夏の訪れとともに、サンダルやミュールで出かける機会も増えてきました。それに伴って、「足」も気になる季節です。足の親指が外側に曲がってきたら、外反母趾かもしれません。足の変形に気づいたら何をしたらよいのでしょうか。今すぐしたいことを紹介します。外反母趾の予防対策にも有効です。日本で唯一の足の総合病院「下北沢病院」の菊池守院長に話を聞きました。
Contents 目次
ハイヒールを履く女性に多い「外反母趾」
足の変形トラブルで女性に多いのが外反母趾です。原因とセルフケア、予防法について紹介します。
【外反母趾】
○外反母趾って?
外反母趾は、足の親指が外側に曲がり、親指のつけ根が内側に出っ張った状態をいいます。
「足を浮かせた状態では足指に異常はなくても、足を踏み込んだときに親指のつけ根が出っ張る場合も外反母趾といえます」
○原因は?
「扁平足や開張足など足のアーチのくずれが、外反母趾につながるケースは少なくありません。ヒール靴のつま先が細くなった部分に、前滑りして足指が入り込んでしまうことも原因のひとつです」
○どんな症状がある?
「靴をはいたときに、親指のつけ根のでっぱりが靴に当たって痛くなったりします。また、
足を蹴り出すときに親指にきちんと負荷がかからないことから、人さし指と中指に蹴り出しの負荷がかかり、これらの指のつけ根にタコができやすくなります。親指の巻き爪や陥入爪(かんにゅうそう)といった爪の異常が起こることも。さらには、きちんとした歩行ができないため、歩行バランスがくずれやすくなり、歩く速度が遅くなったり、ひざを痛めることもあります」
●外反母趾の人に多いタコの位置
外反母趾は、ハンマートゥなどの別の変形を伴うこともあります。
■ハンマートゥ
足指の関節が曲がって、もとに戻らなくなった状態です。初期には、指で押せばもとに戻りますが、時間が経つとかたまってしまいます。曲がった足指の関節の上にタコができやすくなります。
■内反小趾
足の小指が内側に傾き、つけ根が出っ張ります。
外反母趾かも? と感じたら、今すぐケアを
外反母趾は、変形が軽度であれば、セルフケアで進行を防げることもあります。次の方法でチェックしてみましょう。
【外販防止の状態をチェック】
足指のつけ根を片手でぐっと押さえます。足指が「パー」のように開く場合は、セルフケアで進行を止められることがあります。
○まずは、足指のつけ根を固定する
「日頃から、サポーターなどで、足指のつけ根をしっかりと固定するといいでしょう。靴は足指のつけ根あたりを靴紐でしっかり固定できるものがおすすめです」
○歩行時に靴にインソールを入れて、アーチをサポート
靴には、横アーチと内側のアーチを支えるインソールを入れ、足の形が正常になるようにサポートしてあげましょう。
【横アーチを支えるインソール】
【内側のアーチを支えるインソール】
○足指のストレッチを
足指が曲がったままかたまらないように、お風呂上がりや入浴時に足指のストレッチをするのも有効です。
【足指ストレッチ】
〈1〉手を使って、足指をできるだけ広げて、足指の間をしっかり伸ばす。
〈2〉手を使わずに、足指の力だけで、できるだけ広げてみる。
【タオルギャザー】
〈1〉イスに浅めに腰かけて、足もとにタオルを置く。
〈2〉片方の足の5本の指を使って、タオルをたぐり寄せる。
〈3〉足指の関節からしっかり曲げてつかみ、その後、パッと離す。5~10回が目安。もう片方の足も同様に行う。
足の変形がひどく、痛みや生活に支障をきたすことがある場合は、手術という方法もあります。足の専門医に相談してみましょう。
足の変形は、気づいたときに対処することが、重症化を防ぐカギになります。
「足の変形などのトラブルを放置しておくと、高齢になって痛み、しびれ、そして歩行困難を招くおそれがあります。特に、外反母趾になると、はける靴の選択範囲が狭まり、おしゃれの楽しみも半減してしまいます。今できる対策は、しっかり行っておくことが、後々のQOLを高めることにつながります」
〈参考書籍〉『“歩く力”を落とさない! 新しい足のトリセツ』(下北沢病院医師団・著/日経BP)
取材・文 海老根祐子