世界中で推定100万人以上がかかり、77万人近くの命を奪っている胃がん。このがんは特に東アジアで発生率が高いことが知られています。日本ではX線(いわゆるバリウム検査)または内視鏡による検診が行われ、胃がんの発見や死亡者減少に効果を上げてきました。さらに最新のデータを分析した日本の研究からは、胃の内視鏡検査が特に胃がんの死亡率を大幅に減らすことが明らかに。内視鏡検査には尻込みする人も多いかもしれませんが、検討の価値はありそうです。
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2022年10月末までの研究を収集
日本において胃がんは男性の場合、前立腺がんに続いて2番目、女性では乳がん、大腸がん、肺がんに続いて4番目に見つかる人が多いがん。がんの発見に重要なのは検診です。日本の胃がん検診ガイドラインは、これまでの研究を踏まえて2015年に発表されたもので、現在も有効。これは過去の研究に基づいてつくられましたが、その後も有効性を調べる研究は継続的に行われています。
今回、藤田医科大学など日本の研究グループは、胃がん検診の有効性を最新のデータで再評価し、その結果を発表しました。研究内容のアウトラインは次の通りです。
研究グループは、健康で胃がんに関連した症状がなく、胃がんの発症リスクが平均的であると見なされた人を対象に、検診によって胃がんで死亡するリスクをどの程度下げられるのかについて調べました。胃がん発症リスクを判断する際には、ピロリ菌感染、喫煙、過度のアルコール摂取、胃食道逆流症などの要因が考慮されました。
研究グループは、現在の胃がん検診ガイドラインをつくるプロセスにならう形で、2022年10月末時点までの22件の研究(合計参加者160万人以上)を集めました。検診を受けた人と受けなかった人の比較、検診の案内を送った人全体を含めた検診プログラム参加者全体の分析などをして、X線検診と内視鏡検診の効果を別々に検証しました。
地域を絞っても同様の有効性
こうして研究で確認されたのが、検診によってやはり胃がんによって亡くなる人を減らせることです。具体的に見ると、実際に検診を受けた人と受けなかった人で分析した場合、特に内視鏡検査では48%の低下が見られ、これは統計的に確実な結果と判断。一方でX線検査では20%の死亡率低下が確認されましたが、この結果は統計的に確実な結果となりませんでした。
検診へと案内された全員を含む検診プログラム全体を考えた場合、受診率が低いためにX線検査も内視鏡検査も明確な効果は認められませんでした。検診の効果は、個々人が検診を受けることを選択するかどうかにかかっていると見られます。以上が研究の要点です。
今回の研究からは、特に内視鏡検診を受けた人の恩恵が大きいといえます。受診率は低いということなので胃がん検診を受けていない人は多いかもしれませんが、内視鏡検査を受けたことがないという人をはじめ、検診を受けることを検討するのは意義がありそうです。
<参考文献>
The Lancet Regional Health – Western Pacific Published Online March 11, 2023
https://doi.org/10.1016/j.lanwpc.2023.100741
https://www.thelancet.com/journals/lanwpc/article/PIIS2666-6065(23)00059-7/fulltext