター(CDC)によると、「高齢」「男性」であることに加えて、「糖尿病」や「肥満」、「心臓および血管の病気」といった基礎疾患をもつことなどが挙げられています。
一方で、米国の民間研究所などの研究グループが、新型コロナウイルス感染症の重症度を左右する要因として注目したのは運動です。定期的に体を動かすことは多くの慢性疾患の悪化防止に効果があり、免疫機能に影響してウイルス感染症を防いだり、心肺機能や筋力アップにつながったりするのが明らかになっていることから、新型コロナとも関連すると想定したのです。そこで、ふだんどれくらい運動しているかが新型コロナウイルス感染症の重症度に関連するかどうかを検証しました。
対象としたのは2020年1月~10月の間に新型コロナと診断され、それ以前の2年間の運動の記録があった約5万人。どれくらい運動をしているかによって、中程度~強度の運動を週に0〜10分(運動していない)、10〜150分(ある程度している)、150分以上(定期的にしている)の3グループに分けました。そのうえで、新型コロナによる入院や集中治療室(ICU)利用、死亡の違いを比較しました。
なお、研究対象者で、新型コロナと判明した人たちの平均BMIは31で多くが肥満に該当しており、糖尿病や心臓および血管の病気などの基礎疾患を2つ以上抱えている人が3分の1近くとなり、全体的にもともとリスクの高い人になっていました。
フィットネスでリスクも変わる?
ここから浮かび上がったのが、ふだん運動をしていなかった人は、定期的に運動していた人に比べて重症化しやすいということです。
具体的に見ていくと、入院するリスクが2倍以上高いほか、ICUに入るリスクが約7割高くなっていました。死亡するリスクについては2.5倍。ある程度運動していた人に比べても、入院リスクは2割、ICUに入るリスクは1割、死亡リスクは3割高い結果です。
これは関連性を調べた研究なので、運動をするとリスクを下げられるという因果関係まではいえないのですが、運動の影響は大きい可能性があると研究グループは推定しています。
<参考文献>
Physical inactivity linked to more severe COVID-19 infection and death
https://www.bmj.com/company/newsroom/physical-inactivity-linked-to-more-severe-covid-19-infection-and-death/
Sallis R, Young DR, Tartof SY, Sallis JF, Sall J, Li Q, Smith GN, Cohen DA. Physical inactivity is associated with a higher risk for severe COVID-19 outcomes: a study in 48 440 adult patients. Br J Sports Med. 2021 Apr 13:bjsports-2021-104080. doi: 10.1136/bjsports-2021-104080. Epub ahead of print. PMID: 33849909; PMCID: PMC8050880.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33849909/
https://bjsm.bmj.com/content/early/2021/04/07/bjsports-2021-104080.long