夜、なかなか眠れない、いくら寝ても疲れがとれない、何度も起きてしまう…などの睡眠の悩み。ある研究では、睡眠の質は男性より悪くないのに、睡眠に不満を持っているのは圧倒的に女性が多いということがわかっています。そこで今回は、そんな睡眠に不満を持つ人に向けて、睡眠専門医の坪田聡先生に、すぐできて効果的な快眠法を教えていただきました。
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光のコントロールと食事の規則性が成功のカギ
効率よく質のいい睡眠を手に入れるには、何に気をつけるのがよいのでしょうか?
「快眠するのにいちばん影響が大きいのは、光のコントロールです。人が好む明るさは1日の中でも規則的に変化します。午前中は500ルクス以上の明るさを好みますが、午後から少しずつ減っていき、夕方には200ルクスぐらいになります。ちなみに、オフィスは一般的に500〜1000ルクスあり、家の台所や居間は200~300ルクスが多いようです」(坪田先生)。
「夕食後は照明を次第に暗くしていきましょう。とくにパソコンやスマートフォンの青い光のブルーライトは、睡眠ホルモンのメラトニンを減らします。そのため、夜の照明はブルーライトが多く含まれる昼光色や昼白色は避けて、暖色系のものにしましょう。もちろん、パソコンやスマートフォンは、できれば寝る1時間前、少なくても30分前にはやめましょう。とくに暗い場所でスマートフォンの光を見ていると、瞳孔が開いているのでブルーライトが入りやすい状況です。ますます眠くなくなってしまうので、その習慣は今すぐにやめましょう」
「一方、朝起きたら、カーテンや窓を開けたり、照明をつけたりして、明るい光を十分に浴びましょう。明るい光やブルーライトを浴びると、睡眠ホルモンのメラトニンが急激に減ってすばやく目が覚めてきます。ですので、SNSやゲームなどは朝に行うのがおすすめです。また、光は体内時計をリセットする働きがあるので、体調もよくなります。できれば外に出て、朝日を浴びながら散歩すると、覚醒系神経を活性化する幸せホルモンのセロトニンが増えるので、さらに効果的です。日中にたくさん光を浴びると覚醒度が高まり、夜にはぐっすり眠れるようになります」
「2番目に大事なのは食事の規則性です。1日3食、なるべく同じ時間に食べるようにしましょう。食事は、体内時計が組み込まれた体の細胞を目覚まし、さまざまな生体リズムを調整しています。食事をとると、血糖値が上がり、膵臓からインシュリンが分泌されます。このインシュリンの働きによって、全身の細胞はブドウ糖をとり込みます。そのため、規則的に食事をすると、このリズムが周期的になり、全身の細胞が元気に働いてくれるのです。休日も同じ時間に食べましょう」
「あとは寝室の環境を整えましょう。とくに温度や湿度は注意を払いましょう。快適に眠れる寝室の室温は16〜26℃です。室温が同じでも湿度が高いと眠りづらいので、湿度は50~60%になるようにコントロールしてください」
「明るさは、暗闇が気にならない人は、なるべく暗くしてください。真っ暗だと心配な人は、豆電球くらいの明るさなら問題ありません。テレビや照明をつけっぱなしにして眠るのだけはやめましょう。また、寝室の音のレベルが40デシベルを超えると、睡眠に悪い影響を与えるます。40デシベルは静かな図書館レベルの静けさです」
「睡眠におすすめな香りは、ラベンダーや、ヒノキ科などの樹木の香りに含まれるセドロールなどが有名です。このほか、西洋の民間療法では、タマネギの匂いで寝つきをよくするというものがあります。以前、いつもは昼寝をしない幼稚園児にタマネギの匂いを嗅がせて、眠るかどうかを実験したことがあったのですが、やってみると自然と眠ってくれました。これは、タマネギやネギ、ニラなどの独特な刺激臭や辛みのもとになっている『硫化アリル』という物質のためです。この硫化アリルには、気持ちを落ち着かせて眠りを誘う効果があります。ただし、匂いが強すぎると逆効果なので、かすかに匂いを感じるくらいの場所に置きましょう」
自然に気持ちよく起きるための「自己覚醒法」を伝授
最後に、目覚ましのアラームで飛び上がるように起きるのではなく、自然に起きたい時間に起きる方法を教えていただきました。
「起きる時間と寝る時間はどちらも大事ですが、どちらかというと起きる時間を一定にしたほうが、よく眠れて健康的な毎日を過ごせます。自然に目を覚ます方法は、『自己覚醒法』といい、寝る前に起きる時間を強く念じるというものです。
たとえば6時に起きようと思ったら、『6時』と強く念じたり、枕を6回たたいたりして自分の深層心理に起きる時間を吹き込んでおくと、ある実験では、起床時刻の1時間半前から血圧や体温が徐々に上がって、体が起きる準備をしていたというデータもあります。ちょっと胡散臭く聞こえますが、練習をすれば3分の1から半分の人ができるようになります。これができるようになると、ストレスなく気持ちよく起きられるため、午前中のパフォーマンスもよいといわれています。ぜひ試してみてください」
早速、今夜から試せるものばかりなので、たかが睡眠と思わず、ぜひ習慣化して快眠を手に入れましょう。
取材・文/奥沢ナツ