今年は梅雨明けが早く、6月末から連日猛暑が続きました。4月頃からは日々の寒暖差が大きく、「体がついていかない」と感じていたところに、いきなりの猛暑で体に不調を感じている人も多いのではないでしょうか。この季節は、「汗」が不調を知らせるサインになることも。せたがや内科・神経内科クリニックの久手堅司院長にお話をうかがいました。
Contents 目次
このシリーズでは、夏に感じやすい女性の5大不調について、不調を感じやすい原因と、夏の不調をやわらげるために習慣化したいポイントをお伝えします。
1 夏に不調を感じやすい原因と夏の不調をやわらげるポイント
2 疲れ、だるさ
3 ふらつき、クラっとする感じ
4 異常に汗をかく、汗をかかない ←今回はココ
5 眠れない
6 頭痛
どうして汗をかくの?
そもそも人はどうして汗をかくのでしょうか。汗には次の3つのタイプがあります。
●温熱性発汗
暑いときや運動して体温が上がると、体を冷やすために汗をかきます。自律神経の体温調節の働きで、体温が上がりすぎないように、汗をかいて体から熱を逃がしているのです。
●味覚性発汗
からい料理を食べたときも、頭や顔を中心に汗をかきます。からみの刺激を脳が体温上昇と勘違いして、汗をかくのではないかと言われています。
●精神的発汗
「冷や汗をかく」と言うように、緊張や恐怖、強いストレスを感じたときにも汗をかきます。特にひたいや首すじにたくさん汗をかくのは、脳を冷やそうとする反応です。また、人前で発表するときに、ワキ汗で洋服がびっしょりになってしまった経験がある人もいるかもしれませんが、これは「戦うか、逃げるか」というストレス反応で筋肉を使う準備として、ワキの太い血管を冷やして体温を下げようとするためです。
熱中症? 多汗症? 汗のかき方でわかる
このように汗をかくのは体の反応として自然なことです。では、どのような汗に注意が必要なのでしょうか。
まず、この季節に気をつけたいのは、「止まらない汗」と「暑いのにまったく汗をかかない」状態です。熱中症のサインかもしれません。
「いずれの場合も体温調節機能がうまく働かなくなることで、体に熱がこもり、顔がほてる、だるい、めまいといった症状が現れます。自律神経が乱れやすい人は、熱中症にもなりやすいようです」
本来、5月から6月頃にかけて、汗ばむ程度の運動をするなどして、体を暑さに慣れさせ、汗をかく練習が必要ですが、今年は6月下旬からいきなり猛暑がやって来ました。暑さに体が順応できていないため、例年以上に熱中症には注意が必要です。
「天気予報で熱中症リスクが高いと言われる日は、屋外での活動はなるべく控えるようにしましょう」
また、「ワキ汗がひどい」場合は、多汗症の可能性があります。
もともと、ワキの下は汗腺の密集した場所で、暑さや運動で発汗するうえに、精神的な要因でも汗をかきやすく、汗の量が多い部位です。
「しかし、特に病気もないのに、緊張した場面などで、とにかくたくさん汗をかいてしまい、そのせいで勉強や仕事に集中できなかったり、日に何度も制汗剤を使ったり、着替えたりするなど、日常生活に支障が出る場合、ワキの多汗症(原発性腋窩〔げんぱつせいえきか〕多汗症)の可能性もあります」
一方、40~50代の女性で、汗が止まらないことに加え、首から上のほてりやのぼせ、カーッと熱くなるといった症状があるなら、更年期のホットフラッシュかもしれません。女性ホルモンの急激な減少によって、自律神経が乱れることが関係します。
原因別の汗への対処法
気になる汗の対策を紹介します。
○熱中症を予防するには?
外出時は、帽子や日傘などで直射日光を避け、水分と塩分を補給しましょう。水分は一気に飲むのではなく、こまめに摂取するのがおすすめです。屋内でも熱中症になります。必要に応じてエアコンを使用することも大切です。
「エアコンは外気温との差が7℃を超えないように設定するようにし、エアコンの風が直接あたらないように工夫しましょう。エアコンが効きすぎていると寒暖差や冷えなどよって自律神経が疲れてしまい、疲労感やだるさが蓄積され、夏バテしやすくなります。夏バテで熱中症リスクも高くなります」
また、猛暑のマスク着用も熱中症リスクが高まります。
「マスクの中で熱がこもり、のどが渇いているかどうかもわかりにくくなります。新型コロナウイルス感染症の感染リスクが低いと思われる屋外では、適宜、マスクをはずすようにしましょう」
熱中症が疑われる場合には、すぐに涼しい場所へ移動して、衣服のしめつけをラクにして、体を冷やして体温を下げるようにします。呼びかけに反応しないときは、迷わず救急車を呼びましょう。
○ワキ汗対策には?
「ストレスや緊張でワキ汗が気になるときは、精神的にリラックスすることが大切です。呼吸法を試してみましょう。交感神経優位から副交感神経優位に切り替わり、体がリラックスモードになります」
【イスに座って深呼吸】
(1)ろっ骨の下に手を添え、3秒かけて自然に口から息を吐く。
(2)ろっ骨と横隔膜を押し上げるように、5秒かけて鼻から息を吸う。
(3)ろっ骨と横隔膜を押し下げるように、5秒かけて口から息を吐く。
また、緊張したときにはガムをかむと副交感神経が高まり、リラックスできます。
○ワキ汗の多汗症には?
「ワキに異常に汗をかき、日常生活に支障が出るような場合は、皮膚科などに相談しましょう。2022年5月には過剰な発汗を抑えるシートタイプのぬり薬が保険適用になり、治療の選択肢が広がっています」
○更年期のホットフラッシュには?
「更年期症状で汗が止まらない場合は、HRT(ホルモン補充療法)が効くことがあります。婦人科で相談してみましょう」
ホットフラッシュには、加味逍遙散(カミショウヨウサン)、抑肝散(ヨクカンサン)といった漢方薬もおすすめです。
取材・文/海老根祐子