寒さが一段と厳しくなる、この時季。ツラい「冷え」に悩まされている人は、多いのではないでしょうか。そこで、書籍『こころと体が軽くなるツボ押し養生』(学研プラス)の著者で、Twitterフォロワー13万人の鍼灸師・国際中医専門員の田中友也先生に、冷えをラクにするツボを教えていただきました。ひとことで“冷え”といっても、症状や原因はひとつではありません。ここでは冷えを3つのタイプに分け、それぞれにおすすめのツボを紹介します。ツボ押しは今日からできる手軽な対策です。さっそく、とり入れてみましょう。
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「気・血・水」のバランスが崩れたり、滞ったりすると不調が現れる
「下半身ばかり冷える」「末端がすごく冷える」「腰まわりまで冷え冷え」「冷えると頭も痛くなる」……など、冷えといっても、その症状は人それぞれ違います。もちろん、服装や気温なども影響しますが、鍼灸師・国際中医専門員の田中友也先生によると、この違いには「気(き)・血(けつ)・水(すい)」が、深く関わっているそうです。
「中医学では、不調の原因を考える際にベースとする理論があり、それが『気・血・水』です。元気の気でもある『気』は、生命のエネルギー。『血』は体の栄養を補ったり、精神状態を安定させたりするもの。『水』は血液以外の正常な体液のこと。人の体はこの3要素で構成されていて、3つがバランスよく体内を巡ることで健康な体が維持できると考えられています。しかし、どれかひとつでも不足したり、滞ったり、多すぎたりすると、痛みや不調が現れてしまいます」(田中先生)
「気・血・水」の過不足や停滞が起こると、どんな不調が現れるのでしょうか。
「例えば、『気』が不足すれば疲れやすくなりますし、停滞すると情緒不安定に。『血』が不足すれば爪や髪などにトラブルが生じやすく、停滞するとクマ・シミ・あざなどができやすくなります。『水』が不足すれば体が乾燥しやすくなり、停滞すればむくみなどが起こってしまいます。このように『気・血・水』の状態によって、現れる不調は異なってきます。また、気が不足している人もいれば、血が滞っている人もいるように、気血水の状態は、人それぞれ異なり、それがいわゆる「体質」の違いになるのです」
「冷え」も、気血水のバランスが崩れたことで生じます。気血水のどの状態が悪いか、つまり「体質」によって、冷え方や冷える箇所などが違ってくるそうです。
体質に合わせた対策が、冷え改善の近道に
前述のように、不調は気血水の過不足や、巡りが滞ったりすることで生じます。それならば、そのバランスや巡りを整えていけば、改善に向かうというわけです。
また、やみくもに「あれもこれも」と対策をするのではなく、自分の体質に合わせたツボ押しや養生を重点的にとり入れていくほうが効率もよく、改善の近道になります。
そこで、ここでは体質別に、冷えを3つのタイプに分けました。まずは、次のリストで該当する症状をチェックし、自分がどのタイプに近いかを把握しましょう。
◆気血(きけつ)不足タイプ
- 手足が冷える
- 疲れやすい
- 食欲がない
- 立ちくらみがある
- 声が小さい
◆血行不良タイプ
- 末端が冷える
- 頭痛や肩こりがある
- 生理痛がある
- しびれや痛みを伴うことがある
- 婦人科疾患(子宮筋腫、子宮内膜症など)がある
◆陽気不足タイプ
- 足の冷えが強い
- 腰が冷えている
- お風呂に入ってもすぐ冷える
- むくみがち
- 夏でも冷える
どのタイプに、多くチェックがつきましたか?
いちばん、多くチェックがついたところがあなたの体質に近いタイプなので、該当するタイプのツボを、重点的にケアしていきましょう。さらに、「プラスの養生」も併せて実践すると、より効果的です。
気血(きけつ)不足タイプにおすすめのツボと養生法
体を温める力はあるけれど、燃料となる気や血が足らず、なかなか体が温まらないタイプ。食事の量が少ない人も当てはまりやすいです。気を生み出す胃腸と関わりが深いツボ「足三里(あしさんり)」と、血の巡りを助ける「血海(けっかい)」を温めましょう。
ツボ/血海(けっかい)、足三里(あしさんり)
位置/血海…ひざの内側、お皿の上を指幅3本分程度上がったところ。
足三里…ひざの外側、お皿の下のくぼみから指幅4本分程度下がったところ。
方法/入浴しながら、ツボのある一帯を軽くマッサージするのがおすすめ。
―プラスの養生―
このタイプは、胃腸の調子をととのえることも大事。胃腸の負担になる脂っぽいものや、甘いもの、味が濃いものはできるだけ避け、「あっさり温かいものを腹八分目」の食事が理想です。
血行不良タイプにおすすめのツボと養生法
体のすみずみまで温かい血が行き渡らないため、手足の末端まで冷えてしまいます。まずは冷え治療の代表的なツボ「三陰交(さんいんこう)」をよく温めましょう。血のトラブル改善にもよく使われる「膈兪(かくゆ)」をほぐすと、より巡りがよくなります。
ツボ/三陰交(さんいんこう)
位置/くるぶしの上から指幅4本分程度上がったところ。
方法/少し熱めのシャワーでツボを温める。入浴中はツボをマッサージする。
ツボ/膈兪(かくゆ)
位置/肩甲骨の下角の高さで、体の中心から親指の幅1本半分程度外側の左右。
方法/手では押しにくいので、テニスボールなどを床に置き、その上にツボがのるようにあお向けになる。少し体を動かし、ボールでツボ周辺をマッサージする。
―プラスの養生―
寒さで体が縮こまってしまうと余計に血の流れが悪くなってしまうので、ヨガや散歩などの軽い運動で血流を促しましょう。
陽気不足タイプにおすすめのツボと養生法
冷えが強く、お風呂で温まってもすぐ冷えてしまうタイプ。中医学では、体の機能や役割を5つ(五臓=肝・心・脾・肺・腎)に分けて考えますが、そのうちのひとつで、体を温めるエネルギーをつくる「腎」が、弱っている傾向になります。腎を元気にする「腎兪(じんゆ)」と、エネルギーが集まる「関元(かんげん)」を温めると症状がラクになります。
ツボ/腎兪(じんゆ)
位置/高さはウエストのいちばんくびれた部分で、体の中心から親指幅1本外側の左右。少し押すと心地いい刺激がある。
方法/手も冷えていることが多いタイプなので、手でさするよりもカイロが◎。お風呂で、じっくり温めることもおすすめ。
ツボ/関元(かんげん)
位置/おへそより指幅4本分程度下がったところ。
方法/冷やさないようにカイロで温める。腹巻などの活用もおすすめ。
―プラスの養生―
シナモンは、体を温めてくれる食材のひとつ。香りが苦手でなければ、紅茶にシナモンスティックを添える、トーストにシナモンパウダーをひと振りするなどして、とり入れてみましょう。
指先や手がかじかんでツラいときは、水かきを刺激!
デスクワーク中、手がかじかんでしまってキーボードがスムーズに打てない……。そんなときは、手の水かき部分にあるツボ「八邪(はちじゃ)」を刺激してみましょう。水かきをつまむように刺激すると、手先がじんわり温まってきます。
ツボ/八邪(はちじゃ)
位置/両手の水かきのところにある。
方法/反対の手の親指と人さし指でつまんで刺激。押したり離したりをくり返すといい。
中医学では、“なんとなく”感じる不調や痛みのことを未病(みびょう)と呼びます。未病とは、字のごとく「未だ病気ではない」ですが、病気の前段階のこと。冷えも、放置すれば、他の不調や痛み、病を招きかねません。そうならないためにも、早めのケアが大事。ツボ押しや養生をコツコツと続け、冷えにくい体にしていきましょう。
次回は、冬のメンタル不調に効くツボとプラスの養生をご紹介します。
文/柿沼曜子 ツボイラスト/牛久保雅美
もっと詳しく田中先生のツボの話を読みたい方はこちら。
『こころと体がラクになるツボ押し養生』(学研プラス)