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脳疲労が自律神経の乱れや認知症の原因に。専門医に聞く、脳が睡眠でリカバリーする仕組とは?
「FYTTEヘルスケアトレンド2023」で、トレンドワードのひとつなっている「リカバリータイム」。現代社会で生きている以上、睡眠や休息は避けては通れないテーマですが、コロナ禍を通して、免疫力やメンタルヘルスへの影響などもあり、その注目度は大きくなっています。
そこで今回は、睡眠がもたらす脳の疲れをとるメカニズムや、脳と夢の関係などについて、睡眠の専門医の坪田聡先生にお話を伺いました。ストレスや情報過多で脳疲労しやすい現代人にとって、ぜひ知っておきたい話題です。
Contents 目次
スマートフォンの使いすぎに注意!そもそも脳疲労とは?
近年、スマートフォンの使い過ぎによって脳が疲労することを「スマホ脳」とも呼ぶなど、問題になっていますが、スマホやパソコンから得られる情報量の増加や、ストレスが脳疲労の原因とされています。「脳疲労」とは、その名の通り「脳が疲労」している状態ですが、脳が処理しきれないほどの情報が入ってくると、キャパオーバーになってしまうのです。
脳が疲れているサインには以下のような状態があります。
・考えがまとまらない。
・ぼーっとしてしまう。
・集中力がない。
・記憶力の低下
・ミスが多い。
・怒りっぽい。
・眠気が強い。
これらを放っておくと脳の機能が著しく低下し、頭痛や動悸、息切れやめまい、下痢や便秘など、自律神経失調症の症状が現れます。さらに、食欲のコントロールができなくなり、肥満や生活習慣病のリスクが高くなったり、うつや認知症にもつながるといわれています。
脳疲労と睡眠のメカニズムとは?
脳疲労を回復させるためにも、脳が睡眠で回復するメカニズムを知っておきましょう。
「起きている間、脳内には『アデノシン』という化学物質が蓄積されます。このアデノシンは「睡眠促進物質」とも呼ばれ、疲労とともに増えると眠たくなるようになっています。そのため、脳疲労を起こし、脳に老廃物がたくさんたまっている状態になっても、寝ることで疲労は解消され、朝になるとリセットされて私たちは活動できるのです」(坪田先生/以下同)
「というのも、体内にできた老廃物はリンパ管で運ばれますが、脳にはリンパ管がありません。脳の老廃物は、寝ている間に脳の細胞が少し縮んで隙間を作り、その隙間にリンパ液のようなものが流れて老廃物を洗い流してくれるのです。そのため、しっかり睡眠がとれないと、脳に老廃物がたまったままになってしまいます」
「しかも、この老廃物の中に、『アミロイドβ』という脳内で作られるたんぱく質の一種があります。アミロイドβは、睡眠不足になるとたまりやすくなるほか、40歳くらいから加齢とともにたまりやすくなるといわれ、これがアルツハイマー型認知症の原因物質ということがわかっています。ですので、質のよい睡眠をしっかりとることが大切なのです」
「また、睡眠の大きな目的のひとつに、脳のクールダウンがあります。寝ている間に体温を下げて深い眠りにつくことで、日中に疲れた脳を休ませているのです。睡眠には、『体の睡眠』と呼ばれるレム睡眠と、『脳の睡眠』と呼ばれるノンレム睡眠があります。体は休んでいるが、脳は活動しているレム睡眠では、まぶたの下で目玉が盛んに動くことから、記憶の整理と再構築が行われていると考えられています」
「夢を見るのもレム睡眠中です。なぜ夢を見るかは、まだよくわかっていませんが、一説には記憶の取捨選択をしているからといわれています。そのため、脳疲労していたり、ストレスが強い環境にいる人は、悪夢を見やすいともいわれています。今回のコロナ禍が起きた最初のころ、死亡率が高かった時期に、コロナ病棟の看護師さんの半分ぐらいの人が悪夢を見ていたといいます」
「一方、脳が休んでいるノンレム睡眠中には、体のほうで新陳代謝が促進され、免疫機能が高まり、細胞のメンテナンスが行われています。脳は眠っているため、このタイミングで起こされてしまうと、眠気が強く、目覚めの悪い状態になってしまいます。すっきり起きたいのなら、眠りの浅いレム睡眠のタイミングに起きるようにしましょう。最近では、レム睡眠のときに起こしてくれる便利なアプリなどもあるので、活用してみては?」
脳の疲れを甘く見て、睡眠不足を続けてしまうと、将来、認知症の可能性が高くなってしまいます。あのとき、ムリをしないでおけば……ということにならないよう、しっかり睡眠をとって脳を休めることを心がけましょう。
取材・文/奥沢ナツ
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