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気をつけるべきは食事だけじゃない! 腸と全身の健康に口腔ケアが重要なワケは? 腸の専門医が教える、腸活の新常識【後編】
免疫力を上げるためにも取り組みたい腸活。腸活といえば食生活ですが、じつは食事以外にも「口腔ケア」の重要性が注目されています。11月開催のFan!Fun!FYTTE腸活部(オンラインクラス)では、腸のスペシャリストとして活躍する消化器外科専門医の白畑 敦先生に、口腔内環境と腸の関係について教えていただきました。前編に続き、後編はいよいよ口腔内環境と腸の関係に迫ります!
Contents 目次
歯周病菌が病気の一因に
口腔内には300~700種類、数にして1000億~1兆個の細菌が存在しているとされます。口内も腸内ほどではないにしろ、たくさんの種類の菌がいることがわかっています。
「唾液と一緒に口腔内細菌が腸内に入り、よくも悪くも影響を及ぼします。口腔内細菌といってもいろいろあり、有害菌の歯周病菌はそのまま腸内に入り、腸内で悪さをすることもありますし、血行性といって血液に入って悪さをすることもあります。そして、口腔内細菌の悪性の特徴といえるのがバイオフィルムです。細菌自体が抗生物質や免疫といった外的から身を守るためにつくる膜のようなもの。バイオフィルムが形成されると、そのなかの菌に抗生剤が効きにくくなり、難治性の感染症になりやすいという性質があります」と白畑先生。
唾液は1日に1~1.5リットルもあり、歯周病菌を含んだ口腔内細菌と一緒に腸内に侵入した場合、腸内細菌のバランスを崩す可能性もあります。口腔内細菌のバイオフィルムは、歯磨きでは60%しかとり除くことができないともいわれています。
「口腔内細菌は全身へ影響し、病気の一因になることが指摘されています。歯周病原性細菌は、炎症により損傷した歯周ポケット上皮より組織内に侵入し、全身循環を介して遠隔組織に影響することがわかっています。新潟大学の研究では、非アルコール性脂肪肝の患者さんの口腔内には独特な口腔内細菌があることがわかっており、これらの細菌を除去することで病気が防げるのではないかと期待されています」
口腔内細菌によって腸内フローラ(腸内細菌叢)も変化し、動脈硬化症、糖尿病、関節リウマチ、非アルコール性脂肪肝疾患、肥満などの疾患のリスクファクターになる可能性も明らかになっています。
「国民皆歯科健診の導入が国会でも議論されていますが、口腔ケアは直接的な嚥下などの機能性維持のための歯周病・虫歯予防のほかに、このような口腔内細菌がさまざまな病気のもとになりうるというのが、現在のコンセンサスになっており、それが取り組みのもうひとつの動機になっています」
白畑先生がおすすめする口腔ケアは?
お口のケアは、歯磨き+フロス+マウスウォッシュといった自宅でのセルフケアと、クリニックなどでの定期的なプロケアのどちらも行うことが重要になってきます。
「歯医者さんではないので細かくはできませんが、私のクリニックでは口腔ケアもおすすめしています。いろいろあるホームケアアイテムのなかでも私が推奨しているのが薬用のマウスウォッシュ。簡単に使えるので、とり入れやすいと思います。私自身も朝起きたらマウスウォッシュ後に歯磨きをし、寝る前にもマウスウォッシュを習慣にしています」と白畑先生。
そこで、今回、FYTTE編集部が口腔ケアに役立つ身近なアイテムをピックアップ! 腸活の一環としてもぜひ、参考にしてみてください。
■薬用 リステリン(Kenvue)
口臭、歯垢の沈着、歯肉炎を予防する医薬部外品のマウスウォッシュ。白畑先生も愛用しているそう。4つの薬用成分を含むリステリン独自処方がバイオフィルムのなかまで浸透して殺菌。口内を清潔に保ちます。刺激の強い上級者向けから、初めての人にも使いやすい低刺激のものまであり、歯周病予防に特化したタイプなど全9種類。
リステリン トータルケア プラス 1000ml オープン価格
■ソニッケアー 9900 プレステージ(フィリップス)
歯垢、ステイン、歯茎ケアまでアプローチできる電動歯ブラシ。毎分約31,000ストロークの高速振動で歯垢をたたき浮かせ、幅広い振幅で歯垢をはらい落とすほか、同時に口のなかの唾液の流れ「音波水流」を発生させ、口のすみずみまで歯垢をやさしく、効果的に除去。手磨きのときの約20倍の歯垢を取り除くことが可能(※フィリップス調べ)。
ソニッケアー 9900 プレステージ ¥オープン価格
■カムテクト プレミアム歯ぐきケア(GSK)
歯周病予防歯磨き粉。歯周病の最大の原因である歯垢を徹底除去するために、成分の約70%に重曹(炭酸水素ナトリウム)を配合。独自の重曹処方が歯面の根元の頑固な歯垢をやわらかくして除去します。歯周病菌を殺菌する成分や炎症を抑える成分のほか、重曹が歯垢を除去し、ビタミンEが血行を促進することで歯ぐきに栄養を届け、歯周病を予防します。
カムテクト プレミアム歯ぐきケア 105g オープン価格
「腸活」の習慣化に向けて、心がけたいこと
前回の記事(前編)では、免疫力と腸の関係についてお伝えしましたが、腸内環境をよくすることにより、さまざまなメリットがあるのが研究でも明らかになってきています。
そのうえで、白畑先生は「学会でもまだまだ未知の領域である腸活。腸活をうたう高価な商品や治療もありますが、過剰な期待は避けるべき。できるだけ簡単で安価な方法で試してみるのがおすすめです」と提案します。
「腸内環境をよりよくしようというよりも、本来、自分がもっている腸内細菌を維持して守ろうというモチベーションでいるくらいがちょうどよいのではと考えています。人間というのは生体恒常性(ホメオスタシス)があり、体調などの状況に応じて何もしなくても自律神経やホルモンが体を一定に整えてくれます。ですから、腸内環境や腸内細菌も無理に変えるのではなく、なるべく自分の本来の腸内細菌を最大限に活かすようにすると腸活がうまくいくのではないでしょうか。日常的には腸に役立つ善玉菌とそのエサとなる食材を一緒にとることを心がけるほか、バランスのよい食事、ストレスのない生活、睡眠をきちんととるといった基本的なことが大切です。また、マウスウォッシュなどのホームケアアイテムでお口のなかを清潔に保つことも、腸内環境を悪くしないためのケアのひとつ。自分に合ったやり方を見つけていきましょう」とアドバイスしてくださいました。
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健康メリットが大きい腸活。またお口と腸内は離れていても、密接に関わっていることもわかりました。食事や睡眠など基本的な生活を整えるのはもちろん、口腔内の状態がよくない人は、腸や全身の健康のためにも、そのままにせず早めに治療したほうがよさそうですね。
文/庄司真紀