前回、集中力が続かなかったり、イライラしたり、脳のエネルギー不足は、血糖値の急上昇にあるということをお伝えしました。脳のエネルギー不足の原因となる血糖値スパイク(急上昇した血糖値が急激に下がること)を起こさず、脳の活動を最大限にするのが低GI食。今回は、低GI食と併せて行いたい脳によい食習慣について、脳科学者・西 剛志先生の著書『低GI食 脳にいい最強の食事術』からご紹介しましょう。
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亜鉛をとって記憶力の低下を防ぐ
私たちの体を健康に維持していくために必要な5大栄養素。それらに加えて、脳科学の観点から不足しないように気をつけてとりたいのがミネラルのひとつである亜鉛です。
「亜鉛は体内の300種類以上の酵素に含まれ、細胞の成長と分化に中心的役割を果たしています。亜鉛の約8%が存在するといわれる皮膚や毛髪は亜鉛が不足すると皮膚炎や脱毛という症状が現れるようになります。また亜鉛不足は脳にも影響を与えることがわかっています。記憶をつかさどる海馬には亜鉛が多く存在していて、不足すると海馬の機能に障害が現れ、記憶力の低下につながるといわれています」(西先生)
亜鉛が多く含まれている食物としては牡蠣、牛肉、うなぎが挙げられますが、毎日食べるうえでは栄養バランスの整った食事にプラスアルファでアーモンドやカシューナッツなどのナッツ類をおやつに食べるだけでも充分。ただインスタント食品やレトルト食品、菓子類など現代的な食生活だと不足しがちなので、注意しましょう。
砂糖よりフラクトオリゴ糖
砂糖をたっぷり入れた飲みものやお菓子、スイーツは高GI食品。それでも甘いものをとりたいときは…?
「甘いものを仕事や勉強の合間にたくさん食べると、脳の働きが悪くなるのは間違いありません。それでも甘いものが食べたいというときにはフラクトオリゴ糖がオススメです。フラクトオリゴ糖は難消化性の糖質。つまり人間の消化酵素では分解されないため、胃や腸で吸収されることなく大腸まで届けられます。そのため血糖値を上げることもなく、甘みを感じることができます」
味覚で甘みを感じると脳に“体によいものが入ってきた”という指示が送られβエンドルフィンというホルモンが分泌されます。βエンドルフィンにはストレスを和らげて心身をリラックスさせる作用があり、そのため甘いものを食べるとほっとするのだそうです。
「あと6gの食物繊維」がストレスによる効率ダウンを防ぐ
高GI食品と低GI食品を見分けるポイントのひとつにもなっているのが食物繊維の多さですが、食物繊維は脳をテキパキと働かせるためにも意識すべき栄養素です。
「食物繊維は水溶性であれ不溶性であれ、体内に入ってくると、分解されることなく大腸まで到達します。腸に到達した食物繊維は腸内細菌の栄養素となるため、善玉菌が増えて腸の状態がよくなります。最近、話題になっている「腸脳相関」という言葉がありますが、脳と腸は互いに影響を及ぼす関係にあり、腸がよい状態になると脳の状態もよくなります。腸内環境が悪化すると、脳内の幸せホルモン(セロトニン)が低下して脳の状態も悪くなります。腸内環境を整えることは脳が元気に活動するために大切なこと。だからこそ食物繊維を意識してとる必要があります」
日本人の食物繊維の摂取量は約5.5g不足しているともいわれていますので、脳のためにもいつもより少しだけ野菜を多く食べましょう。
仕事のミスやメンタルの不調は食事と関連していることも多そうですね。低GI食と合わせて、脳によい食生活を意識してみてはいかがでしょうか。
参考書籍/
『脳科学者が教える集中力と記憶力を上げる 低GI食 脳にいい最強の食事術』(アスコム)
文/庄司真紀