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やっぱり「親知らず」は抜かないとダメ? 歯科医が解説! 親知らずの謎と対処の基本
歯のいちばん奥に生えてくる「親知らず」。抜歯する人も多いですが、そもそもどのような歯なのでしょうか。歯科医師の宮本日出先生に、親知らずの特徴と対処の基本について教えてもらいました。
Contents 目次
親知らずってみんな生えてくるの?
「親知らず」とは、前歯から数えて8番目の永久歯のことで、歯科用語では「智歯(ちし)」や「第三大臼歯」と呼びます。永久歯のなかでは最も遅く、10代後半から20代にかけて生えてきます。上下左右に計4本ありますが、1本だけだったり、4本そろっていたりと個人差があります。なかには、まったく生えない人もいるようです。
あごの骨格が大きかった昔は親知らずがあっても困ることはありませんでしたが、あごの細い人が多い現代では、生えるスペースが十分にないことから、傾いたり、歯茎に埋まったままになったりして、口腔内のトラブルが増えています。
抜く? 抜かない? 歯科医が推奨するのは?
親知らずが生えてきたら、基本、抜くことをおすすめします。最も奥に位置しているため、磨きにくくて虫歯になりやすいためです。さらにほかの歯を圧迫して歯並びを悪くしてしまうリスクもあります。今、異常がなくても、まわりの歯に悪影響を及ぼす可能性がある場合は、抜歯したほうがよいでしょう。
また、親知らず周辺の歯茎が腫れることがありますが、「すぐに治ってしまった」という場合でも放置してはいけません。親知らずが生えてくる途中で歯と歯茎の間に歯周ポケットができて、そこに細菌が侵入すると炎症を起こします。一度炎症すると、細菌の通り道が形成されているので、必ず炎症をくり返します。自覚症状がなくても歯茎のなかで細菌がくすぶって、歯の根っこやまわりに膿がたまる嚢胞(のうほう)や、あごの骨が薄くなる骨髄炎などの病気につながる危険性があるため、早めに抜歯することをおすすめします。
まとめて4本抜いても大丈夫? 抜歯の留意点は?
欧米では全身麻酔を使って4本を1回で抜くこともありますが、日本では稀です。抜歯後は歯茎が腫れて食事がしにくいと感じることがあるため、「まとめて抜きたい」という場合でも、「左の上下2本、右の上下2本」のように分けるのがおすすめです。注意したいのは「上2本、下2本」としないこと。たとえ2本ずつでも、左右の歯を一気に抜いてしまうと、食事ができなくなるなどのリスクがあることを理解しておきましょう。
親知らずの抜歯は、あごの骨から歯を摘出する手術です。通常の歯の抜歯と異なるのは、親知らずの生え方が千差万別だからです。傾いて生えてしまっている場合や、歯の一部分だけが歯茎から見えている場合など、歯の状況によって抜歯する手順が変わってきます。計画的にやればきれいに抜けるというわけではないため、歯科医師の知識・経験と技術が問われる処置でもあるのです。
現在ではCT(コンピュータ断層撮影)を導入している歯科医院が多く、抜歯前に歯と骨の位置関係や病巣の状態などを詳しく確認することができます。事前に歯の状態を分析することが可能となったことで、抜歯後の麻痺やしびれなどの神経トラブルは減少傾向に。より完成度の高い治療が可能な時代となっているので、親知らずに限らず、オーラルケアの悩みを抱えているなら、早めにかかりつけの歯科医師に相談するとよいでしょう。
文/佐藤有香