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お酒がストレスと闘う脳の味方に!? 海外研究が注目する飲酒の健康効果とは

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お酒がストレスと闘う脳の味方に!? 海外研究が注目する飲酒の健康効果とは

飲み過ぎはよくないとしても、適量のお酒については健康効果を示す研究結果も出ています。心臓および血管の病気になりにくいというのもそのひとつですが、メカニズムについてはよくわかっていませんでした。このたび海外研究により、適量のお酒を飲んでいると、ストレスに関連した脳内神経ネットワークの活動が低下することが一因だと報告されました。ストレスの影響が大きいのかもしれません。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

脳内のストレスに注目

飲酒

あなたの脳は大きくて複雑な電気回路のようなものだと想像してください。慢性的なストレスを受けると、脳内のそんな電気回路はストレスによって電気の嵐が起きたようになるのです。それは「ストレス関連神経ネットワーク」の活動が活発になること。そうなると心臓および血管の病気にもつながると考えられています。

一方で、軽〜中度の飲酒(1日に女性1杯、男性1〜2杯)は、心臓および血管の病気になるリスクを下げるという研究結果がありますが、そのメカニズムははっきりしていません。その効果が飲酒によるものなのか、あるいはその人の社会経済的な影響によるのか、健康的な行動によるのか。そうした想定される仕組みのひとつとして、ストレスとの関連が注目されています。

そこで今回、マサチューセッツ総合病院など米国の研究グループは、この飲酒と心臓および血管の病気になるリスクとの関連に、脳内のストレス関連神経ネットワークの活動が影響を与えているのかどうか調べてみました。対象としたのは、病院で行っている追跡研究の参加者5万人以上。アンケート回答から飲酒量を「飲まない/少ない(週に1杯未満)」「中程度(同1〜14杯)」「多い(同14杯超)」に分け、およそ3年半追跡して、心臓および血管の病気との関連性を検討しました。また、脳の断層撮影検査を受けていた700人余りでは、安静時のストレス関連神経ネットワークの活動状況と飲酒量との関連性も調べました。

お酒でストレスに強くなる

飲酒

こうして研究で確認されたのが、中程度の飲酒量の人は、飲まない/少ない人に比べて、心臓および血管の病気になるリスクがおよそ22%低いことです。これはライフスタイルや遺伝子など、影響を与えるほかの多くの要素を考慮して分析した結果です。

また、脳の断層撮影検査から、中程度の飲酒量の人は、飲まない/少ない人に比べて、脳内でストレス反応に関与する「扁桃体」という部分のストレス信号が少なくなっていると同時に、追跡期間中の心臓発作や脳卒中の発症が少ないことが明らかになりました。

慢性的なストレスによって扁桃体が活発なままになると、心臓および血管の病気になりやすくなりますが、お酒を飲んでいるときには、ストレス刺激に対する扁桃体の反応が低下することがわかっています。今回の結果は、中程度にお酒を飲んでいると、扁桃体の長期的な活動低下という影響を与えることを示しています。

さらに、参加者のなかでも不安症などの病歴があって強いストレス反応を示しがちな人では、心臓および血管の病気になるリスクが中程度の飲酒で40%低下と、倍近い数値でした。

とはいえ、今回の研究では、どの飲酒量でもがんのリスクが上昇すること、また飲酒量が多いと心臓発作のリスクが上昇し、一方で脳全体の活動が低下し始める(認知機能に悪影響を与える可能性があります)ことも示されました。

そのため研究グループは、中くらいの飲酒による心臓および血管の病気のリスク低下は、脳内のストレス関連ネットワークの活動低下が一因と指摘。そのうえで、アルコールの有害影響なしに脳のストレス反応活動を低下させる新たな方法を探る必要があると結論づけています。

そうしたストレスに強くなる方法として、運動や瞑想、薬剤療法などの効果について研究を続けているとのこと。ストレスへの対処が今後もっと注目されそうです。

<参考文献>

Mezue K, Osborne MT, Abohashem S, Zureigat H, Gharios C, Grewal SS, Radfar A, Cardeiro A, Abbasi T, Choi KW, Fayad ZA, Smoller JW, Rosovsky R, Shin L, Pitman R, Tawakol A. Reduced Stress-Related Neural Network Activity Mediates the Effect of Alcohol on Cardiovascular Risk. J Am Coll Cardiol. 2023 Jun 20;81(24):2315-2325. doi: 10.1016/j.jacc.2023.04.015. PMID: 37316112.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0735109723054256

Mass General Hospital Researchers Uncover Why Light-to-Moderate Drinking Is Tied to Better Heart Health
https://www.massgeneral.org/news/press-release/mass-general-hospital-researchers-uncover-why-light-to-moderate-drinking-is-tied-to-better-heart-health

飲酒量はどのくらいの量が健康にいい? 海外研究が注目するストレスと心臓・血管疾患への影響とは
https://fytte.jp/news/healthcare/141653/

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