歯磨きのときなどに歯茎から血が出てくるのは歯周病のサインとなります。歯周病は体重が増えると起こりやすいとされるのですが、細胞レベルの変化があるようです。このたび、海外の研究によって、太ると体の炎症反応が強くなって「骨」の新陳代謝に関係する細胞が変化することが明らかにされました。
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細胞の変化に着目
歯周病は歯茎に影響を及ぼすばかりではなく、悪化すると歯を支えている骨も壊します。これまで歯周病は全身の健康とも関連することが注目されてきました。たとえば、歯周病になるリスクは体重の増加と明らかに関連すると認められており、そうした関連性はいったいなぜなのか、メカニズムについての研究が進められてきました。
今回、バッファロー大学など米国の研究グループは、体重が増加した場合の細胞レベルでの変化に目をつけました。特に「MDSC」と呼ばれる免疫系の細胞について検討しています。この免疫細胞はいろいろなタイプの細胞に発達することがわかっており、そのひとつが骨の新陳代謝に関連する「破骨細胞」です。その名の通り、骨をつくり変えるときに骨を壊す役割を担っています。研究グループは動物実験を行って脂肪を多く摂取したときの破骨細胞の変化と歯周病との関係を調べました。
骨を壊す細胞が活発になることが問題に
一連の研究で確認されたのが、脂肪を多く摂取している場合に骨を壊す破骨細胞が活発になり過ぎて、歯周病を含め関節や骨の状態に悪い影響が現れそうだということでした。
具体的には、脂肪を多く摂取したときには、体内の炎症反応が増えて今回注目したMDSCという免疫細胞の数がたしかに増えることが確認されました。MDSCから生まれてくる破骨細胞の数が増えて、歯周病になりやすくなるなどしていました。破骨細胞は骨の新陳代謝に欠かせませんが、活発になり過ぎると問題になり得るのです。
研究グループは肥満と歯周病との間をつなぐのは破骨細胞が活発になる細胞レベルの変化がありそうだと推定しています。逆に考えると体重を適正範囲に保つことは、このような全身の骨を健康に保つことにもつながるようです。フィットネスやダイエットの価値として認識してもよいのかもしれません。
<参考文献>
Obesity raises the risk of gum disease by inflating growth of bone-destroying cells
http://www.buffalo.edu/news/releases/2021/11/011.html
Kwack KH, Zhang L, Sohn J, Maglaras V, Thiyagarajan R, Kirkwood KL. Novel Preosteoclast Populations in Obesity-Associated Periodontal Disease. J Dent Res. 2021 Oct 12:220345211040729. doi: 10.1177/00220345211040729. Epub ahead of print. PMID: 34636272.
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00220345211040729