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医師が解説! 「女性のライフステージと健康問題」どんなことが起こるのか? ピルについての疑問にも回答
一般社団法人日本フェムテック協会(以下、日本フェムテック協会)が、フェムテックやフェムテラシーをテーマにした「ランチタイムウェビナー」を毎週火曜12:00~12:30に定例開催中。今回は、そのアーカイブの中から「第1回 はじめてのフェムテック!~自分の体を知り、向き合うために~」をピックアップ。日本フェムテック協会代表理事の山田奈央子さんを進行役に、同協会代表理事で女性泌尿器科医の関口由紀さんが行ったオンラインセミナーの内容をお届けします。
Contents 目次
「女性のライフステージと健康問題」について医師が解説!
山田:今日は、女性のライフステージにおいてどんな健康問題が起こるのかということについて、関口先生にプチセミナーをお願いしたいと思います。
関口:今後もいろいろ説明していきたいと思っていますが、基礎ということでお話しします。女性は生まれてから死ぬまでのあいだ、女性ホルモンの量が大きく変化していきます。16~20歳くらいまでの思春期は、女性ホルモンがアップダウンしながら上がっていく時期で、月経異常、性感染症などが起こります。性成熟期は、女性ホルモンは規則正しくアップダウンするのですが、月経トラブル、子宮の病気などが起こります。閉経前後5年の更年期は、女性ホルモンがアップダウンしながら下がっていく時期で、イライラやホットフラッシュなどが起こることが多い期間です。閉経して3年くらいすると、陰部がかゆい、尿がもれる、セックスするときに痛いといったフェムゾーンのトラブルが起きるほか、動脈硬化が進んだり、骨粗鬆症や認知症になったりします。
性ホルモンには男性ホルモンと女性ホルモンがあり、どちらもコレステロールからできます。女性ホルモンは、皮ふや皮下組織、脳、血管、骨などを守り、心と体を維持する「エストラジオール(エストロゲンの一種)」と、妊娠したとき妊娠を継続するように働く「プロゲステロン」があります。この2つの女性ホルモンがきちんと分泌されるように指令を出すのが脳の視床下部です。この脳の視床下部は卵巣からのフィードバックを受けるので、思春期と更年期に不安定になりやすいんです。そのせいで、この時期はイライラしたり、落ち込んだりするのですが、これはホルモンの変動によるもので、自分が悪いわけではないんです。仕方のないことなのですが、感情失禁(感情をじょうずにコントロールできない状態)や過食といったことが起きたとき、その状態が長く続くのは自分にとって損だと思うんです。なので、自分を客観視して、適当なところで折り合いをつける習慣をつけることが大切です。
女性の健康問題は男性とは違います。女性ホルモンが影響する疾患に加え、甲状腺の病気や関節リウマチなど免疫の病気が多いんです。また、くり返しになりますが、更年期以降は血管の病気、フェムゾーンの病気、認知症、骨粗鬆症などが多いんですね。あとは、ホルモンがつねに上下するので、男性よりも視床下部の調子が悪くなることが多く、うつになる傾向がやや高めといえます。
そういった健康問題に対抗するために、最近は、女性ホルモンや男性ホルモンの補充も気軽に行おうという流れになってきています。
40歳までは低用量ピルなどを使ったり、40歳以降は女性ホルモンを補充したり。50歳を過ぎたらフェムゾーンのエストロゲンと全身のテストロン補充がいいかなと思います。
女性のライフステージにとって、妊娠・不妊、産後ケア、閉経などの婦人科系、セクシャルウェルネスはとても重要なので、そういったことに関わる製品がたくさんあります。さらに、女性のQOLを上げるための考え方や製品がどんどん生み出されています。閉経後3年からのポスト更年期に関してはまだまだ遅れているのですが、このあたりもフェムテックな考え方がどんどん入って、いい製品や考え方、サービスができてくるといいのかなと思っています。
視聴者のコメントにライブで返答
「ピルを飲み続けるメリット、デメリットは?」
山田:ピルの話がありましたが、視聴者から「ピルを飲み続けるメリット、デメリットを教えてください」という質問がありました。
関口:圧倒的なメリットは、ホルモンをちょうどいいバランスにするということです。女性ホルモンも男性ホルモンも、多くても少なくてもよくないんです。今の女の人たちは女性ホルモンが多すぎる人が多いので、それによって起こるトラブルを抑えるということですね。
圧倒的なデメリットは、血栓症になりやすいということです。だから、ピルを飲んでいるときは脱水にならないように水をしっかり飲むなど、予防が大切です。あとは、片脚が痛くなったりすることもありますね。よく「血圧が高いとピルは飲めないんですか?」と聞かれるのですが、高血圧は治療していれば大丈夫です。もっともダメなのは喫煙。タバコを吸っていると血栓症になりやすいからです。
結局、薬というのはメリットとデメリットがあるのですが、メリットのほうが今は圧倒的に多いんです。だから、血栓症にならないように気をつける、乳がんや子宮がんの定期検診を受けるなど、自分でホルモンをコントロールしているという認識を持って、自分の体は自分で守るという意識を持つことが大切ですね。
「『妊娠できなくなる』という理由で母親にピルを飲むのを反対されました」
山田:「母親が『ピルを飲むと妊娠できなくなる』というイメージを強く持っていたので、私がピルを飲むとき丸1日くらいかけて説得しました。理解してもらうのはなかなか大変でした」というコメントがありますね。
関口:これはまったくの迷信です。ピルを1か月やめると、卵巣機能が正常であればすぐに妊娠します。逆にいえば、正常な卵巣機能の人は、ピルをやめると1か月後には妊娠のリスクがあるということですね。
「女性ホルモンが多すぎると、どんなトラブルが起こりますか?」
関口:子宮内膜症、子宮筋腫など、今の婦人科疾患のほとんどです。仮説の域を出ませんが、昔と比べて今は出産の回数が少ないので、生理の回数が増えたことが原因とされていますね。排卵というのは、卵巣から卵が皮を破ってポンと出てきて、そのたびに卵巣の皮が修復されます。傷つけては出て、傷つけては出てというのを何度もくり返すので、その間に不調をきたす人が一定数出てきてしまうということなんです。
たとえば、古代日本の女性たちは子どもを5~6人産んで、そのあと3~4年で死ぬという一生だったのに、時代が変わって、今は子どもの数もぐっと少なく、閉経後も30~40年生きるのでトラブルが起きやすくなっているということですよね。
山田:ピルの話は、まだまだみなさん聞きたいことがありそうですよね。男性も『女性に対してどうしたらいいんだろう』など迷っていることもたくさんあると思うので、ピル話はまた第2弾を企画したいと思います。
このランチタイムウェビナーは毎週火曜のランチタイムに開催されています。30分間ですがフェムテックやフェムテラシーのヒントになる内容が満載なので要チェック! FYTTEでのレポートも続けていきますのでお楽しみに。
【登壇者】
山田奈央子 日本フェムテック協会代表理事、シルキースタイル代表取締役。
関口由紀 日本フェムテック協会代表理事、女性医療クリニックLUNAグループ理事長、女性泌尿器科医師。
【クレジット/協力】
一般社団法人 日本フェムテック協会 スペシャルコンテンツ
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文/小高 希久恵