新型コロナの影響によって外食する機会が減って、それとともにアルコールを口にすることもなくなったという人が多いかもしれません。海外ではコロナの問題がある以前からお酒を断つ「ソーバー(sober)」という生活スタイルが注目されていました。それは健康にもつながると考えられています。このたび海外研究から、飲酒の影響について、これまでいわれていたよりも心臓によくない影響を与えそうだと報告されました。参考になるかもしれません。
Contents 目次
ワインの消費が増えるとどうなる?
お酒はコミュニケーションを豊かにしてくれたり、ストレスを和らげてくれたり、体の緊張を解いたりしてくれたりするよい効果もありますが、一方で飲み過ぎはよくないといわれます。飲み会の席が好きだという人もいるでしょうし、逆にすっかりお酒からは遠ざかったという人も、このコロナでの宴会や外食の自粛の影響もあり、増えているかもしれません。
このたびアイルランドの研究グループは、アルコール度数12.5%のワインの一般的な750mlのボトル、または4.5%のビール500ml缶の消費量で考えたときの健康への影響について詳しく分析しました。
具体的には、この研究では、参加者をお酒の飲み方で4つのグループに分けています。まずお酒をふだんから飲まない人、さらに1週間にワインボトル1本(ビール3缶半)までの人、1週間にワインボトル2本(ビール7缶)までの人、1週間にワインボトル2本(ビール7缶)以上の人です。そのうえで心臓の健康状態がどのような影響を受けるのかを調べています。
研究グループが注目したのは、心臓の機能が低下してしまう病気、心不全になる人が増えるかどうかです。参加者には、もともと生活習慣病などのために心不全のリスクがある人、および心臓の機能が低下して心不全一歩手前の人を選びました。
お酒は軽くてもメリットは見られない?
今回の分析から確認されたのが、習慣的に飲酒していると、心不全のリスクが高まるということ。具体的には、習慣的に飲酒をしていない人と比べると、ワインボトルに換算して2本までの人、または2本を超える人をまとめて見ると、心不全のリスクが4.5倍高まっていました。グループ別に見ても同じようなリスク上昇が確認されました。
アルコールを適度に飲むと健康によいといわれることがありますが、今回の研究ではアルコールの量が最も少ない1週間にワインボトル1本程度までの人でも、心不全のリスクが低下するような関係性は示されませんでした。
こうした点から研究グループは、飲酒は心臓の健康にとってはよい面がなさそうだと説明しており、とくにアルコール量が1週間に70gを超えるような場合には危険性が高いと指摘。心臓の健康に不安がある人には飲酒を制限することを求める必要があると強調しています。飲酒を控える風潮があるなかで、アルコールの悪影響については従来よりも重く見られるようになるのかもしれません。
<参考文献>
Alcohol may be more risky to the heart than previously thought
https://www.escardio.org/The-ESC/Press-Office/Press-releases/Alcohol-may-be-more-risky-to-the-heart-than-previously-thought