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腸の音というビックデータをどう活用? AIの進歩によって、ユーザーの生活、健康意識、未来が変わる! ~開発者インタビュー(後編)~
腸の健康状態を確認できる世界初のアプリ「腸note」。前編に続き、開発者の金川さんへお話を伺いました。後編では、腸の音というビッグデータをどのように活用していくのか、AI技術の進歩がもたらした研究現場への思わぬ変化、今後の可能性などについて語っていただきます!
Contents 目次
研究員でありながら大道芸人!? ユーザーに楽しく体験しながら健康になってほしい
前編はこちら。サントリーグローバルイノベーションセンターの主任研究員で、腸活アプリ「腸note」を開発した金川典正さん。ゴリゴリの理系かと思いきや、特技は大道芸。中学時代から熱心に取り組むようになり、大学も大道芸サークルがあるところをわざわざ選んだほど。「人に楽しんでもらうという点では、大道芸も研究開発も同じです」と話します。
「大道芸はまず人を集めるところから始まり、集まった人たちに喜んでもらって、その人たちがまた人を呼んで、最終的には全員で満足してもらうことが目標です。お客様が喜んでくれることを追求していくという点では、研究開発も通じるところがあります」
ストリートを舞台に通りがかりの人たちに芸を披露するというチャレンジ精神は、「サントリーの“やってみなはれ精神”に重なる」とも。「飲料メーカーでアプリが作れたのも、グループ全体にそうしたカルチャーが醸成されているからだと思います。“やってみなはれ”は創業者の言葉ですが、いつも頭の中にあり、チャレンジを後押ししてくれます」と金川さんは話します。
AIの進歩で研究員がユーザーと密接につながれる
「腸note」は2023年2月のリリースから順調にダウンロード数を伸ばしている(待望のandroid版も2024年6月にリリースされた)。アプリストアのコメントやユーザーからのフィードバックに耳を傾けると、金川さんが考えていた以上にいろいろな使い方をしていることもわかってきたそうです。
「例えば、お腹が不調だったり、お腹が鳴っているけど大丈夫かな? と不安を感じたりするときに測ってみるという方も多いです。それで測定結果がよければ安心できますよね。一方、便秘がちで朝はなかなか便が出ないけど、音を測ってみるとちゃんと腸が動いているかどうかがわかるので、その日は安心して1日を過ごせるという方も。また、腸の動きが鈍いと判定された日は、腸をしっかり動かすようなものを食べようとアクションにつなげている方もいます。私は研究員なので、やはり実験が好きなのですが、食べた後に測ってみたら音がどう変わるか、腸活の行動をした次の日がどういうスコアになるか、自分の体で試してみるのも面白いかもしれませんね」
「腸note」を開発後、インタビューや座談会などを通じて、ユーザーと直接話す機会が多くなったという金川さん。「バリューチェーンにおいて研究員は川上に位置しており、一般的にはユーザーさんからは一番遠い存在ですが、AI技術の進歩によって研究員とユーザーさんとが密接につながるというエポックメーキング的なことが起こっています。研究開発の手応えを直に実感しています」と話します。
「腸note」のビッグデータの可能性は無限! 今後はフィットネスクラブやレストランなどとのコラボにも期待!
これまでに企業とさまざまなコラボも実施。デベロッパーと組み、ニュータウン在住者のヘルスケアプログラムで「腸note」を使ってもらい、腸活のアドバイスを通して健康へのアクションをサポートしたりもしているそうです。
「今後の可能性としては、フィットネスクラブやトレーニング施設において『腸note』で腸の状態をモニタリングしてもらい、適切なトレーニングや栄養管理のアドバイスを提供したり、食品メーカーやレストランチェーンにおいては、『腸note』の結果に適した食事メニューや健康食品の開発・提案などが考えられます。また、特定の腸の健康状態に関連する病気や症状の早期発見や予測を行うための新たな腸音のエビデンスの共同研究なども考えていきたいです」
腸の音に関するビッグデータは世界初。「その活用で、その先にユーザーさんの行動変容があり、自社の機能性飲料やサプリメントが寄り添えればいいなと思っていますが、わかってきたことをまずはアプリに実装していきたいです」と金川さん。
「例えば、『腸note』で音を測ると『1時間後に下痢をするかも』といったことがわかる機能も開発できればいいなと思います。そうすれば事前に下痢止めを飲んでおこうとか、安心にもつながります。また、ストレスと腸の動きは密接に関係していたり、腸内環境が肌の状態に影響すると言われていたりもします。女性の場合、生理周期と連動して便秘や下痢になりやすいなど腸の不調を感じる人も少なくありません。集まったビッグデータの分析・研究を深め、女性特有の悩みに寄り添うようなサービス、腸から全身の健康につなげられるようなサービスを提供していきたいです。ユーザーさんにとっても自分の腸の音が役に立ってアプリに反映されるのは、新しい体験だと思いますが、一緒に研究していくという気持ちで研究・開発を進めていければいいですね」
「腸note」のビッグデータから、どのような新しいサービスが展開されるのか…今後が楽しみです!
撮影/鈴木謙介
取材・文/海老根祐子