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水を飲んでも、うるおわない⁉ うるおいを守るためにいい食べものとは? 大人気漢方家・櫻井大典さんに聞く秋冬の乾燥対策
涼しい風が心地よく過ごしやすい季節になりました。その一方で、肌や髪のカサつきが気になり始めている人も多いのではないでしょうか。そして、乾燥しているのは肌や髪だけではありません。空気が乾けば、体の中も乾燥し、それが不調につながりかねないそう。
そこで今回は、これからやってくる乾燥の季節を乗り切るヒントを、『病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)の著者で、Twitterフォロワー17万人超の漢方家・櫻井大典さんに教えていただきました。乾燥対策にいい食べものとは?
Contents 目次
秋は「乾燥」の季節。肺が弱り、気管支系のトラブルが多くなりがち
夏のじめじめとは打って変わって、秋になると湿度がぐんと降下。一気に空気は乾燥していきます。櫻井さんによると、体調管理をするうえでも、秋は「乾燥」がキーワードになってくるそうです。また、中医学(中国の伝統医学で東洋医学のひとつ)では、『五臓』という考え方がありますが、五臓うちのひとつ「肺」がダメージを受けやすくなるのも秋の特徴なのだそう。
「中医学では、人の体を肝(かん)、心(しん)、脾(ひ)、肺(はい)、腎(じん)の5つに分類する、『五臓』という考え方があります。五臓と聞くと、肝臓や心臓などの臓器をイメージするかもしれませんが、中医学でいう五臓とは、単にその臓器を指すのではなく、機能や役割まで含めたもっと広いとらえ方をします。さらに、五臓は季節とも関連があり、春は肝、夏は心、土用は脾、秋は肺、冬は腎が影響を受けやすいと考えられています。となると、これから迎える秋に影響を受けやすいのが、『肺』というわけです。
肺は呼吸を通じて直接空気が触れる箇所ですから、乾燥の影響を受けやすいのです。そのため空気が乾燥すると、肺はもちろん、気管支やのど、鼻なども乾燥しやすくなって、咳、痰、鼻水など気管支系の不調が起こりやすくなります。また。皮膚や腸なども五臓でいう『肺』の管轄に含まれますから、これらも乾燥しやすくなります」(櫻井さん)
湿度の高い夏は、体に水がたまって不調を起こすことがありました。そのため、適度に汗をかいて、水を発散することも対策のひとつと教えていただきました。それとは対照的に、乾燥の季節である秋は「うるおいを守る」ことが重要になるそうです。
れんこん、梨、ぶどう…。 “白いもの”と“甘酸っぱいもの”がうるおいを守るためには最適!
では、うるおいを守るためにはどんなケアをとり入れるといいのでしょうか。
「薬膳(中医学の考えに基づいた食事)では、白いものや甘酸っぱいものがうるおいを守ってくれる食材とされていますから、それらを意識的にとり入れるといいでしょう。白いものならば、例えば、れんこんや白菜、豆腐、白ごま、白きくらげ、豚肉などです。甘酸っぱいものには、梨やぶどう、柿などの果物のほか、梅干しなども該当します。また、はちみつとレモンはどちらもうるおいを守るためにすぐれた食材ですから、これからの季節は、はちみつ漬けにしたレモンを常備して、お湯割りにしたり、紅茶に入れたりしていただくのもいいですね。
その他、大根やねぎ、玉ねぎ、にらなど辛味のある食材も、乾燥しやすい呼吸器系や肌を強くしてくれるのでおすすめです。ただし、唐辛子やしょうがなどを食べ過ぎると発汗によってうるおいが消耗されてしまいますから、辛味はあくまでも少量です」(櫻井さん)
また、乾燥の季節はホットヨガや岩盤浴、サウナなど大量に汗をかく行為は注意が必要だといいます。
「汗をかくと体がうるおったように感じるかもしれませんが、じつはその逆。汗によって体の中の水分が発散されていくため、体内は乾いてしまいます。湿度の高い季節は体に水がたまりやすいので、発汗は体調管理に効果的ですが、気候が変われば、逆効果になってしまう可能性もあるのです。中医学では私たち人間も、自然の一部と考えます。だから、気候に合わせて、食べ方や過ごし方を変えていくことも大事になってきます」(櫻井さん)
水をたくさん飲んでも、うるおわない。水のとりすぎは、胃腸の不調を招くことも
ところで、うるおいを守りたいなら「水をたくさん飲めばいい」と思った人もいるのではないでしょうか。櫻井さんによると、それは御法度。水をがぶがぶ飲めば、体がうるおうどころか不調を招きかねないそうです。
「うるおいが必要だからといっても、水をたくさん飲めばいいわけではありません。皆さん、点滴を想像してみてください。点滴はポタポタポタと、ほんのわずかな量しか滴りませんよね。あれが、体が吸収できるスピードです。つまり、水を一度にがぶがぶ飲んでも体は吸収できず、ただ通過していくだけなのです。それに、がぶがぶ飲めば、いくら乾燥の季節とはいえ、体に水が余ってしまい、むくみや、重だるさにつながってしまいます。また、胃腸や、体内の水分処理をおこなう腎臓の負担を増やして、疲弊させてしまいかねないのです。胃腸が弱れば、食欲が低下してしまいます。それによって栄養が十分に吸収できなければエネルギー不足となり、だるくなったり、疲れやすくもなってしまいます」
食材に含まれる量の水分であれば、ゆっくり吸収することができるので、胃腸や腎臓にも過度な負担がかかりません。また、食材の場合はビタミンなどの他の栄養素も複合的にとれるので、効率的に体内をうるおすことができるそうです。
「先ほど、『五臓』について触れましたが、五臓は単体でとらえるのではなく、ほかの臓腑とのバランスを考えることも大事です。前述したように秋は乾燥によって『肺』がダメージを受けやすくなりますから、うるおいを補って肺を労わることが必要です。だからといって、うるおせばうるおすほどいいわけではないのです。なぜなら、五臓の中にはうるおいを苦手とする臓腑もあるからです。それが、胃腸に近い働きをする『脾』。肺は乾燥が苦手で、うるおいを好みますが、逆に脾は、うるおいが苦手で乾燥を好みます。だから、乾燥し過ぎもよくありませんが、うるおし過ぎるのもよくありません。その点を踏まえながらケアをしていかないと、よかれと思ってやっていることが不調の引き金にもなりかねないのです」
これから冬に近づくにつれ、空気はますます乾燥していきますが、「いざ本格的な乾燥に直面してから対処するのではなく、先の季節のために備えることが大事」と櫻井さん。本格的な乾燥シーズンに備えて、体をうるおす習慣を今のうちからとり入れていきましょう。
肌寒くなると、風邪をひく人が増えてきます。次回は、風邪の養生法について、教えていただきます。ひとくちに風邪といっても、タイプによって対処法が異なるようです。
取材・文/柿沼曜子
『病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)
コロナ禍で様変わりしたダイエットやエクササイズ、食事管理などの方法を、「新しい時代」にマッチした形で無理なく、効率的な形で発信していくプロジェクト。毎週の記事・動画配信のほか、会員登録者には特典も。シーズン3の期間は8月から11月まで。詳細はhttps://fytte.jp/healthcare_project/