新型コロナウイルス感染症では、長期にわたって心身ともに後遺症が現れることが明らかになりつつあります。入院には至らない軽症の人でも、疲労感や息切れなどの症状が1か月半後にも残るケースが多いという研究結果が出ているなか、このたび、診断から6〜8か月経っても4人に1人は完全に回復していないという報告がありました。
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コロナに感染した431人のその後を調べる
パンデミックの長期化にともない、感染症の最初の症状が治っても心身に不調が残るコロナ後遺症の問題がしだいに重大になってきています。感染から3か月以上にわたって不調が続く状態を現在、「post-COVID-19 syndrome」(新型コロナウイルス感染症罹患後症候群、COVID-19後症候群)または「Long COVID」(ロングコビッド)と呼んでいます。
重症で入院した人たちについては、ある程度の追跡結果が出ていますが、今回、スイス・チューリッヒ大学の研究グループは、軽症だった人たちも含めて6〜8か月後の状況を検証。2020年の2月から8月の間にチューリッヒ州でPCR検査によりコロナウイルス陽性が判明し、連絡可能だった431人(18歳以上)にオンライン調査を実施しました。
完全に回復したかどうかや疲労感の有無について、また呼吸困難とうつ症状のレベルを判定する質問票に答えてもらい、医療機関の利用についても調べました。431人中、新型コロナの診断時に症状があった人は89%、入院していた人は19%でした。
半数以上に疲労感
ここから判明したのが、診断から6〜8か月後になっても完全に回復していないと答えた人が26%に上ったことです。また、55%が疲労感を報告し、何らかの息苦しさがある人が25%、うつ症状を示した人が26%との結果に。
回復していないと答えた人は男性より女性で、また診断時に入院しなかった人より入院した人で多く見られました。さらに、全体の40%が感染症の急性期を過ぎてから少なくとも1回は一般開業医を受診していて、診断時に入院した人の1割が再入院していました。
「感染後、長期にわたって後遺症に悩まされ、医療サービスを必要とする人は相当数に上ると思われる」と研究グループは結論。世界的に1億人を上回る感染者数を考えると、医療システムにとって大きな負担になると予想され、早期にケアシステムの計画を立てる必要があると指摘しています。
<参考文献>
Menges D, Ballouz T, Anagnostopoulos A, Aschmann HE, Domenghino A, Fehr JS, Puhan MA. Burden of post-COVID-19 syndrome and implications for healthcare service planning: A population-based cohort study. PLoS One. 2021 Jul 12;16(7):e0254523. doi: 10.1371/journal.pone.0254523. PMID: 34252157.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0254523
“Long COVID”: More than a quarter of COVID-19 patients still symptomatic after 6 months
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-07/p-cm071321.php