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がんの治療による抜け毛。自身の髪を生やすことに重点を置いた「アピアランスケアとしての頭髪治療」とは? #Omezaトーク
日本人女性が一生のうちにがんと診断される確率は2人にひとり、がんが死因となる確率は6人にひとりと言われています*。「がん」と診断されたとき、まずは治療のことが頭に浮かんでしまいそうですが、治療後の生活もまた大切な問題ですよね。抗がん剤治療などによって抜けてしまった毛に対するケアについて、女性のための発毛クリニック「クレアージュ」主催の勉強会で学んできました。
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「アピアランス」とは、外見、外観、容姿といった見た目を意味する言葉。「アピアランスケア」とは、「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」のことです。今回は、クレアージュ エイジングケアクリニック 総院長の浜中聡子医師に「抗がん剤治療後の抜け毛に対するアピアランスケア」について、同クリニック アートメイクアーティスト・看護師の木村明日美(あすみ)さんに「メディカルアートメイクによるアピアランスケア」について教えていただきました。
「外見」は、その人らしさ、自尊感情、尊厳に関わる大切な一面
「がん」は一生のうちに、2人にひとりが診断される病気ですが、寿命が延び、治療による生存率も上がることで「がんとともに生きていく」ことが当たり前の社会になりました。「がんとともに生きていく」とは、がんとともに、社会生活を続けていかなければならないことを意味します。
「がんの治療の過程で毛髪に関係するのは、手術時ではなく、抗がん剤治療のときです。薬剤ががん細胞だけでなく正常な細胞にまで影響を及ぼすことで、細胞分裂の活発な毛母細胞が強い影響を受け、脱毛してしまうからです。とくに女性ホルモンが影響する乳がんや子宮がんなど婦人科系のがんと抜け毛は深い関係にあります。髪が抜けることは事前に医師から説明されるものの、実際に抜けると大きな衝撃を受けるものです。
多くの場合、治療が終われば再び髪が生え始めます。ただし、新しく生えてくる髪は、質、量、色などさまざまな点で以前と同じとは限りません。また、頭頂部には毛が生えにくいという傾向もあります。がんの治療は、毛髪だけでなく、皮ふや爪など、いろいろな外見(アピアランス)の変化を伴うことがあります。どの部分に変化があっても、自分らしさが侵される重要な事柄です。こうした変化を受け容れるのは難しく、社会生活に支障をきたすことも多くあります。だからこそ『アピアランスケア』が大切なのです。クレアージュでは、こうした変化のうち、毛髪の変化に対応したケアを行っています。
抗がん剤治療後の抜け毛に対するケアとして、ウィッグや帽子、スカーフといったカモフラージュ療法があることは、よく知られているところでしょう。一方、『自身の髪を生やす』ことに重点を置いた頭髪療法については、あまり知られていないのではないでしょうか」(浜中先生)
クレアージュで行うアピアランスケアとしての頭髪治療は、薬の使用を必要最低限に抑えながら、高濃度発毛外用薬をメインに行われます。抗がん剤投与が終了したあとに開始されますが、がん治療と並行して治療を開始するケースもあるそうです。いずれにしても主治医との連携が欠かせないのがこの治療の特徴です。こうした頭髪治療は、まだまだ認知度が低いものの、「元の自分に戻りたい」という思いを抱えて来院する人の数は年々増えているそうです。
こちらの写真は治療例です。この方は乳がんの放射線治療後に新しく毛が生え始めましたが、とくに頭頂部の回復が悪く、来院しました。下の段が治療前、上の段が3か月の頭髪治療を行ったあとの写真です。頭頂部だけでなく、毛髪が全体的に濃くなっているのがわかります。
次に眉毛の抜け毛に行う医療アートメイクについて、「メディカルアートメイクによるアピアランスケア」と題し、アートメイクアーティスト・看護師の木村明日美(あすみ)さんからお話がありました。
脱毛症や傷跡のケアとしても◎ 外見の変化による精神的な苦痛をやわらげるアートメイク
メディカルアートメイクとは、皮ふの浅い部分に針(ニードル)を用いて色を入れていく施術のことです。汗や水などでも落ちないため、メイクを落としたあとも素顔に自信をもつことができます。医療従事者が行う医療行為であるため、一般的なサロンなどでは施術が受けられません。皮ふのターンオーバーの影響を受けるため、徐々に薄くなるというのも特徴のひとつです。
「たとえば、眉毛は顔の印象の8割を決めると言われています。がん治療をはじめ、その他の疾患によって眉毛が抜けたり、深い傷によって眉毛が一部生えてこなくなってしまったりしたことで、素顔を人に見られる辛さを抱えて生活している人もいます。
眉毛にメディカルアートメイクを施すと、自然に眉毛が生えているように見えるため、外見の変化による精神的な苦痛を緩和することができます。がん患者様について言えば、抗がん剤治療前の、眉毛が抜けてしまう前に、生えている自眉に合わせて施術していただくほうがよいのですが、治療中でも主治医の許可があれば、施術を受けることが可能です。抗がん剤治療後に、脱毛前の写真や普段のメイクをもとに、眉毛を再現することもできます。
また、まつ毛脱毛のアピアランスケアとして、アイラインアートメイクを施すこともあります。脱毛症や抗がん剤治療などでまつ毛が抜けてしまった方のほか、ストレスでまつ毛を抜いてしまう方が受けられる例もあります。アイラインアートメイクを入れると、本来のまつ毛の位置に色が入ることになるため、“まつ毛が生えていない感”が改善されます」(木村さん)
眉毛やまつ毛にメディカルアートメイクを施すことで、すっぴんを他人に見られることが怖くなくなり、友だちと旅行を楽しむことができるようになったという声も聞かれるそう。「多くの患者様が『メディカルアートメイクのことを知らなかった』『もっと早くやればよかった』とおっしゃいます。脱毛のことで悩んでいる方々の選択肢のひとつとして、ひとりでも多くの人に知ってもらえたらうれしいです」と木村さん。
自分の外見の変化が、自分らしく社会生活を送るうえでの負担やストレスにつながることは誰にでも起こり得るのではないでしょうか。「アピアランスケア」という考え方が、自分らしさをとり戻す糸口になるかもしれません。(編集まりりん)
*記事冒頭のデータは、国立がんセンターによるものです。https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
女性のための発毛クリニック「クレアージュ」
https://www.d-clinicgroup.jp/clinic/women/
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FYTTE編集部員が、みなさんの朝のお目覚ましになるようなダイエット・美容・健康小ネタをお届けするコラムです。