CATEGORY : ヘルスケア |メンタル
「ぼーっとしてしまう」「1日のタスクがこなせない」 ドクターが解説、現代人の集中力低下の原因と対策
気がつくとぼーっとしている、作業にとりかかるまで時間がかかる、といった集中力低下のサイン、出ていませんか? 集中力は自律神経とも関連しており、ストレスやスマホ、睡眠不足なども集中力が落ちる原因です。今回は、順天堂大学医学部教授・小林弘幸先生の『自律神経の名医が教える集中力スイッチ』から、現代生活と集中力の関係について見ていきましょう。
Contents 目次
2つの「集中力」
作業がはかどったり、予想以上の成果を出したりしたとき、“集中できている”と感じますよね。逆にふだんしないようなミスをしたり、やる気が出なかったり、つい別のことを考えてしまうときは、“集中できていない”状態ということができます。
この集中力は2つに分けられます。
「アスリートや演奏家が限られた時間内でパフォーマンスを上げるための集中力を『短期集中力』とするのに対し、私たちが仕事や勉強で必要とするゆるやかに長く途切れない集中力は『持続集中力』と名づけられます」(小林先生)
日々の仕事をこなすために、『短期集中力』を必要とすることはほとんどありません。必要とするのは1日のタスクを無事終わらせるための安定した集中力。
この『持続集中力』は自身が安定した状態でいることで、適度に休みを挟みながら8時間という仕事時間を充実したものにすることができます。
現代的生活が集中力低下を招く
スマホが集中力を低下させるという指摘はよく聞きますが、カナダのマイクロソフト社によると、現代人の集中力は8秒しか続かず金魚の9秒を下回る、というような衝撃的なデータも。
「情報型社会が到来し、現代人の意識があらゆることに向けられ集中しづらくなったということは間違いないでしょう。関心事が多くなり、常に情報のアンテナを張っている状況に身をおくことで、心身ともにリラックスできる時間は誰もが以前より少なくなっているはずです」
集中力と大きく関わるのが自律神経です。情報型社会のストレスが自律神経を乱し、集中力を低下させてしまうのです。
「自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、一方が優位になり過ぎると集中力に悪影響を与える感情を生み出してしまうため、交感神経と副交感神経のバランスをとることがとても大切なのです。両方が高いレベルでバランスがとれれば、それだけ集中力も高くなり、ハイパフォーマンスを発揮することができます」
つまり集中できない理由は性格やスキルの問題でなく、“自律神経が乱れやすい環境のせい”ともいえます。生活習慣や意識を変えることで、持続的な集中力を手に入れることができるのです。
集中力のゴールデンタイムを知る
人間にはそもそも集中力が高まりやすい時間があります。それはやはり午前中です。
「一般的に9時から10時ぐらいに出社する人が多いかと思いますが、それから昼食までの時間がゴールデンタイムで、創造的な仕事をするのに向いています。ゴールデンタイムが訪れてから“さぁ何をしようか”と考えたりするのではなく、あらかじめすべきことを決めておきましょう」
また午前中はずっと集中力をキープできるかといったらそうでもありません。同じ作業を行う際の限界は90分程度。“長時間ぶっ続け”ではなく60〜90分に1回休憩を挟み、集中のピークを2〜3回作ると効果的です。
ちなみに集中力には個人差がありますが、子どもの場合は15分ほどで集中力が途切れる傾向にあり、総じて子どもより大人のほうが、集中力が高いといえます。またハーバード大学などの研究によると、集中力は年を重ねるごとに高まっていき、43歳前後でピークを迎えるということがわかっています。
集中力は気分の問題ではなく、ライフスタイルからも大きな影響を受けていそうです。次回以降、集中力を高めるための具体的なステップをご紹介いきます。
文/庄司真紀
参考書籍/
『自律神経の名医が教える集中力スイッチ』(アスコム)
著者/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。1960年埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手などのパフォーマンス向上指導に関わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した”腸のスペシャリスト”でもある。『医者が考案した「長生きみそ汁」』、『最高の体調を引き出す 超肺活』(アスコム刊)などのほか、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)などメディア出演も多数。