「老化」というと、50代、60代の話かと思うかもしれませんが、目の老化は早く、働きが最もよくなる10代後半をピークに、20代から老化が始まっているそうです。早い人では40代から老眼が始まります。FYTTE世代にも無縁ではない目の老化とその対策について、YouTubeで目の病気について発信する、メディアでもおなじみの眼科専門医、二本松眼科病院副院長の平松類先生に聞きます。
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30代から老眼鏡が必要な人も?
目の老化で、生活に影響が大きいのが老眼です。老眼は、加齢でピント調節に関わる毛様体筋という筋肉が固くなり、ピント調節がうまくいかなくなることで起こります。
「ものがはっきり見えるいちばん近い距離を近点といいますが、一般的に10代後半で8センチ、20代後半で12センチ、30代で25センチ、そして45歳ぐらいで30センチとなり、徐々に距離が大きくなっていきます。老眼になると、本や書類を手もとから遠く離して見る人がいますが、この近点が大きくなるためです。近点が30センチを越えると、老眼鏡が必要だと感じるようになります」
ところが、最近では、20代、30代でも老眼鏡が必要な人が増えているといいます。
「スマホの場合は、いちばんはっきり見えるのが20センチぐらいで、20代、30代でもスマホが見えづらくなってしまうからです」
さらに、近年では若い人たちにスマホ老眼も増加。このように「なんだか手もとが見えづらいなあ」と思っているうちに、いつのまにか老眼になっていた、というケースも多くなっているそうです。
老眼鏡をかけても、老眼は進まない
平松先生は、手もとが見えづらいと感じたら、老眼鏡の使用をすすめています。
「老眼鏡をかけると、ますます老眼がすすんでしまう、というのは俗説で、そんなことはありません。私も30代後半ぐらいから老眼鏡を使い始めました。そのほうがピント調節がラクになるため、目を休めることにつながります。作業効率を上げるためにも、手もとが見えづらくなったと感じたら、老眼鏡を使うといいと思います」
100円ショップでも老眼鏡は手に入り、これで事足りる気もしますが、どうなのでしょうか。テレビCMでもおなじみの拡大鏡(ルーペ)を使う手も?
「100円ショップの老眼鏡を使う場合は、“買物で値札を見るときだけ”などごく短時間にとどめましょう。拡大鏡は老眼初期ならOKです。ただ、小さくてぼやけて見えるものを拡大するだけなので、疲れやすくなります。ある程度、老眼がすすんだら老眼鏡がおすすめです。老眼鏡も度数が合っていることが大事です。一度眼科へ行って度数を調べ、処方箋を書いてもらってからメガネ店で購入するのが望ましいです」と平松先生はアドバイスします。
20代、30代の生活習慣が影響する目の病気
年齢とともに、目の病気のリスクも高まってきます。代表的なのは白内障と緑内障です。高齢者の病気というイメージがありますが、20代、30代の生活習慣が影響することもあるので注意が必要です。
白内障は、目のレンズにあたる水晶体がにごってくる病気で、白っぽくかすんでみえたり、視力が低下したりします。
「病気自体は60代以降で発症しますが、紫外線が大きく関係しています。北欧よりも赤道に近い国の人のほうが早く白内障になるという統計もあります。白内障は、紫外線をカットすることで、ある程度予防できるので、20代、30代からUVカットのサングラスやクリアグラスをかけたいですね」
一方、緑内障は、視神経が障害されて視野が欠けていく病気です。日本人の失明の原因の第1位です。
「緑内障は予防がむずかしく、また初期には自覚症状がないため、40代になったら眼底検査がおすすめです。会社や自治体の健康診断時に加えるとよいでしょう。また、原因のひとつは眼圧が上がることで、とくに強度近視はハイリスク。近視の人は進行しないように、手もとをみる時間を減らすといった対策をしましょう」
また、カロリーコントロールを意識した食事をする人もいるかもしれませんが、栄養不足、やせすぎが緑内障に影響することもあるそうです。
「やせすぎやたんぱく質の不足が緑内障のリスクを高めるという統計があり、注意が必要です。一方、太りすぎも眼圧の上昇に影響します。糖尿病といわないまでも、血糖値が高いことでも眼圧が上昇する可能性が高く、砂糖を多く含む食品やパン、麺類といった糖質の過剰摂取には気をつけましょう」
老眼も目の病気も、まだまだ先の話……と考えず、早めの対策が最善ですね。