10月は乳がん予防月間で、乳がんへの関心が高まる時期です。乳がんを含めがんの予防には日ごろの生活習慣が大切だと考えられるようになっています。今回、海外研究において、13万人もの女性のデータに基づく分析が行われ、活動的かどうか(運動をするか)が乳がんのリスクに関連することが示されました。4割ほどのリスクが低下するようです。
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乳がんを減らす行動とは?
乳がんは日本でも増加。2018年には年間9万3858人が診断されており、女性では最も多いがんです。その予防につながる生活習慣は関心を集めています。
今回、乳がんと遺伝子の関連を研究している国際組織「乳がん協会コンソーシアム(BCAC)」の研究グループが、遺伝情報の個人差である「一塩基多型(SNP)」と呼ばれる特徴を用いた「メンデルランダム化」という方法によって、活動的であるかどうかが乳がんのリスクに関連しているか調べました。
遺伝子の特徴とその人の生活習慣は深く結びついています。そこで遺伝子の特徴からその
人が活動的かどうかの情報を得て、その情報と乳がんのリスクに関連があるのかを解き明かそうとするものです。
遺伝的に予測される場合に、実際に予測された通りの生活習慣をとる可能性が高いことを応用した分析で世界的に注目されている方法です。
研究グループは、約50万人の遺伝情報や健康情報を集めている英国のデータベース「UKバイオバンク」から、運動にどれくらい取り組むか、また激しい運動に取り組んでいる、または座っている時間はどれくらいかという特徴につながる遺伝子を調べました。そのうえで、遺伝子の特徴の情報と欧州13万人以上の女性(乳がんになった人はおよそ7万5000人)の遺伝情報と、そこから予想される活動的かどうかの特徴、さらに乳がんになったかどうかの情報を突き合わせ、活動的であるかどうかが乳がんのリスクにどれくらい関連するかを計算しました。女性のデータは閉経の前か後か、また乳がんのタイプ(トリプルネガティブやホルモン受容体陽性など)、ステージ、グレードでグループ分けして調べました。
どのタイプやステージの乳がんでも
こうして判明したのは、活動的であることが、乳がんのリスク低下に間違いなくつながりそうだということです。具体的には、遺伝子の情報に基づいて活動的と予想される(つまり、遺伝的に運動する傾向が本来ある)レベルが全体的に高いと、乳がんになるリスクは41%低くなると計算されました。
この結果は閉経しているかどうか、または乳がんのタイプ、ステージ、グレードといった条件が変わってもほぼ同じでした。同様に、ほとんどのグループについて、遺伝子の情報から激しい運動をする傾向があると予測される人は乳がんのリスクが低くなり(週に3日以上であれば、まったくしない人に比べて38%)、座っている時間が長い傾向があると予測される人ではリスクが高くなりました(トリプルネガティブ乳がんのリスクは2倍以上)。
これらの結果は、喫煙や過体重など影響を与えそうな条件を含めて分析しても変わりませんでした。研究グループは、全体的な身体活動の量、激しい運動の量が多いほど、また座っている時間が少ないほど、乳がんになるリスクが低くなるという強力な証拠と結論。より活動的なライフスタイルを取り入れることが大切だと指摘しています。
<参考文献>
Boosting physical activity/curbing sitting time highly likely to lower breast cancer risk
https://www.bmj.com/company/newsroom/boosting-physical-activity-curbing-sitting-time-highly-likely-to-lower-breast-cancer-risk/