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【風邪予防】神秘のホルモン「マイオカイン」についてさらに深堀り!食べ物や軽い運動でも増えますか?【脂肪燃焼】
骨格筋から分泌される生理活性物質「マイオカイン」。免疫強化・脂肪燃焼・若返り・メンタルヘルス・認知機能など、健康や美容にいい効果があると近年注目を集めている、神秘のホルモンです。いま存在している約600種類のうちの、はっきりと効果がわかっているものは10~20種類のみ。まだこれから研究が進む未知領域ですが、運動することで増えるマイオカインの不思議を、【前編】に続き金沢大学の西川裕一先生に教えてもらいました。運動はしすぎるとダメ? 簡単な運動でも増える? まだまだ知らないマイオカインについて紹介する【後編】です。
Contents 目次
「運動は健康にいい」の真実は? <筋肉量が増える>という事実だけでは説明できない! 驚くべき効果が続々
運動することでマイオカインが分泌されることは前編でも説明しましたが、そもそもここ数年で急激にマイオカインの研究が進んだのはなぜなのでしょうか。その背景を、西川先生に教えてもらいました。
「もちろん運動すれば筋肉量が増えるなどして、体にいいことはわかっていましたが、 “実際なぜ体にいいのか?”についての明確な答えは出せていませんでした。ところが、近年マイオカインという生理活性物質が“筋肉を動かすこと”で分泌されているとわかり、さらにはその効果として認知症のリスクが減ったり、免疫力が高まったり、美肌やメンタルに作用するなど、いろいろな病気にかかりにくいということが調査結果で判明してきたのです。そしてこれらの現象は、単純に“筋肉量が多いから”という理由では説明がつかず、結果、マイオカインの効果だということが明らかになってきたので、いま専門家の間では『筋肉を動かすことが“模倣薬”になるのではないのか?』という期待のもとに研究が進められています」(西川裕一先生)
マイオカインを増やすには運動をして筋肉を動すこと。しかし、単純に “たくさん運動すればよい”かと言えば、そうではないと西川先生は言います。
「運動しすぎて筋肉痛になると、その補修にマイオカインが使われてしまうため、ホルモンとしての効果が表れにくいこともあります。ただし、筋肉痛になる加減は人によって異なるので、どのくらい運動したらよいということは一概に言えません。翌日に痛みが出た場合は、次回調整するようにして適正な運動量を見極めていくほかないですね」
筋肉痛はちょうどよく体を動かすためのバロメーター。マイオカインを恒常的に分泌させていけるような運動を習慣化しておくことがキーポイントになりそうです。
西川先生自身は、ふだんどのような運動をされているのでしょうか?「トレーニングアプリなどを使って自宅で『HIIT』を行っています。また、大学の研究室が6階なのでその昇り降りは毎回階段を使っています。血圧も下がり、半年で体重も3kgおちました」とのこと。
やはり日頃の運動習慣が大切ということですね!
そしゃくでも増える? ヨガやピラティスは効果的? きつい運動以外でも、マイオカインは増やせるの?
前編では、“マイオカインは高負荷の運動をすることで増えやすい”と解説しましたが、そうは言っても「そんなに負荷のかかる運動ができるかなぁ……」と不安になる人もいるでしょう。あまり強度が高くない、低負荷の運動でもマイオカインを増やすことはできるのか、西川先生にアドバイスをもらいます。
「マウスでの実験結果ではありますが、免疫力を高める効果が期待できる『IL-6(インターロイキン6)』なら、そしゃくするだけでもマイオカインは増えると言われています。また、日常的な運動やストレッチとしてヨガやピラティスをしている人も多いかと思いますが、胸式呼吸よりも腹式呼吸のほうが体幹をよく使うので筋肉の刺激にはなりやすく、インナーマッスルを鍛える動きは姿勢保持筋をたくさん使うので、安静にしている時でも代謝量を増やしてくれるでしょう。インナーマッスル自体は常時働いているため、今後は低負荷であったとしても、発現するマイオカインが多く出てくるのではないかと考えています」
よく噛むことでもマイオカインが増えると言うのは、かなりうれしい話! 普段はつい時間に追われてしまい食事の時間が短くなりがちな人も、時々はゆっくりと時間をかけて味わうことを、習慣化してみるのもいいかもしれません。
また、マッサージやストレッチでも増えるマイオカインはあるのでしょうか?
「それらで増えるマイオカインがあるかどうかは、残念ながらまだ分かってはいません。しかし、先ほどもお伝えしたように低負荷でも増えるマイオカインはありますので,今後ストレッチなどでも発現するマイオカインが見つかるかもしれません。」
「BDNF」や「アイリシン」は低強度の運動では増加しないそうですが、簡単な運動だったとしても、やらないよりはやったほうが筋肉を動かす習慣をつけるという意味ではきっといいはず。できる範囲から取り組んでみるのもいいですね。
チョコレート&カマンベールチーズでマイオカインが発現する! 食事でも「マイオカイン」を増やすことはできる?
“食べるものは体の資本”…ということで、運動する以外の方法としてマイオカインが増える食材についても聞いてみました。果たしてそんな都合のよい食材があるのでしょうか……。
「神経細胞の機能を向上させたり、再生を促して記憶力や認知機能を高めるマイオカイン『BDNF』には、うつ病や認知症の症状を改善させる効果がありますが、日本から発表されている研究結果では、カカオ72%のチョコレート25g程度を4週間食べ続けると『BDNF』が増えたという報告があります。また同じように、カマンベールチーズ2ピースを3か月食べ続けると、プロセスチーズを食べていた時よりも『BDNF』の量が増加したという報告があります」
なんとチョコレートとカマンベールチーズという2つの意外な食材が、マイオカインを増やしてくれるのだそう! しかし、だからと言って同じものばかりを偏食するのはNG。
「マイオカインは筋肉を動かすことで分泌されるので、土台となる筋肉づくりのための食事や、たんぱく質をはじめとする栄養素を意識してとることがそもそも大切です。また、次の研究とマイオカインとの関係性はまだ明らかになっていませんが、高カロリーなものをコーヒーなどのカフェインと一緒に食べると、脂肪になりにくいことは報告されています。これからさらに研究が進みますが、いまはマイオカインとカフェインの関連性についても注目されています」
まだまだベールに包まれている部分も多いマイオカイン。そして、運動習慣をつくって積み重ねていくほかには、マイオカインを増やす方法はないということもわかりました。風邪予防からダイエットまで、マイオカインの効果を存分に使って、この冬も元気に過ごしましょう!
取材・文/番匠郁