世界的に増えつつあるという子宮がん。体重と身長で計算されるBMIが高い人はなりやすいという確かなデータがあり、BMIが高いほどリスクも高くなると考えられています。このたび、どうしてそうなるのかを分子レベルで調べた研究から、その理由がわかってきました。ホルモンの働きが影響しているようです。
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太りやすさとの関連を調べたところ
BMIと子宮がんリスクが関連するといっても、さまざまな要素がからんでくるために明確なメカニズムを突き止めるのはなかなか大変です。そこで今回、英国を中心とする研究グループは「メンデルランダム化」という手法を採用。1万人単位の多くの人を対象として、遺伝情報に基づいてリスクを計算しました。
子宮がんになった約1万3000人近くと、年齢や性別を合わせた子宮がんにならなかった人約1万1000人のゲノム解析結果に基づいて調べました。着目したのは、LDLコレステロール値や空腹時インスリン、総テストステロン値など14の要素で、その人の遺伝子の情報による差を踏まえて、BMIや子宮がんとの関連性を分析したのです。
4つの要素が子宮がんのリスクに関連
今回の分析から確認されたのが、やはりBMIが高くなるほど子宮がんのリスクが高いことに加えて、いくつかのホルモンの状態が子宮がんに関連しているということでした。
そうしたホルモンのうちのひとつは、意外にも男性ホルモンとして知られているテストステロンでした。女性でもテストステロンは分泌されているのですが、このホルモンが多いと気をつけたほうがよいようです。また、空腹時のインスリンにも注意が必要とのこと。インスリンは血糖値を下げるホルモンとして知られていますが、肥満などで血糖値が下がりにくくなることがあり、インスリンが出すぎることがあると知られています。
そのほか、性ホルモン結合グロブリン、総コレステロール値も子宮がんのリスクと関連するようです。血液検査をしないとなかなかなじみのない検査値ですが、今後さらに研究が進んで、子宮がんの危険をあらかじめ知ることができるとよいのかもしれません。
<参考文献>
Hazelwood E, Sanderson E, Tan VY, Ruth KS, Frayling TM, Dimou N, Gunter MJ, Dossus L, Newton C, Ryan N, Pournaras DJ, O’Mara TA, Davey Smith G, Martin RM, Yarmolinsky J. Identifying molecular mediators of the relationship between body mass index and endometrial cancer risk: a Mendelian randomization analysis. BMC Med. 2022 Apr 19;20(1):125. doi: 10.1186/s12916-022-02322-3. PMID: 35436960; PMCID: PMC9017004.
https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-022-02322-3
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35436960/