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父親の育休で、母親の産後うつが悪化!? 海外研究では期待とは裏腹な結果に…

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出産後、特に母親はメンタルの不調で、産後うつに至ることが珍しくありません。周囲のサポートは重要ですが、その一助として父親が育休をとって母親をサポートすることは産後うつの予防につながるのではと期待されます。ところが、海外研究によると、父親が育休をとった場合、母親のうつ病がむしろ増えると報告されました。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

子どもが生まれて2か月後の調査

育休

出産および育児に伴う疲労は心身に重い影響を及ぼします。海外研究によると、新米ママの5人に1人くらいが子どもの誕生から1年以内にうつ症状を発症するといいます。一方で、新米パパも10人に1人くらいが同様にうつ症状を発症することがあるようです。

パパとママが協力することが大切だという観点からいえば、パパが育休をとってサポートすることには意味がありそうです。育休は日本でも共働きが当たり前になるなか、先進国で構成されるOECD(経済協力開発機構)加盟38か国のうち、日本を含む27か国が何らかの形で育休制度を設けているそう。特に父親の育休は、母親の家事や育児の負担を軽減すると同時に、子どもとの絆を深めることで、うつ症状を予防する可能性があります。

今回、フランス国立衛生医学研究所をはじめとした研究グループは、OECD27か国の平均である2週間の有給育休が認められているフランスで、育休とうつ症状との関連性を分析。子どもの出生からの追跡調査し、フランスの大規模研究の参加者から、父親およそ1万1000人と母親1万3000人のデータを集めました。子どもの誕生から2か月後(過去の研究から、産後うつに関して重要な時期)に電話インタビューを行い、父親が育休を取得したか、またはとる予定があるかどうかに加え、うつ症状の問診票でスコアを見ました。

母親はリスク下がらず

育休

こうして確認されたのが、父親が育休をとると、父親のうつ病は減るものの、母親のうつ病は逆に増えるということ。

具体的には、育休を取得しなかった父親では、うつ病と見なされる人の割合が5.7%だったのに対して、育休をとった父親では4.5%(とる予定の父親では4.8%)と低く、うつ病になるリスクが下がりました。ところが、母親では、父親が育休をとった場合にはうつ病と見なされる人の割合が16.1%だったのですが、父親が育休をとらなかった母親の15.3%(とる予定の場合は15.1%)より高く、リスクの低下が認められませんでした。

このように父親と母親の間で差ができた理由ははっきりとしませんが、母親にとっては、子どもの誕生時に十分なサポートを受けるには2週間では足りない可能性があるというのが研究グループの見立て。父親の育休は家族の関係性を高め、子どもの情緒的な発達にもプラスになることが過去の研究で示されているため、父親のメンタル面でも有効といえそうですが、育休のとり方しだいではかえって母親の負担を軽くすることができないかもしれず、こんな研究結果を参考に考えてみることもよいかもしれません。

<参考文献>

Barry KM, Gomajee R, Benarous X, Dufourg MN, Courtin E, Melchior M. Paternity leave uptake and parental post-partum depression: findings from the ELFE cohort study. Lancet Public Health. 2023 Jan;8(1):e15-e27. doi: 10.1016/S2468-2667(22)00288-2. PMID: 36603906.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36603906/

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