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「フェムテック」世代や立場を超えてみんなでアクション。自分らしく生きるために、女性の体や社会課題を知って行動することが重要【前編】

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日本フェムテック協会ランチウェビナーのバナー

一般社団法人日本フェムテック協会(以下、日本フェムテック協会)が2023年2月14日から「ランチタイムウェビナー」をスタート。それに先立ち、オンラインで1月31日に特別プログラム「actcoin(アクトコイン)×日本フェムテック協会 トークセッション」が開催されました。
テーマは「フェムテックとソーシャルアクションで未来を創ろう!」。日本フェムテック協会理事の山田奈央子さんを進行役に、同協会理事で女性泌尿器科医の関口由紀さん、同協会顧問でソーシャルアクションカンパニー株式会社取締役の石川淳哉さん、ソーシャルアクションカンパニー株式会社actcoin運営チームの堀井祥子さんが登壇しました。その様子を2回に分けてレポート。前編の今回は、登壇者それぞれの活動について紹介します。

監修 : FYTTE 編集部

ダイエット専門誌として1989年に雑誌創刊し、2016年よりWEBメディアに。ダイエットはもちろんのこと、ヘルスケア、ビューティなど体の内側からも外側からも美しくかつ健康でいるための体づくりのノウハウを、専門家への取材とともに紹介。“もっと、ずっと、ヘルシーな私”のキャッチフレーズとともに、編集部員も自らさまざまなヘルシーネタを日々お試し中!

Contents 目次

さまざまな角度からフェムテックに関わるプロフェッショナル

日本フェムテック協会ランチウェビナーの登壇者4名

山田:日本フェムテック協会は、2021年7月に設立されました。私と、このあとご紹介する関口由紀先生で理事を務めています。設立の目的は、日本女性のヘルスリテラシー(健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力)の低さを問題視し、女性特有の健康課題に寄り添い、女性がハッピーに毎日を過ごせるヒントを得られるようなヘルスリテラシーを上げること。そのための啓発活動を一般女性や企業向けに行っています。

関口:女性医療専門クリニックで、婦人科、乳腺科、女性泌尿器科、女性内科、美容皮膚科を開設しています。クリニックを受診する患者さんにだけでは健康情報の発信に限界があると感じ、山田さんと日本フェムテック協会を作りました。日本の女性の、とくにフェムゾーンを中心とした健康問題に取り組んでいます。健康問題を解決することで日本の女性がみんなハッピーになって、社会も世界もハッピーになるというような情報をどんどん発信していきたいと思っています。

石川:日本フェムテック協会の顧問で、ソーシャル・グッド(社会貢献活動を支援・促進するサービス)プロデューサーの石川です。社会課題の解決のために、全国のいろいろなところでプロジェクトを起こすお手伝いをしています。

堀井:今回、日本フェムテック協会とのコラボトークセッションということで参加させていただくactcoinの堀井です。actcoinは、一人ひとりの社会貢献活動を“見える化”して、さらに新しい価値にしていくことをめざすプラットフォームサービスです。社会課題についての学びや、課題解決に向けたソーシャルアクションなどに対して独自のコインを付与しています。

アクトコインを紹介しているページと堀井さんと山田さん

上の図のように、今日のようなイベントへの参加のほか、寄付、社会に配慮した生活習慣、ソーシャル・グッドな情報の発信などのアクションに対してコインが付与され、自分のアクションが可視化できます。また、ほかのユーザーがどんなアクションをしているのかというところも見ることができるというものです。

山田:こうして学ぶこともソーシャルアクションにつながるんですよね。「まずはこういう簡単なことでいいんだ」ということに、今回、私も気づかせてもらいました。続いて、4人のそれぞれの分野での活動について紹介していきたいと思います。

日本フェムテック協会が考える7つの女性の健康課題

フェムテックの画面

山田:フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(技術)の造語で、女性特有の健康問題やライフステージの課題を、技術で解決するアイテムやサービスのことを指しています。女性の社会進出が当たり前の今、フェムテックはもはや女性だけの問題ではなく、社会全体の利益につながるものです。フェムテックの領域は、「月経」「妊娠・不妊」「産後ケア」「更年期」「ポスト更年期」「婦人科系疾患」「セクシャル系ウェルネス」の7つ。私たちは、人生100年時代においては更年期後の「ポスト更年期」も大切であると考えています。

女性のライフステージの画面

女性のライフステージと健康課題は上の図のように移り変わります。思春期・成熟期は「月経」、生殖期は「妊娠・不妊」「産後ケア」の問題が発生する人もいます。「更年期」は必ず訪れるものなので、課題を前もって把握することで、より健康で、長く楽しい人生を過ごすことにつながると考えられます。

「婦人科系疾患」「セクシャルウェルネス」はリテラシーとして知っておきたい分野です。時期ごとに健康課題が違うのは女性特有で、それぞれの時期に何が課題となるかを知ることはとても大切です。また、自分のことだけでなく、家族、パートナー、同僚に何が起きているかを把握することもとても大切で、それが相互理解の第一歩になると考えています。

医師が解説。「ライフステージにおける女性の心と体の変化」

関口さんと性ホルモンの代謝の画面

関口:女性も男性も、男性ホルモンと女性ホルモンを持っていて、そのバランスの違いが性差になります。女性ホルモンの分泌を司る脳の視床下部は卵巣からのフィードバックを受けるため、思春期や更年期など卵巣機能が不安定な時期は、視床下部の機能失調が起きやすく、自律神経失調症状やメンタルの問題が起こりやすくなります。

それに対して男性ホルモンは、生きる意欲と行動性、行動するための精神的な積極性、筋肉量の増大、性的意欲などを司っています。女性の女性ホルモンは、妊娠可能な時期が100としたら、閉経すると10くらいになります。一方、男性ホルモンは400くらいだったものが300くらいになります。閉経によって男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが大きく変わるのです。

このように、女性は時期によって性ホルモンの内部環境が変わるので、さまざまな病気が起こりやすくなります。まず思春期、16~25歳のころは、まだメンタルが不安定で、自律神経も未熟です。性成熟期になると落ち着くのですが、このときホルモンは周期的に上下するので、ちょっとしたストレスや過労で女性ホルモンが狂い、生理周期が乱れたりします。45~55歳になると卵巣機能が衰えてくるので、また別の病気になりやすくなります。55歳以上になると、女性ホルモンが低く安定するのでメンタルは落ち着いてくるのですがほかの病気が出てきます。

女性の健康問題の特徴をあげると、女性ホルモンが出ている時期は、甲状腺疾患やリウマチなどの自己免疫疾患が多く、更年期からは高血圧、脂質異常症、頻尿・尿失禁、動脈硬化、認知症、骨粗鬆症などが増えてきます。また、女性ホルモンは月によって変動するため、イライラしたり落ち込んだりします。自分が悪いわけではなく、女性であれば誰でもイライラしたり落ち込んだりするんです。だからといって、メンタルが不調なときに他人に当たったり、過食したりするのは自分にとって損です。自分の中に第三者の自分をつくっておいて、適当なところでやめることを習慣づけていくことが、楽しく生活するポイントになると思います。ただ、努力してもなかなか自分でコントロールできないこともあります。そういうときは女性ホルモンを使うといいですね。性成熟期は低用量ピル、更年期はホルモン補充療法などもあります。

閉経後3年から「ポスト更年期」が始まり、尿もれ、認知症、骨盤臓器脱、ロコモコティブシンドローム、フレイル、骨粗鬆症といった問題が出てきます。このあたりの課題解決はまだまだ遅れていますが、しっかり解決することで寿命が延びるだけでなく、長く元気に過ごすことができます。今後、これらの問題解決への必要性が高まってくると思いますし、その際にフェムテックが不可欠だと思っています。

フェムテックもソーシャルアクションもウェルビーイングのため

登壇者4名

石川:僕は、フェムテックからソーシャルアクションをスタートしたほうがいいんじゃないかという話をしたいと思います。なぜかというと、男性の僕は60年間、女性の体やホルモンバランスをまったくわかっていなかったのですが、妻の更年期障害がわりと激しかったので、機嫌の悪さが家庭内紛争を引き起こすことがあるのだと実感したからです。

ただ、女性自身が女性のホルモンバランスのことをわかっているかというと、妻も人生初めての更年期障害に対してどう対処したらいいのかわかっていませんでした。また、女性でも生理や更年期障害が軽い人は、症状の重い人の気持ちを理解できないということも感じました。会社の上司や身近な家族もわかっていないし、そもそもこういう話はタブー。そんな現状だからこそ、女性の健康課題をみんなが理解するようになれば、家庭が健全になり、職場が健全になり、地域が健全になるんじゃないかと思うのです。

日本は、経済が急発展して人口が圧倒的に増え、そこから横ばいになり衰退に向かうなか、社会課題先進国といわれています。少子高齢化、災害関連死、女性の働き方、貧困問題などさまざまな社会問題がありますが、それらを考えるとき、女性が大きく関係すると思うんです。だから、それを解決するとき、どこからスタートするのかと考えると、みんなでフェムテックをもっと勉強することが重要。そして、アクションを起こし、バランスをとって組み直すという作業が必要になると考えています。まずは家庭から。ずっと一緒にいるパートナーとの相互理解からスタートできるといいなと思っています。

堀井さんがフェムテックについて解説している画面

堀井:石川さんから「ソーシャルアクションはフェムテックから」という話がありましたが、フェムテックとソーシャルアクションには関係性があります。フェムテックは女性の健康課題をテクノロジーで支えるということで、生理や妊娠を助ける管理アプリやアフターピルなどのテクノロジーが注目されています。でも、日本では低用量ピルの認可も遅く、世界に遅れているというのが現状です。ソーシャルアクションは「よりよい社会に向けてアクションを起こす」ということで、フェミニズム運動というのは19世紀終わりごろから始まっていて、アメリカのウーマンリブ運動をはじめ、最近だとセクハラや性的暴行を受けた人たちが連帯して声を上げ#MeToo運動が起きたりしました。じつは長く行われてきたものなのに、まだまだ課題があって、変わっていないというのが現状といえます。

そもそもソーシャルアクションもフェムテックも、ウェルビーイング(個人や社会のよい状態)のためのものです。性自認や子どもを産む・産まないといった自分の体のことを自分で決められる権利も含めて、心身の健康を大事にしていこうというのが社会の流れになっているのではないかと思います。

そこで私たちactcoinに何ができるのかというところですが、フェムテックとactcoinだけでは足りなくて、一人ひとりのアクションが必要だと考えています。テクノロジーが進化しても、フェムテックの市場が拡大しても、それだけでは社会は変わりません。家庭や学校や職場の理解、法整備など、環境を作るためのソーシャルアクションが必要です。女性の体や社会課題を知って行動することが、自分らしく生きられる社会の実現につながるのではないかと思います。今は、専門家や特定の立場の人が先導するのではなく、世代や立場を超えてみんなで声をあげていく時代です。若い世代も巻き込みながら、職場や家庭を変えていくようなアクションをたくさん起こしていきたいと思っています。

山田:堀井さんの「一人ひとりが課題を知って、アクションを起こしていくことが大事」という話は石川さんもよくされているのでそれも含めて、後半は4人でセッションをしていきたいと思います。

 

【登壇者】
山田奈央子 日本フェムテック協会代表理事、シルキースタイル代表取締役。

関口由紀 日本フェムテック協会代表理事、女性医療クリニックLUNAグループ理事長、女性泌尿器科医師。

石川淳哉 日本フェムテック協会顧問、ソーシャル・グッド・プロデューサー、一般財団法人ソーシャルアクション財団代表理事。

堀井祥子 ソーシャルアクションカンパニー株式会社actcoin運営チーム。フリーペインター、写真家、エシカルファッションの販売を経て、2019年からactcoin運営スタッフ。

【クレジット/協力】
一般社団法人 日本フェムテック協会 スペシャルコンテンツ
https://j-femtech.com/special_contents/

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>>>https://j-femtech.com/femcare-l/certificate/l3/FYTTE

 

文/小高 希久恵

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