腸活や健康のために、海藻、山芋などの「ネバネバ成分」が含まれる食品を食生活にとり入れている人も多いと思います。そんなネバネバ成分で、最近、特に注目されているのが「EPS」とその働き。免疫力が気になるいまだからこそ知り、とり入れたいネバネバ成分について、東北大学名誉教授 齋藤忠夫先生にお話を伺いました。
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知っているようでよく知らないネバネバの原因と健康効果とは?
体によいらしいということは広く知られているネバネバ食材。では、その正体やこまかな働きについてご存じでしょうか。
「ネバネバ成分とは粘性物質のことで、結合する成分がもつ特徴によってネバネバ現象が起きます。ネバネバの食材というと、海藻、オクラ、なめこ、モロヘイヤなどが思い浮かぶかと思いますが、それぞれの食品にフコイダン、ペクチン、アルギン酸などネバネバの原因となる物質があります。
期待される具体的な働きに、糖の吸収を遅らせることで血糖値の急劇な上昇を抑える、腸管でコレステロールの吸収を阻害して排出するなどの作用があげられます」(齋藤先生)
ネバネバ現象には食品それぞれに原因となる物質があり、ネバネバ成分にはいくつもの具体的な健康作用があるのですね。
腸や免疫機能にも働きかけるネバネバ成分
ネバネバ成分は、気になる免疫機能にもかかわるといいます。免疫機能といえば、腸活が効果的というイメージがありますが、ネバネバ成分はどのように作用するのでしょう。
「まず、腸に作用するものとして、プロバイオティクスがあります。その中心的なものに乳酸菌やビフィズス菌があり、腸内でこれらの有用菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維をプレバイオティクスと呼びます。現在ではこのプロバイオティクスやプレバイオティクスの何が人にとってよい作用をもたらすのかの研究が、様々なところで行われています。そのひとつに、乳酸菌などの菌が作りだすEPSがあります。EPSは日本語では「菌体外多糖」といい、このEPSこそ免疫にも働きかけるネバネバ成分。EPSを産生する乳酸菌を摂取すると、EPSは分解されずに小腸に移動し、その一部は小腸から吸収され、粘膜下の免疫細胞である樹状細胞などによって分解され(貪食)、その情報が免疫系にも伝わります。たとえば、ナチュラルキラー(NK)細胞という免疫細胞が活性化され、免疫機能を向上。やがてその作用は、免疫系全体に広がっていくのです」
免疫力が気になるいまだからこそとりたいEPS
いま、多くの人が免疫力に関心をもち、免疫力を高めたいと考えていると思います。EPSを摂取するには、どのような方法がありますか?
「きのこ類や海藻類のネバネバはEPSによるものではなく、また、乳酸菌のEPSのみを精製したサプリメントなどの商品も私の知る限りありません。となると、手軽なのはEPSを産生する乳酸菌を含んだヨーグルトなどをとることですね。
しかし、ヨーグルトにはさまざまな種類がありますが、すべてのヨーグルトに使われている乳酸菌からEPSをとれるわけではありません。R-1乳酸菌(ラクトバチルス・ブルガリクス)やクレモリス菌(ラクトコッカス・クレモリス)FC株などの菌には、大量のEPSを作り出す働きがあります。乳酸菌の直接の作用のほかに、菌が作り出したEPSにも着目してヨーグルト選びをしてください」
バランスのとれた食事、適度な睡眠や運動をベースにした規則正しい生活を送りつつ、これからはぜひEPSを意識して免疫力を高めていきたいですね。
文・取材/馬淵綾子