月経や出産、不妊や更年期など、これまで女性が声を上げにくかった数多くの健康課題。これらを解決する手段として、近年、注目を集めている“フェムテック”。今回は、女性に多い不調と睡眠の関係を、睡眠専門医として医療の現場に立つ、坪田聡先生にお話を伺いました。
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じつは女性特有の悩みと密接にかかわっている睡眠
“フェムテック(Femtech)”とは、「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」をかけ合わせた造語です。一般的に、毎月の生理や、妊娠や出産、不妊や更年期のゆらぎなど、女性が抱える健康課題の改善を目指す製品やサービスのことをいいますが、これまで人前で話すことをタブーとされていた女性特有の悩みを問題定義し、新しい当たり前を作るといったとムーブメントなども含めて使われることも。
「女性は月経周期に合わせて、眠くなったり不眠になったりすることがあります。日本での調査では、41%の女性が月経に関して、睡眠に変化があると答えています。そのうち、月経前後の不眠症は6%と少なく、過眠症が94%と大部分を占めていました」(坪田先生)。
●生理と睡眠
「月経周期は、月経から排卵までの卵胞期と、排卵から月経までの黄体期の2つに分けられます。黄体期には、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの血中濃度が高くなります。このプロゲステロンには体温を上げる働きがあり、目を覚まさせます。私たちは体温が下がると眠くなり、体温が上がるときに目が覚めるようにできているのです。これは、受精卵が子宮内膜にくっつきやすくするためと考えられています一方、卵胞期には、卵胞ホルモン(エストロゲン)が出て、休む状態となり、眠くなりやすくなります」(坪田先生)。
●更年期と睡眠
「50歳前後で閉経が訪れると、女性ホルモンの分泌が減るため、いわゆる『更年期障害』と呼ばれる症状が出てきます。ほてりや冷えなどがあるため、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりと、不眠が多くなりがちです。また、それだけではなく、50代の女性は子どもが親離れしたり、夫が定年となって家にいる時間が増えたりするなど、精神的なストレスが多く、気持ちが鬱々としてしまいます。これらの複合的な理由が重なって睡眠に満足していない人が多いです」(坪田先生)。
●肌荒れと睡眠
「睡眠不足になるだけで、お肌の水分量やコラーゲンの生成、分解力が落ちてしまうので、肌の状態は悪くなってしまいます。さらにホルモンの変化が重なると、ニキビや吹き出物ができやすくなってしまいます。よい睡眠がとれるような生活習慣を身につけることで、睡眠が改善されれば、肌荒れもよくなります」(坪田先生)。
●便秘と睡眠
「『脳腸相関』という言葉があるように、生物にとって重要な器官である脳と腸は、お互いに影響を及ぼし合っているといわれています。たとえばストレスによって胃腸の働きが悪くなることがありますが、これは、ストレスを体全体で解消しようとすると、動かなくていいところはできるだけ活動をしないように働くためです。消化に必要な胃や小腸は動いても、大腸は動かないため、便秘になってしまいます。また、睡眠の質が悪かったり、睡眠不足が重なったりすると、腸の動きが悪くなり、便秘になることが多いのもわかっています」(坪田先生)。
●ダイエットと睡眠
「睡眠不足や睡眠の質が悪いと、満腹ホルモンのレプチンが減り、空腹ホルモンのグレリンが増えてしまいます。そのため、お腹が減りやすく、高カロリーや炭水化物の多いものを食べたくなってしまいます。そして、たくさん食べてしまうと、体の中で余った糖質は中性脂肪に変わるので、太りやすくなってしまいます。また、日中の眠気が強いと、活動量は落ちてしまうので、これも太りやすい原因になります。ですので、効果的にダイエットするためには、しっかり寝ることが重要なのです」(坪田先生)。
質のよい睡眠をとることで、これらの問題は改善できます。そこで、次回は、即効性のある質のよい睡眠をとるためのポイントをご紹介します。
取材・文/奥沢ナツ