ビタミンDは骨を作るために重要な栄養素としてよく知られています。最近では、腸や免疫系へのよい効果も注目されています。そんななか、海外研究において、妊娠中にビタミンDを摂取することが赤ちゃんの生まれたあとの健康にも影響することが報告されました。生後1年の間にアトピー性皮膚炎になる確率が減るのだそうです。
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ビタミンDの効果とは?
アトピー性皮膚炎の発病には遺伝的な要因のほか、環境要因も影響しています。環境要因のなかには胎児のときの子宮内の状態も含まれます。たとえば、母親の栄養状態、特に免疫系に作用するビタミンDも関連します。なお、母親の体内のビタミンDは、赤ちゃんの出生時の体内のビタミンDとも相関し、アトピー性皮膚炎との関連性が指摘されています。
今回、英国サウサンプトン大学など英国の研究グループは、妊娠している女性およそ700人の半数に、妊娠14週から出産までビタミンDのサプリメント(1日1000 IU)を、あとの半数にはプラセボ(偽のサプリメント)をとってもらって、赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の発病に違いがあるかを分析。また、赤ちゃんの生後の免疫機能にも影響すると考えられている母乳育児が結果に影響するかどうかも調べてみました。
出生の1年後に影響が…
こうして判明したのは、ビタミンDのサプリメントをとっていた女性の赤ちゃんは、生後1年時点でのアトピー性皮膚炎が45%減るということです。特に1か月以上母乳を飲んでいた赤ちゃんで、リスク低下が顕著でした。生後まもなくのアトピー性皮膚炎は赤ちゃんの肌の状態、かゆみなどの有無につながり軽視できない問題になります。
生後2年と4年の時点では、このような関連性は見られませんでした。母親のビタミンD不足の影響は生後期間が経過すると続かない点は朗報といえそうです。
妊娠中のビタミンD摂取がすすめられていますが、乳児期のアトピー性皮膚炎に対する効果を示した今回の結果も従来の推奨を裏づけるものになりそうです。妊娠中の栄養のとり方を考えるうえで、参考にしてよいかもしれません。
<参考文献>
Taking Vitamin D during pregnancy could lower the risk of eczema in babies
https://www.southampton.ac.uk/news/2022/07/babies-eczema.page
El-Heis S, D’Angelo S, Curtis EM, Healy E, Moon RJ, Crozier SR, Inskip H, Cooper C, Harvey NC, Godfrey KM; MAVIDOS Trial Group. Maternal antenatal vitamin D supplementation and offspring risk of atopic eczema in the first 4 years of life: evidence from a randomised controlled trial. Br J Dermatol. 2022 Jun 28. doi: 10.1111/bjd.21721. Epub ahead of print. PMID: 35763390.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bjd.21721