私たちの体内には50兆個の細胞があると言われています。これら細胞のコントロールに重要な役割を果たす「マグネシウム」は、不足するとすべての不調に関係してくるとさえ言われるミネラルです。ところが、それほどまでに重要であるにもかかわらず、ほとんどの日本人に足りていないのが現状だそう。今回、編集部はオーガニックサイエンス主催の「アンチエイジングとマグネシウムの関係」をテーマにした勉強会に出席。分子栄養学、アンチエイジングに精通する美容外科医であり、ご自身もアスリートである黒田あいみ先生に、マグネシウムのとり入れ方とふだんの食生活で気をつけるべきことについてお話を伺いました。
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マグネシウムのくわしい働きについては「頭痛、筋肉痛、肌あれ、抜け毛、PMS…さまざまな不調にマグネシウム不足が関わっている!? 知らないことが多すぎるマグネシウムについて医師が解説」から読むことができます。
日本人のほとんどが、マグネシウム不足に陥っている?!
私たちの細胞の老化を遅らせるだけでなく、筋肉や骨、精神の安定にまで広く関わりをもつ重要なミネラル、「マグネシウム」。ぜひともしっかり摂取したいところですが、現状はどの年代も不足している傾向にあるとか。
「マグネシウムはミネラルの一種です。ミネラルは体内で作ることができません。そこで毎日摂取する必要があります。たとえば30~60代女性の推奨摂取量は1日290mgです。これに対して実際に摂取している量は、30代で約230~240mg、40代で約220~230mg、50代で約210~220mg、60代で約200~210mgと、どの年代の女性も不足しています。
マグネシウムは体内での吸収がもともと悪いうえに、食事中のカルシウムやリンの摂取が多いと吸収が抑制されます。また、私たちが生活の中でエネルギーを使うと消費されますし、ストレスがかかることでも消費が促されます。食生活が欧米化して、マグネシウムが豊富に含まれる海藻を昔ほど食べなくなったことや、食材そのものに含まれるミネラルが減っていること、加工食品を多く食べることでリンを必要以上に摂取しがちな傾向、ストレスフルな社会など、環境的にもマグネシウムが不足しやすくなりました。
だからこそ日々の食生活の中で、しっかり意識してマグネシウムをとっていく必要があります」(黒田先生)
基本は食事。マグネシウムの多い食品、減らす食品を把握しよう
「マグネシウムはあおさや青のり、わかめなど海産物に多く含まれています。そのほか玄米など未精製穀物、豆類、ナッツにも豊富です。必要な水分(1日1.5Lくらい)をきちんととることも大事です。というのも、マグネシウムは電解質のミネラルで体液中に存在するため、脱水もひとつのマグネシウム不足の原因になるからです。熱中症などで水分を補うときは一緒にマグネシウムもとるとよいでしょう。
一方で、体内のマグネシウムをよけいに消費したり排出してしまう食品もあります。それが、白米、小麦粉、砂糖などの精製された食品、加工食品、コーヒー、アルコールなどです。こうした食品をとる機会も多いと思いますので、マグネシウムはどんどんとらないと不足していってしまう、と考えてよいでしょう」(黒田先生)
上の画像は、食事で必要なマグネシウムを補おうとしたときのメニューです。黒田先生は「マグネシウムを補うには、これでも足りないくらいだし、マグネシウムだけを考えて食事をしていたらほかの栄養素が偏ってしまう」と言います。マグネシウム摂取の基本は食生活にありますが、食事だけで十分な量をとるのは難しそうですね。
マグネシウムは皮膚から取り入れることもできるミネラルです。次はマグネシウムの経皮摂取についてお伝えします。
マグネシウムは皮膚からの吸収ができる栄養素
「マグネシウムは経皮摂取ができるミネラルです。皮膚から直接とることで、前回お話しした保湿効果や、脚がつったときの筋肉の弛緩、虫さされといった炎症を抑える抗炎症作用など、即効性が期待できます。
マグネシウムの経皮吸収と言えば、エプソムソルトという入浴剤が有名かもしれません。ただしエプソムソルトでとれるのは海水に含まれる硫酸マグネシウムなので、硫酸も同時にとることになってしまいます。通常の入浴くらいでは気にすることはないと思われますが、1日1回程度にとどめておくとよいでしょう。そのほか、マグネシウムが含まれたクリームなどがあります。どんな形でとり入れる場合でも、体に安全で吸収率の高いものを選ぶようにしましょう」
今回のセミナーで紹介されていたマグネシウムを補うアイテムはこちら
マグネシウムはふだんの生活だけではなかなか十分な量を補うのが難しい栄養素です。そこで、今回のセミナーで紹介されていたオーガニックサイエンスの商品を2つ、ご紹介します。
●マグリポ
日本人のマグネシウム不足を解決したいという思いのもと、安全に効率よく体に吸収されるように作られた、日本で唯一の国内生産リポソーム化マグネシウムサプリメント。1本で不足しがちなマグネシウムをしっかり補給できます。
10g×30袋入り \8,610(税込)
●マグバーム
筋肉痛やこむら返り、むくみなど、マグネシウムが不足している箇所に直接ぬり込むことでマグネシウム取り入れることができるマグネシウムクリーム。しみにくく、お子さんにも使うことができます。香りは無香料(オリジナル)、ラベンダー、オレンジの3種類です。各100g \4,800(税込)
マグネシウムだけではダメ? 活力を底上げするために大切な食生活とは
ここまでマグネシウムの働きとその摂取方法を黒田先生に伺ってきましたが、私たちが健康の基盤を底上げしていくためには、自分たちの食生活を大きく見直してみることも必要だと先生は言います。
「私たちの体はすべて化学反応によって成り立っていて、『酵素』は化学反応を加速させるのになくてはならない存在です。そして、この酵素を体内で作っているのがビタミン・ミネラル類です。しかし、例えば30~50代の女性だと、マグネシウムのほかに亜鉛やビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンDが特に不足しがちなど、ビタミン・ミネラル類が全般的に足りていません。これらの栄養素が足りないと、酵素が作られずミトコンドリアがうまく機能しなくなり、あらゆる体調不良、精神的な不調へとつながってしまいます。この点を改善するためには、サプリメントや食事でビタミン・ミネラル類を補うだけでなく、加工食品や精製された食品を控えることも大切です。
ビタミン・ミネラル類の不足、加工食品や精製された食品のとり過ぎは腸内環境の乱れにもつながっています。今は20代の若者にも、腸内環境が悪くビタミン・ミネラル類が足りていないという人をたくさん見かけます。私自身がこうした傾向のある患者さんに栄養指導をするときは、検査に基づいてこちらが処方したサプリメントを飲んでもらい、同時に外食や買い食いを控え、砂糖を減らし、グルテン・乳製品・加工食品・体に悪いとされる油をカットするという生活を一定期間続けてもらいます。生活習慣を大きく変えるのはかなり大変だと思いますが、しっかり実践すれば、早くて2週間で効果が表れることもあります。ですので、不調が気になる人は、専門家のところで、自分の腸内環境や不足している栄養素などを検査し、適切な食生活を指導してもらうのも有効です。
今の例でもわかる通り、健康的な食生活を送ろうとすると、今まで好んで食べてきたものを引き算するケースも多くなります。とはいえ一生そのような生活を続けねばならないというわけではありません。一度しっかり症状が改善すれば、食生活に気をつける日もあれば、たまには友だちとの外食や好きなものを食べて過ごす日もあるといった感じで自分の心と体に相談しながら、バランスをとって生活していくことができると思います。
ともあれ、まずはビタミン・ミネラル類が全般的に足りていないというのは私たち現代人にある程度、共通して言える事柄ですので、マグネシウムを中心としたさまざまな種類のビタミン・ミネラル類を、サプリメントの力も借りながらふだんの生活の中で意識的にとっていくことをおすすめします」(黒田先生)