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「睡眠&フェムケア」不調の原因は9割が睡眠って本当? 質の悪い睡眠が巻き起こす女性に多い症状とは?
「睡眠の秋」といわれるように、暑くも寒くもなく、寝苦しさを感じずに眠りやすいこの時期は、睡眠を見直すのにちょうどいい時期です。特に女性はホルモンバランスにより、眠くなったり、眠れなくなったりしがちです。そこで睡眠専門医として数多くの著者を持つ、坪田聡先生にお話を伺いました。
Contents 目次
生理によって睡眠も変わる「女性ホルモンと睡眠の関係」
女性の体や心は、毎月の生理や妊娠・出産、更年期のゆらぎなどで日々変化し、それに伴い、眠くなったり、眠れなくなったりしがちです。「じつは客観的に見て、女性のほうが男性よりもよい睡眠をとっています。睡眠の検査を行うと、女性は寝つきがよく、深い睡眠が多く、長い時間眠ります。徹夜したあとには、男性より深く眠って、睡眠不足を解消する力がすぐれているのが女性なのです。ところが、なぜか成人の女性は、あまり自分の睡眠に満足せず、不眠を訴えることが男性よりも多いという特徴があります」(坪田先生)。
それには、女性ホルモンとの関係が深そうです。そのメカニズムについて教えてください。
「確かに月経による睡眠の変化はあります。ある調査によると、日本女性の41%が月経に関連して睡眠の変化があると答えています。月経と関連する女性ホルモンには、卵胞ホルモンのエストロゲンと、黄体ホルモンのプロゲステロンがあります。エストロゲンは、月経から排卵までの間(卵胞期)に多く分泌され、プロゲステロンは、排卵から月経までの間(黄体期)にたくさん分泌されます。この二つのホルモンは、脳の松果体(しょうかたい)に作用して、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌に影響を与えます。また、プロゲステロンは、催眠作用があるガンマ・アミノ酪酸(ギャバ)の作用を増強して、日中の眠気を強める作用もあります」。
「排卵から黄体期にかけて、体温が上がります。夜の体温が高いままだと眠気が減るので、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりします。そして、夜の睡眠が悪くなると、睡眠不足のため、日中の眠気が強まります。また、この時期は、最高体温と最低体温の差が小さくなるため、睡眠と覚醒のメリハリが減って、夜はあまり眠れず、日中はぼーっとした状態が続きます。さらに、睡眠時間帯が遅いほうにずれやすいので、早寝早起きが難しく、夜更かしで朝寝坊になりがちになってしまいます」。
睡眠と深いかかわりがある「女性に多い不調や病気」
前述のように月経の周期に合わせて、眠くなったり、眠れなくなったりしてしまう女性の睡眠。質の悪い睡眠を続けていると、いろんな不調が現れます。ここでは、女性に多い病気と睡眠障害の関係をご紹介します。
●月経関連過眠症
月経の約1週間前から日中の眠気が強くなり、月経の開始とともに眠気が軽くなるパターンがあり、強い眠気が2日以上続き、それが年に1回以上あると、月経関連過眠症と診断されます。対策としては、睡眠の質を高めるために生活習慣の改善が大切です。たとえば、日中に日光をしっかり浴びたり、昼夜の生活にメリハリをつけたりしましょう。それでもよくならない場合は、婦人科を受診しましょう。
●鉄欠乏性貧血
女性は、月経や妊娠、授乳によって鉄を失いやすいので、貧血になりやすいです。貧血になると、イライラしたり、動くのがおっくうな気分になったりします。運動量が減ると体が疲れないため、夜はよく眠れなくなります。また、体調がすぐれないため、朝は寝床を離れにくくなることも。さらに、鉄が不足すると、夜、脚がむずむずして眠れなくなるむずむず脚症候群になります。脚に不快な感じがあるために睡眠の質が悪くなることもあります。食事などで鉄分を意識的にとるようにしましょう。
●便秘
腸は自律神経にコントロールされています。一方、腸の状態によって、自律神経の調子も左右されます。睡眠も自律神経の影響を受けるので、睡眠にとっても腸内環境はとても大切です。便秘にならないためには、水分を十分にとることや、適度な運動、規則正しい生活のほか、食事も重要です。野菜や海藻に多く含まれる食物繊維や、善玉菌となる乳酸菌飲料や納豆、漬物などのほか、善玉菌のエサとなるオリゴ糖が豊富なバナナや大豆などを食べましょう。
●冷え性
人の眠気が強くなるのは、深部体温が下がるときです。ところが、冷え性の人は手足の血液の循環が悪いため、深部体温を効率よく下げられません。これが冷え性による睡眠障害の大きな原因です。解決法は、37~40℃のぬるめのお風呂に10〜20分間ゆっくり入ることです。入浴により手足の血管が開いて、皮膚の血行がよくなります。脳や内臓の熱が血液に乗って手足に運ばれ、皮膚の表面で放熱されると、深部体温が下がりやすくなり、眠りやすくなります。入浴は、寝床につく予定時刻の1〜2時間前に入るのもポイントです。
●乳がん
女性の11人にひとりが乳がんにかかるといわれています。乳がんは、女性ホルモンであるエストロゲンと深い関係があります。そのため、初潮が早かったり、出産や授乳の経験がなかったりすると、乳がんにかかりやすくなります。また、交代制勤務や夜勤を行っている女性は、夜勤のない女性に比べて、乳がんが32%も増えることがわかっているので、注意が必要です。さらに、夜勤を行う女性は、すべてのがんにかかるリスクが5年ごとに3.3%ずつ増えます。
これは、本来は眠るべき時間に起きて働いていると、生体リズムが乱れて、自律神経やホルモン分泌リズムがおかしくなってきます。また、生体リズムに従っている時間遺伝子の異常が起こり、がんが増えやすくなると考えられています。年に一度は乳がん検査を受けてください。
体の不調を感じている人は、適切な医療機関を受診するとともに、すぐに睡眠を見直しましょう。
取材・文/奥沢ナツ