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CATEGORY : ヘルスケア |女性ホルモン

人類最多の生理回数を経験する現代女性が抱えるリスクとは? ドクターがアドバイスする、女性の体と不調の“リアル・フェムケア”

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女性の不調

高齢出産や出産する子どもの減少などライフスタイルの変化を背景に、かつてないほどの生理の回数を経験している現代女性。その影響は、生理に伴う心身の不調だけでなく、じつは子宮や卵巣の病気の一因にもなっているそう。現代女性を取り巻く社会的環境と不調の関係について、女性医学に詳しいクレアージュ東京レディースドッククリニック婦人科顧問の大島乃里子先生にうかがいました。

監修 : 大島 乃里子

クレアージュ東京レディースドッククリニック 婦人科顧問 東京医科歯科大学医学系研究科産婦人科学博士課程修了。医学博士。日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本婦人科腫瘍学会専門医・指導医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医の資格を持つ女性医学のエキスパート。

Contents 目次

生涯で経験する生理の回数はどれくらい?

生理

毎月やってくる生理。現代女性が一生で経験する回数をご存じでしょうか。

その回数は400~450回程度。これは昔の女性の4~9倍に相当するといわれています。

妊娠、出産、授乳期は生理が止まるため、多産だった昔の女性が一生で経験する生理は50回~100程度。対して現代女性は初潮年齢が早まっている一方、初産年齢が遅くなって、出産する子どもの数は大幅に減少し、その結果、生涯での生理回数がかつてないほどの多さに。歴史的に見て、これが“人類最多”といわれるゆえんです。

生理の回数が多いということは、それだけPMS(月経前症候群)や生理痛などの心身の不調にさらされることも増えるということ。さらに、さまざまな病気のリスクも指摘されています。

「女性の体は排卵に向けてエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が増え、子宮内膜が厚くなっていきますが、妊娠せず不要になった子宮内膜は血液と一緒に排出されます。これが生理です。妊娠に至らず、生理サイクルが長い期間くり返されるということは、過剰にエストロゲンが分泌されている状態ともいえ、エストロゲンが過多になると子宮体癌や乳がんのリスクが高まることがわかっています。また、排卵自体が卵巣へのダメージを伴うため、経験する排卵回数が多くなることで、卵巣がんになるリスクも上がります。日常生活でPMSや生理痛といった症状をほとんど感じないという人でも、排卵による体への負担は避けられません。毎月くるのが当たり前の生理ですが、回数が増えていることによる体への負担、ひいては病気のリスクが高まっているのが、現代女性の状況なのです」(大島先生)

症状改善、病気予防、そして緊急避妊としてのピル

ピル

体は妊娠するために備えているにも関わらず、結果的に毎月妊娠せず生理をくり返すことは、身体的にやはり不自然なことなのだそう。では、生理に伴う不調や病気のリスクにはどのような対策をとればいいのでしょうか。

大島先生はピルの服用を対応策のひとつに挙げます。

「まず低用量ピルを服用して排卵を抑制することは、体への負担や卵巣がんリスクを軽減する対策のひとつ。月経困難症や子宮内膜症といった病気の治療の場合であれば、保険も適用されます。近年はPMSや生理痛の緩和を目的に生理回数を減らす低用量ピルがオンライン診療でも処方を受けられるようになり、以前と比較して『ピルを活用する』という選択肢は認識されつつあります」

とはいえ、大島先生によると、日本でのピルの普及率はまだ数パーセント。

「欧米では普及が進んでいて、特にフランスやドイツでは5割くらいの人が活用しています。しかし、日本の場合、ピルといえば避妊薬のイメージが根強いこともあり、診療をしていると、特に10~20代の子どもをもつ親世代において、偏見や誤った知識などからピルの服用に抵抗をもつ人が少なくないと感じます」

ひとくちに「ピル」といっても、女性ホルモンの配合量でいくつかの種類があり、なかでも排卵を抑制して生理痛などの不調緩和や、月経困難症のコントロールなどに一般的に使用されることが多いのが低用量ピルです。毎日規則正しく服用することで避妊効果も上がりますが、服用をやめれば妊娠は可能です。

そして、避妊用といえば、いま注目されているのが「アフターピル」。

避妊に失敗したときや、望まない性交渉が行われたときなど、性交渉後72時間(3日)以内になるべく早く服用することで効果を発揮する緊急避妊薬です。

「服用は1回。服作用が少ないのが特徴です。ただ、性交後72時間以内に服用することがポイントなので、診察を受けてから処方されていると緊急時には間に合わない恐れがあります。そのため、処方箋がなくても調剤薬局やドラッグストアで購入ができる販売形態(スイッチOTC医薬品)にして、処方箋なしで購入できるようになったほうがよいという声も出ていて、現在、国で議論が続いています」

正しい知識と、何でも相談できるかかりつけ医をもとう

子宮の健康

「フェムケア」「フェムテック」という言葉が登場し、現代女性を取り巻く健康課題に注目が集まりつつある昨今。大島先生は「自分の体のサイクルや状態を把握し、現代女性はどういったリスクにさらされているかを知っておくことは、将来の健康を考えるうえでとても重要」と指摘します。

そのためには、体調や不調などをなんでも相談できる婦人科系のかかりつけ医を見つけておくこと、そして、正しい知識をもつことが欠かせません。

「月経困難症の治療としてピルの処方が必要なのか、あるいはPMS症状などの不調を改善したいのかによっても、どのような対策を行うのかは異なります。不調に対する改善策として、じつはピルを処方するよりも生活習慣の見直しや、体重管理などのアドバイスが重要になることも。症状や目的によって必要な対策は変わるため、いつでも医師に相談ができるようかかりつけのクリニックを探しておきましょう。また、ネットにはさまざまな医療情報が出ていますが、情報収集ではまずは厚生労働省のホームページ、国立の研究所や病院など公的で信頼度が高いサイトをチェックするのがオススメ。緊急避妊にかかわる医療機関の一覧も厚生労働省のサイトでチェックできます」と大島先生。

正しい知識を得て、自分の体と向き合うことは、将来の健康を守るための一歩といえます。

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FYTTEが「ヘルスケアトレンド2023」の注目トレンドワードに掲げる“リアル・フェムケア”企画では、実生活に根ざした視点から女性ならではの健康課題や注目の話題をピックアップ。次回は2022年に保険適用となった不妊治療のポイントをお伝えします!

取材・文/番匠 郁

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