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昔と違う! 医師解説。20〜30代なのに老眼!? 現代人に急増している目の不調とは?[第2回]
私たちの生活に欠かせないデジタルデバイス。仕事はパソコン、学習はタブレット、息抜きに見るのはスマートフォンという人も多いのではないでしょうか。20年前と比べても生活が様変わりしたといっても過言ではありません。とくにスマホが普及し、SNSの利用が増えたことで、急増している目の不調があるといいます。ひとつは「ドライアイ」です。そしてもうひとつは……? YouTubeで目の病気について発信する、メディアでもおなじみの眼科専門医、二本松眼科病院副院長の平松類先生が解説します。
Contents 目次
手もとを見る時間が長くなることで「スマホ○○」が急増
パソコンやスマートフォンとなどデジタルデバイスが日常生活に不可欠となり、近年は、「目に求められる能力が高くなっている」と、眼科医の平松類先生はいいます。
それはいったいどういうことなのでしょうか。
「そもそも人間の目は、遠くを見るように設計されています。狩猟や採集で暮らしていた時代は、遠くの獲物を見つけたり、高いところになる木の実を見つけたりすることが大切でした。一般の人が本を読んだりするようになったのも近世以降です。もともと目は近距離を長時間見るようには設計されていないのに、パソコンのモニターを凝視したり、スマホやタブレットで手もとを見る時間がぐっと長くなったため、それだけ近距離がはっきり見えるだけの高い視力が必要とされるようになっているのです」
そこで、急増しているというのが「スマホ老眼」です。
「老眼とは加齢によって、手もとのピント調節がうまくいかなくなり、小さな字が見えにくくなったりすることです。それが、スマホの使いすぎによって、年齢に関係なく同じような現象が起こるのが“スマホ老眼”です。20代、30代に増えています」
スマホ老眼について、もう少し詳しくみていきましょう。
目のピント調節は、「毛様体筋」という筋肉がレンズにあたる水晶体を厚くしたり、薄くしたりして行っています。遠くを見るときは、毛様体筋は弛緩して水晶体を薄くしてピントを合わせ、近くを見るときは、毛様体筋はぎゅっと縮まって水晶体を厚くしてピントを合わせます。
「スマホを見るときのように、より近くにピントを合わせる状態が長く続くと、毛様体筋は緊張状態が続くことで麻痺した状態になり、うまくピント調節ができなくなってしまうのです」
最近、スマホを見ていると目がかすむ、ピントがぼやけるといったことがあれば、スマホ老眼かもしれません。
見る対象が近くにあればあるほど目は疲れる
スマホ老眼は、いわばピント調節機能の使い過ぎによる、“目の疲れ”だといいます。
「遠くを見るほうが目を使っている気がするかもしれませんが、実際は逆で、近い距離を見るのほうが目には負担で、距離が近くなればなるほどエネルギーを要します。例えば、目との距離は、パソコンは50センチ、本は30センチ、スマホは20センチほど。距離が近く、使用時間も長くなりがちなスマホは最も目を酷使するツールです。パソコンは50センチだから、本を読むよりマシなのでは? と思うかもしれませんが、1日のうちで本を読むよりパソコンを使う時間のほうが長ければ、目には大きな負担となります」
スマホ老眼になると、手もとが見にくくなるため、ピントを合わせようとして、ますます目はがんばり、いっそう疲れやすくなって、眼精疲労を招くこともあるそうです。
「疲れ目と眼精疲労は同じものだと捉えがちですが異なります。眼精疲労は、疲れ目が昂じて症状が全身に出る状態をいいます。最初は疲れ目によって夕方になると見えづらい、週末に見えづらいといった状態から始まりますが、そこで適切なケアをしないと眼精疲労へと移行し、頭痛、肩こりなどの症状が現れます。眼精疲労はいわば脳の疲れで、視覚からの情報を処理する能力がオーバーヒートした状態です。ひどくなると、吐き気や集中力の低下といった症状も出てきます。スマホの見過ぎによる目の疲れなら、1日スマホを見るのをやめれば回復します。しかし、3~4日休んでも目の疲れや頭痛、肩こりなどの全身症状がとれない場合は、眼精疲労が疑われます。そうなる前に、目の疲れに対してケアすることが大切です」
スマホ老眼や眼精疲労につながる目の使い過ぎによる「目の疲れ」への対処法は、次回に続きます。
取材・文/海老根 祐子