今年は梅雨明けが早く、6月末から連日猛暑が続きました。4月頃からは日々の寒暖差が大きく、「体がついていかない」と感じていたところに、いきなりの猛暑で体に不調を感じている人も多いのではないでしょうか。「眠れない」のも女性が感じやすい夏の大きな不調のひとつです。原因と対策について、せたがや内科・神経内科クリニックの久手堅司院長にお話をうかがいました。
Contents 目次
このシリーズでは、夏に感じやすい女性の5大不調について、不調を感じやすい原因と、夏の不調をやわらげるために習慣化したいポイントをお伝えします。
1 夏に不調を感じやすい原因と夏の不調をやわらげるポイント
2 疲れ、だるさ
3 ふらつき、クラっとする感じ
4 異常に汗をかく、汗をかかない
5 眠れない ←今回はココ
6 頭痛
体が冷えていると寝つきが悪くなる
体は疲れやだるさを感じているのに、眠れない。そんな経験はありませんか? 夏に眠れなくなるのは、冷えが関係しています。
「寝つきには、体温が関係しています。日中、活動している間は体温が高く、夜になると体にたまった熱を放散して体温が下がりはじめます。この体温の高低差で人は眠たくなると言われています。ところが、日中にオフィスや家の中など1日エアコンの効いた場所にいて体が冷えると、体温が上がらず、夜も熱放散がうまくいかず、体温が下がりにくくなって、眠れなくなってしまいます」
また、体が冷えていると、熱を作り出そうとして、自律神経の戦闘モードの『交感神経』が優位になります。リラックスモードの『副交感神経』に切り替わらないことも、寝つきが悪くなる要因です。室内が暑くても、汗をかいて体温を下げようとして交感神経が優位になるため、なかなか寝つけなくなります」
大人の場合、睡眠時間は6~7時間が適切とされていますが、久手堅先生は、「睡眠時間より睡眠の質のほうが大切」と言います。
「寝入ってから1時間半ぐらいで、深い眠りに入ることは理想です。疲労回復に大切な役目を果たす成長ホルモンが分泌され、疲れやだるさの解消につながります。いくら睡眠時間を6~7時間とったとしても眠りが浅いままだと、疲れがとれにくくなってしまい、夏バテを起こしやすくもなります」
ストレッチで眠気にスイッチオン
夏の夜に寝つきをよくするために対策を紹介しましょう。
◎入浴で冷えを解消
まず冷えを解消することが第一です。暑い日でもシャワー浴ですませずに、湯船にお湯をはってつかり、冷えた体を温かくしましょう。
「適温は38~40℃、入浴時間の目安は15分です。好きな入浴剤を使ってもOK。就寝の1時間半~2時間前に入浴すると、床に就くころに体温が下がり始め、スムーズに寝つくことができます」
◎ストレッチで、副交感神経にスイッチオン
ベッドに横になったら、リラックスモードの副交感神経に切り替わるストレッチを行いましょう。
【寝る前ストレッチ】
「寝る前に深い呼吸とゆったりとした動きのストレッチを行うと、副交感神経のスイッチが入ります。呼吸は、自分で自律神経にアプローチできる唯一の方法です。吸うときは交感神経が、吐くときに副交感神経が優位になります。吐くほうを意識して行いましょう。背中の筋肉をじんわりほぐしていくことで、背中や肩の筋肉のこわばりもやわらぎ、リラックス効果も得られます」
(1)両手は肩幅ぐらいに、両ひざは腰幅ぐらいに開いて、床につける。
(2)直線上に並ぶように、右手の先に左手を移動する。
(3)両手のひらを床から離さずに、口から息を吐きながらお尻をかかとに近づけ、左わきから背中にかけてついている広背筋をじわっと伸ばす。反対側も同様に行う。
寝つきをよくするには、昼間の行動にも気をつけて
日中や寝る前の過ごし方も、寝つきに影響します。生活を見直してみましょう。
◎寝る1時間前にはスマホをオフに
「深い眠りにつくには、寝る前の30~1時間前の過ごし方も大切です。仕事をしたり、興奮するようなゲーム、映画やドラマを見たりすると交感神経が高ぶってしまい、寝つきが悪くなります。寝つけたとしても睡眠が浅くなってしまいます。床に就く1時間前にはスマートフォンはオフにして、寝床に持ち込まないようにしましょう」
◎食べものにも気をつけて
「深い睡眠には、セロトニンという神経伝達物質が関わっています。その材料となるのがトリプトファンです。体内では合成できない必須アミノ酸のひとつなので、牛乳、乳製品、大豆製品、ナッツ類などから摂取しましょう。体重1㎏あたり2mgが目安です」
◎日中は活動的に過ごそう
「昼間の過ごし方が、夜の睡眠にも影響します。日中に日光を浴び、適度に体を動かすことで、睡眠に関わるメラトニンというホルモンが分泌され、寝つきがよくなります。ただし、熱中症リスクが高い日にスポーツをしたりするのはNG。室内でも日当たりのいい場所で過ごすだけでもOKです」
取材・文/海老根祐子 イラスト/クロカワユカリ