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意識ひとつで日常の立ち・座り姿勢がラクになる! ~みるみる体が整う「アレクサンダー・テクニーク」とは?【前編】〜
オピニオンリーダーとFYTTE編集部員で、今年のヘルスケア分野のトレンドを予測する「FYTTEヘルスケアトレンド2024」。この中のテーマのひとつ「シン・コンディショニング」は、体の土台を整えることで状態をよくし、しなやかに動ける体を目指そうというものです。さまざまなコンディショニング法やトレーニング法を追うなかで、今回は、体の構造にかなった身体法「アレクサンダー・テクニーク」をご紹介。講師の木野村朱美さんに、日常で実践できるメソッドや理論を教えてもらいました!
Contents 目次
脳の“勘違い”を正すだけで、体がラクになる! アレクサンダー・テクニークとは?
耳慣れない人も多いかもしれませんが、「アレクサンダー・テクニーク」(以下アレクサンダー)は、無意識の体のクセや緊張をリセットし、体本来の自然でラクな姿勢や動作を取り戻すための技法。1890年代、オーストラリアの俳優、フレデリック・M・アレクサンダーが舞台で声が出なくなったことをきっかけに、自分のクセを発見するなかで理論を確立しました。
「ふだん人は、とくに意識もせずに立ったり座ったり、腕や脚を動かしたりしていますが、実は人それぞれにクセがあるもの。そのクセのせいで、骨や筋肉によけいな力が入ってしまって、腰や肩の痛み、猫背、頭痛、冷え性といった体の不調を引き起こし、調子の悪さからメンタル不調にまでつながってしまうこともあります」(木野村さん)
木野村さんによると、無意識な体のクセとは脳の思い込み、つまり「勘違い」から生まれるとのこと。私たちは成長にともなって筋肉がつき、いろいろな動きができるようになりますが、体の動かし方は誰にも教わらない、いわば「独学」。そのため、人それぞれにクセがつき、本来はこう動かすのが理にかなっている、というところを、勘違いによって負荷がかかりやすい動かし方をしてしまうのだと言います。
「アレクサンダーにおいて大事なのは、頭の中の体の認識と、実際の体のズレを修正すること。つまり、意識を変えることです。そのため、 『1日○回を△セット』というようなトレーニングは不要で、子どもから高齢者まで誰でもできます。思い込みや体のクセは長い年月をかけてできあがったものなので、リセットできるまでに時間がかかる人もいますが、うまく意識を変えられれば1回でできることも。少しでも感触がつかめると自分の体がラクになることが実感できて、より意識を変えやすくなっていくでしょう」
背骨は背中側にはない!? 姿勢のゆがみは背骨の位置の再認識から
勘違いによる間違った体の使い方の代表が「姿勢」。まずは自分の姿勢がどうか、上記のチェック項目で確認してみましょう。
1つでも当てはまるものがあった人は、首や肩のコリ、そこからの頭痛、背中や腰の痛み、冷えやだるさなどの症状につながる可能性があります。
「こうした症状を引き起こすスマホ首や内巻き肩、猫背の姿勢は、『背骨が背中にある』という勘違いから生まれています。背中を触ったときの骨はあくまで、背骨から出ている突起であり、背骨“本体”はもっと奥の方、体のほぼ中心にあります(下図参照)。
体の中心を通る背骨本体で体を支えている、と意識できると、ふだんの姿勢がとても自然でラクになりますよ。逆にいうと、それが意識できていないから、背中側の筋肉で無理に体を支えようとして、おかしな姿勢になってしまう…ということなのです」
木野村さん直伝! 猫背&反り腰を一瞬で直す「正しい立ち姿勢」
猫背と反り腰はセットであることが多いと話す木野村さん。「体の中心を通る背骨で支える」と意識できれば両方一度に直るんだそう。
「体を支える背骨が背中側にあるという勘違いから、腰のうしろに体重をかけようとすることで反り腰になり、それとバランスをとろうとして頭や肩が前にいき胸を丸めるため猫背に。まずは、背骨は背中側にまっすぐあるのではなく、背骨が『体の中心をゆるくS字を描くように通っている』を意識してみましょう。そして、頭はその上にふわりと乗り、肩は無理に引かず胸も張らない。この姿勢だと下腹も前に出ることがありません。“いい姿勢を保とう”と思わなくても、とてもラクでどこにも力みがないのを実感できるでしょう」
①胸を張ろうとせず、肩は無理に引かない。
②腰が反っていなければ、お腹を引っ込めなくても前に出ることはない。
③お尻は締めなくていい。
背骨と坐骨の正しい場所がわかると座り姿勢が快適&美しく!
デスクワークや電車の中など、本来はラクなはずの座り姿勢も、時間が長くなるとあちこち痛くなったり、腰や背中が痛くなったり。これも勘違いをリセットすることで直ります。
「坐骨ってお尻側にあると思っている方が多いのですが、体の前側かつかなり股の内側寄りにあります。坐骨がお尻側にあると思っていると、背骨が背中側にあるという思い込みとあわせて、座るときにかなり重心がうしろへ。その結果背中が丸まり、骨盤が前に滑ったような姿勢になってしまうんです。『坐骨は体のやや前側、股の内側寄り』と意識してみましょう。どこにも力みがない座り姿勢になり、長時間座っていてもお尻が痛くなりません」
いかがでしたでしょうか?
背骨座骨の正しい位置を認識するだけで、日常の立ち姿勢や座り姿勢がラクになるというアレクサンダー・テクニーク。次回の後編では、寝起きの体の不調やすぐに疲れてしまう脚の不調の解決法についてご紹介します!
撮影/田辺エリ イラスト/德丸ゆう 取材・文/遊佐信子