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お口のケアが全身の健康を左右する?! 今から始めたいオーラルケアのポイントとその理由とは? #Omezaトーク
「歯みがき」をはじめとするお口のケア。「むし歯予防」や「口臭予防」など、多くの人が口もとの健康のために行っているかもしれません。筆者もそのひとりでした。ところが今回、2つのオーラルケアに関する勉強会に出席し、口と全身の健康との深い関わりを学んだことで、日々の身近な行為である「歯みがき」に対する姿勢すらも、すっかり変わる結果に。そこで、なぜ口と全身が関係し合うと言えるのか、どんな風に口の中をケアしていくのがよいのかを、今回学んだ事柄をもとにお伝えします。
Contents 目次
今回、私が出席したのはライオン主催「ライオン“お口のエイジングケア※1”オンラインセミナー、Kenvue(ケンビュー)主催「『お口から健康委員会』発足・記者発表会」です。どちらの勉強会からも、口は体の入り口であり、口だけでなく体全体の健康を守るという観点からもオーラルケア(口腔ケア)が重要であることを学びました。とくに、ケアを怠ることで引き起こされる歯周病と全身疾患との関係は誰もが自分事としてとらえて、心すべきことだと感じました。
歯周病は、細菌の感染による炎症性の疾患です。歯ぐきの周りが赤くなったり腫れたりする初期の段階では痛みなどがないため気づかない人も多いのですが、歯肉出血は40~50代の2人にひとりがかかっているというデータもあります。歯周病による腫れや出血といった炎症は、口の中の悪性の菌をどんどん増やすことにつながり、歯を支える骨を溶かしていくため、最終的に歯を失うことにもなりかねません。また、こうした口腔環境の悪化は、じつは全身の炎症にも深く関わりがあると言います。
そこでこのコラムでは、口腔環境と全身の疾患との関係について、ライオン主催「ライオン“お口のエイジングケア※1”オンラインセミナー」で登壇された桐村里紗先生に教えていただいた内容を、口腔内を清潔に保つためのポイントについてはKenvue(ケンビュー)主催「『お口から健康委員会』発足・記者発表会」に登壇された安達奈穂子先生に教えていただいた内容をご紹介します。
※1 年齢に応じたケアのこと。
ではまずは、桐村里紗先生に全身と口腔の関係を教えていただきましょう。
最新の腸活は口腔ケア!? 全身に関わるお口の環境
桐村里紗先生は内科医です。なぜ内科医の医師がオーラルケアの話を?と思うのですが、桐村先生によると、「全身疾患と口腔ケアは深い関係があるから」だと言います。
「口から腸は1本の管でつながっています。口は体の入り口です。口腔内から出る唾液を、人は1日に1~1.5L飲み込んでいます。口腔内には常在細菌がいて、体を病原性のウイルスから守ったり、免疫を高めたりしてくれていますが、口腔内のケアを怠ると、歯周病菌のような悪性の菌が増えてしまいます。
たとえば歯周病菌の代表格にジンジバリス菌という菌がいます。ジンジバリス菌は全身の疾患とも深く関係している病原性の細菌なのですが、重症な歯周病の患者さんでは、この菌を1日に10億個から100億個、飲み込んでしまうこともあります。もちろん、悪性の菌は胃酸によって殺菌消毒されます。けれどもストレスや薬の影響、病気などさまざまな原因で胃酸の分泌が低下していると、ジンジバリス菌が腸まで届いてしまいます。また、ジンジバリス菌はバイオフィルム(ねばねば)を作りやすく、この状態だと胃酸に耐性を示すことも分かっています。このようなわけで、腸内からジンジバリス菌などが検出されることは珍しくありません。
また、歯周病菌に関係する常在細菌にフソバクテリウムという菌があります。これは大腸がんのどのステージにも関わっていることが分かっています。一方、大腸がん患者で歯周病をもっている方が、3か月の口腔ケアによって口の中の環境をよくした結果、便の中のフソバクテリウムが減少したということもわかっています。つまりしっかりとした口腔ケアを行えば、腸の中に病原性の菌が落ち込むのを防げるということです。
口腔内にも腸内にも正常な細菌フローラがあれば、正常なバリア機能が働き、バランスよく免疫が働きます。ところが今見たように、口腔内に悪性の菌が多くいると腸内フローラの乱れにつながり、腸内のバリア機能が崩壊するため、さまざまな刺激や外敵を受け入れてしまいます。その結果、免疫が過剰に反応して炎症を起こすと全身の血管が傷つき、全身疾患に結びつきます。また、腸の粘膜が炎症を起こしてバリア機能が壊れると(リーキーガット)、刺激や外敵がますます増えるため、免疫がさらに過剰に反応して全身に影響を及ぼす事態に陥ります。
全身疾患とは、脳卒中、脳梗塞、アルツハイマー病、認知症、心疾患、膵臓がん、2型糖尿病、結腸・大腸がんなどのことで、じつは早産・低体重児出産も、歯周病菌と関わりがあるのです。
「歯周病」と聞くと、年齢層が少し高めの人たちがかかるものというイメージがあるかもしれませんが、10歳からかかっている例もありますし、じつは女性は歯周病リスクが高いということも、押さえておいてほしいポイントです。それは、女性ホルモンであるエストロゲンは、特定の歯周病菌を増やす働きがあり、同じく女性ホルモンであるプロゲステロンは炎症を促進する働きがあるからです。
歯周病は、歯肉炎の段階ならば治りますが、ひどくなるほど完治が難しくなります。歯ブラシの回数を増やしたり、デンタルフロスや歯間ブラシを使ったりといった日々のケアがもちろん大事になりますが、口腔内の状態を自分自身で判断するのは難しいですし、歯周ポケットケアや歯石の除去には歯科の受診が必要です。全身疾患や生活習慣病の最も源流にあるのがお口の環境の悪化だと考えて、お口のケアを習慣づけていってほしいと思います」(桐村先生)
体の中の疾患だけでなく、体のフレイル(衰え)を予防するためにも口腔ケアをしっかりすることが重要だと桐村先生は言います。口腔内の健康を保つために行うケアのひとつとして、同セミナーではライオン担当者より毎日のルーティンとして手軽にできるデンタルリンス習慣が紹介されました。
次は、Kenvue(ケンビュー)主催「『お口から健康委員会』発足・記者発表会」で登壇された歯科衛生士の安達奈穂子先生に教えていただいた、口の中の健康を守る方法をご紹介します!
口の中の清潔を守るためにチェックしたい3つのポイント
「みなさんはこのような行動をしていることはないでしょうか」
安達先生が提示したスライドには「お口のケアは歯ブラシだけ」「家事や仕事中は、カフェ・オレやミルクティーをちびちび飲む」「歯が痛まないので歯医者さんには何年も行っていない」と、多くの人がドキッとするような行為が書かれています。これらの行為はすべて口の中にいる悪性の菌を増殖させ、歯周病やむし歯の進行につながるNG行為なのだそう。
「歯の二大疾患と呼ばれる歯周病とむし歯は、どちらも口腔内の病原性の菌が引き起こす病気であり、歯を失う原因の8割にのぼります。歯がなくなると、食事のときに不自由になるだけでなく、おしゃべりがしづらく、自信をもった笑顔が難しくなるというように、社会的な問題が起きてきます。さらに、口腔環境の悪化は全身の疾患にも影響しています。だからこそ、口の中の清潔が何よりも大事と言えるのです。先ほどのNG行為と照らし合わせながら、適切なケアを見ていきましょう」(安達先生)
物理的な汚れ除去だけでなく化学的殺菌を
口の中全体には良性・悪性を含めて1000億個の細菌がすみ着いています。また、歯の表面には複数の種類の菌が付着し、互いを守るためにくっついてバイオフィルムというねばねばを作っています。悪性の菌はおもに食べものや飲みものに含まれる糖分をエサに増えていくため、口の中の汚れを放置すると歯周病やむし歯につながっていくのですが、これらの汚れは歯ブラシによるブラッシングだけでは取り除き切れません。ブラッシングに加えて、デンタルフロスで歯間の汚れを取り、マウスウォッシュで口全体を化学的に殺菌するのが有効です。
ちびちび飲食のあとは必ずケアを
カフェオレやミルクティーなど、お砂糖やミルクの入った飲みものをちびちび飲みながら仕事や家事をされる方は多いかもしれません。お口の中に糖分が常に在り続けるような状態もまた、歯周病やむし歯のもとになります。できれば時間を決めて飲食し、そのあとにケアできると理想的です。
歯科医受診は定期的に
念入りにケアしているつもりでも、細かいところや歯周ポケットの奥など、セルフケアだけで取りきるのが難しい汚れがあります。また歯周病は自覚がないまま進んでしまうことが多くあります。痛みや不具合がなくても、ぜひ定期的に歯科を受診し、口腔内をケアしてほしいと思います。
「口の中は『歯』だけではありません。歯ぐき、舌、さらに粘膜も含めて『口』であり、『口は体の入り口』です。口全体を清潔に保つことが、感染症の予防にも有効ですよ」と安達先生。これからの季節、口腔内のケアはますます重要になりそうですね。
いかがでしたか。口と体の健康における相関関係は、まだまだ知らない人も多いのではないでしょうか。小さなアイテムで始めることができるお口の手入れは、手軽にできて大きなリターンが期待できる数少ないヘルスケアとも言えます。また、何気なく行っている日々の習慣もオーラルケアと深いつながりがあるのだと改めて感じさせられました。筆者も今日から、昨日よりももっとていねいに、口の中を清潔にしていきたいと思います。(編集まりりん)
【教えてくださった先生】
「最新の腸活は口腔ケア!? 全身に関わるお口の環境」
桐村里紗先生/M.D.医師・認定産業医
公財)日本ヘルスケア協会 プラネタリーヘルス・イニシアティブ代表理事 tenrai株式会社代表取締役医師。東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 道徳感情数理工学主催/共同研究員。
「口の中の清潔を守るためにチェックしたい3つのポイント」
安達奈穂子先生/歯科衛生士
歯科衛生士。東京科学大学(Science Tokyo)大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野講師。2008年東京医科歯科大学(現・東京科学大学)歯学部口腔保健学科卒業、2012年東京大学大学院公共健康医学専攻修了(公衆衛生学修士)、2018年同大学院社会医学専攻修了(博士[医学])。
Omezaトークとは…
FYTTE編集部員が、みなさんの朝のお目覚ましになるようなダイエット・美容・健康小ネタをお届けするコラムです。