鉄分摂取において「種類選択」が必要な理由

前回の記事でもお話があったように、鉄分を豊富に含む食材は限られていること、摂取量の多い植物性食品の鉄は、一緒に食べる食品の組み合わせによって吸収率を高めることが大切になります。鉄のとり方は、知識と意識を持って積極的に食生活にとり入れることが大切。
だけど、食生活のみで必要な鉄分をとるのは難しい…その理由は？
また、鉄分の種類や効率よく鉄分補給をするための方法を教えてください。

「植物性食品に含まれる鉄（大豆やほうれん草など）は非ヘム鉄と言われています。胃酸で還元されてイオン化され、ほかの栄養素と一緒にとることで吸収率を高めます。吸収率を高めるためのよい組み合わせは、たんぱく質とビタミンCです。

肉や魚の赤身（イワシやレバー、貝類など）の動物性食品に含まれるヘム鉄は人体への吸収率が高いことが特徴です。私たちの食生活を考えると、野菜や海藻類などから多くの鉄を摂取しています。つまり、吸収率を考えると動物性（ヘム鉄）をとるのがいいのですが、鉄の含有量で考えると野菜（非ヘム鉄）が多い。だから、たんぱく質やビタミンCと一緒にとることが大切なのです。
食生活においては主食、主菜、副菜、フルーツなど、バランスのいい食事の中で鉄を意識してとることが鉄分を補給する方法のひとつです」（川口先生、以下同略）

忙しい現代人の食生活は不規則だったり、バランスのいい食事を毎食とるのは、なかなか難しそうです。

「そうですよね。日本人の食事摂取基準も見直されたので（上限撤廃/2025年版）、不足している鉄については、年代やそれぞれのステージにおいてサプリメントを活用されてもいいと思います」

一時期、サプリメントの健康被害などの情報もありましたが、鉄のサプリメントはとりすぎても問題ないのでしょうか。

「スポーツ選手や運動習慣のある人（学生など）は、ランニングなどで足裏を叩くので赤血球が壊れたり、大量の汗をかく状況にある場合には30～40mg※程度をとるように勧めています。普通の人でも鉄20～30mg※ならとっても大丈夫です。それよりも、足りないほうが生活に負担がかかります。※１日の摂取量。一度に摂取せず、朝昼夜に分けてコツコツとることがポイント。

消費者庁の記載では、１日に鉄50～108mgを長期に過剰摂取したことによる健康被害が公表されています。鉄50～60mgの場合は、吐き気や体調不良などの症状が出る可能性があります。これは過剰にとりすぎた際、肝臓のペプシジンの機能が衰えている（遺伝性のものと鉄過剰投与によるもの）場合に代謝されにくくなるからです。鉄は肝臓で代謝されるので、肝臓の機能が低下している人は鉄のとり過ぎには気をつけてください」

鉄を効率よくとる選択肢。「次世代型鉄分（NDS化鉄）」と「フェリチン鉄」とは？

続いて、第三の鉄と言われる「次世代型鉄分」について教えてください。どういったもので、従来の鉄と比べて何がすぐれているのでしょうか？
※ここでは、ミネラルなどの食品素材の開発や製造を手掛け、次世代型ミネラルの研究をされている、太陽化学株式会社の宮﨑さんの解説も交えてご紹介します。

「次世代型鉄分（NDS化鉄）は、いろいろな加工法があると思うのですが、じつは20年前からあってスポーツ選手や運動をする学生はとり入れています。
通常の鉄剤の特徴として、摂取時に鉄独特の『におい』や『味』、胃腸障害（ムカつきや便秘）になりやすいなどの副作用があると思うのですが、コーティングすることでそういった症状が緩和されるのです。また、加工することで吸収されやすい鉄になり、日々の生活の中で継続しやすい。吸収効率がいいので、サプリメントとして機能性を持たせていることが今回注目されていますね」（川口先生）

「NDS化鉄は、昔から食品（とくに牛乳やヨーグルト）やサプリメントでも使っていただいておりました。あらためて昨今、隠れ貧血の割合が増え、食事摂取基準が見直されたことで、とり入れやすい鉄のサプリメントも選択肢のひとつとしておすすめしています。
NDS化鉄は特殊コーティングし、従来問題視されていた鉄味や胃への影響が少なく、ムカムカなどが軽減されます。非ヘム鉄を超微粒子化して、吸収率を高めた鉄分です」（宮﨑さん/太陽化学）

次世代型鉄分（NDS化鉄）が20年も前からあったことに驚きました。吸収率が低い鉄を、加工法によって吸収率を高め、体への負担も少なく安全性が認められているサプリメントならとり入れてみたいです。
あと、最近「フェリチン鉄」という鉄も聞くのですが、こちらについても教えてください。

「フェリチン鉄は、フェリチンの大豆由来のたんぱく質と鉄をくっつけてより吸収されやすくなっています。NDS化鉄と同じ、胃への負担が少なく、吸収されやすいのが特徴ですが、NDS化鉄は20年以上前から一般食品（牛乳やヨーグルト）に入っており、消費者のみなさまの食経験も豊富にあり、且つ体内への吸収性が高い臨床データなどがいろいろあります」（宮﨑さん/太陽化学）

最近出てきた新しい鉄「フェリチン鉄」と、長年使われてきているけれど改めて注目されている「NDS化鉄」の２種類があるということですね！

[まとめ] 鉄分を効率よくとるコツ！ 鉄分を摂取する際の選択肢や選び方

最後に、これまでのお話にもありましたが、食事で鉄をとる際のコツ・ポイント。そして、鉄を摂取する際の選択肢や選び方について教えてください。

「私たちの食生活では野菜から鉄を補給することが多いけれど、野菜（非ヘム鉄）だけでは体内に吸収されにくいので、主菜、副菜のバランスのよい食事からとることが大前提。鉄分が豊富に含まれている食材が何かを勉強して、その知識を活かして食事にとり入れるといいですよね。
たとえば、たんぱく質をとれる親子丼に、ほうれん草のおひたしをプラスするとか。食事に鉄の多いものを１、２品必ず入れるように食材を選ぶことも鉄を補給する方法のひとつです。

また、サプリメントから補給する選択肢もあることを知っておくことも大切。サプリメントや口にするものは、“飲みやすい、とりやすい、おいしい”、じゃないと続かないので、続けられるものがいいと思います。無味無臭でとるタイミングや飲みものとの組み合わせの制限がないものなどはいいですよね！
今は手軽にとり入れられる鉄のサプリがあるので、サプリメントも種類があることを知識として持っておくといいですね」（川口先生）

ありがとうございました！
今、日本人のどの世代でも鉄分が足りていない状況であることを知って、まずはバランスのいい食事の中で、鉄が豊富に含まれている食材をたんぱく質やビタミンCと一緒にとることを意識する。
そして、今回教えていただいた体への負担（におい、胃への影響など）が少なく、吸収率が高い鉄サプリメントなどの活用や、鉄分入りの商品などにも目を向けてみるのも鉄を補給する方法（選択肢や選び方）であること。

鉄分の基礎知識（種類や働き）や最新の鉄サプリメントなどのお話、とても勉強になりました！
この記事を読んでくださった読者のみなさんの参考にもなればうれしいです！

■取材協力：太陽化学株式会社
■取材・文／FYTTE編集部