みなさんは、「フレイル」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか? フレイルとは、加齢とともに心身の活力が低下し脆弱性が出現した状態を指すのですが、じつはコロナ禍で運動や社会参加の機会が減る中、若い世代にもフレイル該当者数が増加しているのだとか! そこで今回は、伊藤園が開催した「第7回 伊藤園健康フォーラム ~今日からはじめるフレイル予防~」の講演をレポートしていきます。
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30~40代から対策が必要な「フレイル」とは?
フレイルとは、筋力、活力の低下を意味しており、フレイルを放っておくと要介護に陥る危険性があります。また、認知症、高血圧、糖尿病、心不全、不整脈…その他さまざまな慢性疾患のリスクと関連することも指摘されています。
山田先生によると、フレイルは「心理・精神的」「身体的」「社会的」という3つに分類されており、これまでは加齢によってフレイルから要介護の状態に一方向に進むものとされていましたが、食事や運動といった日常生活を見直すことで健康な状態に改善することがわかってきているとのこと。そのため、深刻な状態にならないためにも、若いうちから始めるフレイル予防について知っておくことが大切なのだそう。
「フレイルの状態は近い将来、要介護へと進展してしまう危険性が非常に高まっているということですが、その一方でフレイルの予備軍を意味する“プレ・フレイル”や、とても健康な状態を示す“ロバスト”という状態へ回復できる可能性を十分に秘めています。
壮年期の対策が更年期の筋肉の状態を非常に大きく左右するため、壮年期にしっかりと運動習慣を身につけ、筋肉を蓄えておくことが大事ですが、フレイル対策を考えていく際には『運動』以外にも、『栄養』『社会参加』と呼ばれる側面も極めて重要です」(山田先生)。
山田先生によると、フレイル対策はオート3輪に例えられるとのこと。「オート3輪のひとつひとつの車輪が、運動・栄養・社会参加で構成されているイメージで、このトラックが運ぶのが自身の健康です。つまり、健康推進のためには3つの車輪を回し続けることが大切なのです」(山田先生)。
ただ、これはひとつの車輪が回れば、ほかの車輪も巻き込んで回すことができるため、たとえば社会参加を活発に行うことで運動をすることにもつながり、結果的に食事もおいしくとれるようになるというように、連動しながらのフレイル対策が重要になってきます、と語っていました。
緑茶の摂取が多いほどフレイル該当率が低くなる!?
続いては、医薬基盤・健康・栄養研究所の南里妃名子先生が登壇し、フレイル対策に効果的な食事からのアプローチ方法をお話してくれました。
「食事は、フレイル予防改善の観点から重要な生活習慣因子のひとつであることがわかっています。じつは、私どものデータを用いてたんぱく質とフレイルとの関連を検討すると、男女ともにたんぱく質摂取量が多くなるほど、フレイル該当率が低くなるという結果が得られているのです。その一方で、国民健康調査のデータを分析すると、とくに30~64歳の日本人のたんぱく質量が不足していることがわかっており、たんぱく質不足の食生活が続くと、高齢期にフレイルのリスクが増加することも考えられています」(南里先生)。
また、たんぱく質と同様に抗酸化物質の摂取もフレイル予防に期待されているとのこと。酸化反応により引き起こされる生体にとって有害な作用の“酸化ストレス”が蓄積されると、体内で細胞を損傷する物質が増加してしまうのだそう。そのため、抗酸化作用の高い野菜や果物、緑茶といった食品や飲料を摂取することで、酸化ストレスの蓄積を防ぐこともフレイル予防には重要と考えられています。
南里先生によると緑茶はどの年代の人にもよく飲まれており、実際に緑茶を飲まない人と比較したときに、緑茶の摂取が多いほどフレイル該当率が低くなるという結果が出ており、緑茶に含まれる抗酸化物質がいい結果をもたらしていると推測されているとのことでした。
“お茶”が健康長寿のカギになる!
後半は、登壇者によるパネルディスカッションが行われました。健康長寿のカギを握るものとして、伊藤園中央研究所所長の衣笠さんは、フレイルからプレ・フレイル、さらにはプレ・フレイルから健常状態へ改善していくためにも、できるだけ早めの段階で対応していくことが重要であると語っていました。
山田先生は「筋力の低下や衰えが始まる壮年期からの対策が必要になってきますが、筋肉は何歳になっても可逆的なものですので、気づいた時点で対策をとる意味は十分あることも強調したいですね」と呼びかけ、南里先生は「生活習慣病を持っていると、その後フレイルになるリスクも高いため、やはり30~40代ごろからしっかりと食習慣を見直すことが重要であろうと思います」とコメント。
さらに、前半の講演でもあったように緑茶を飲む習慣がある人はフレイル該当割合が低いことが明らかになっていますが、緑茶の持つ抗酸化物質の効果以外にも、緑茶を飲むような機会、つまり誰かとコミュニケーションをとるといった社会的参加の部分で影響をもたらしている可能性も考えられるとのこと。衣笠所長は、お茶はコミュニケーションツールのひとつであり、お茶を活用したコミュニケーションがフレイルに貢献するのではないかと考えているとコメントしていました。
コロナ禍により「運動」や「社会参加」の機会が減少した今、シニア世代だけでなく、若い世代にもフレイル予防がとても重要になってきています。健康寿命延伸のためにも、自身の運動や栄養、そして社会参加の3つの柱を改めて見直してみるといいかもしれません。また、今すぐとり入れられるフレイル対策として、ぜひ緑茶を日常生活にとり入れてみてはいかがでしょう? “お茶”の持つ可能性に今後も注目です!
文/FYTTE編集部