最近、テレビなどのメディアで「口内フローラ(口腔内細菌叢)」という健康キーワードが話題になっています。フローラとは、花畑という意味。細菌の集まりを顕微鏡で見ると花畑のように見えることから、イメージしやすいように使われています。口の中にはどんな菌が住んでいるの? 悪玉菌はどこからやってくるの?歯学博士・クラジ歯科医院院長の倉治ななえ先生に教えていただきました。
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腸内のように、口内にも細菌が住んでいる
口内フローラと聞くと、腸内細菌の集まりを表した「腸内フローラ」という言葉を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。
「腸内にさまざま細菌がいるように、口内にも何百種類もの細菌がいて、虫歯や歯周病を発生・進行させる“悪玉菌”が潜んでいる場合もあります。
口腔と腸は同じ消化器系ですが、口の中は外部からの影響を受けやすいので、いつも一定の細菌バランスではありません。
呼吸をしたり、飲食をしたり、唾液を出したりするため、口内の細菌バランスは変化しやすいのです。
口内にいる細菌の多くが、悪いことも良いこともしない日和見菌(ひよりみきん)です。しかし、口内環境が悪化すると日和見菌が悪玉菌の味方につき、虫歯や歯周病が進行します」(倉治先生)
全身の病気のリスク増! 歯周病菌をあなどってはダメ
口内に悪玉菌が増えると、ほかの臓器の健康にも影響が出るのでしょうか?
「歯周病菌は、歯を支える歯周組織を破壊するだけではなく、全身のあらゆる疾患を招く恐ろしい菌です。
歯茎には毛細血管が通っていて、歯周病菌が血管の中に入ると血液にのって全身のすみずみに運ばれ、動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病などの引き金になることがあります。
また、歯周病菌の出す毒素は子宮を収縮させるホルモンに似ていて、妊娠中の人が歯周病を患っていると早産や低体重児出産のリスクが高くなることもわかっています」
口内にいなかった「悪玉菌」はどこからやってくる?
なぜ、虫歯菌や歯周病菌に感染してしまうのでしょうか。
「生まれたばかりの赤ちゃんの口内には、力の強い悪玉菌がいません。
多くの場合、親など家族を中心としたほかの人の“唾液”を通じて、虫歯菌や歯周病菌がうつります。
例えば、強力な虫歯菌のひとつであるミュータンス菌は、日本人の成人の約9割が保有していて、1歳7か月~2歳7か月の間に、口移し、箸やスプーンの使い回しなどによって、親などの唾液から感染することがわかっているんです。
また、歯周病菌もほかの人の唾液からうつると考えられています。
キスをしたり、複数の人と大皿料理や鍋料理を直箸で食べたり、皿を共用したりすると、少量の唾液でも歯周病菌に感染してしまいます」
では、口内に住んでいる悪玉菌をやっつけるには、どうすればいいのでしょうか。
「歯科医院で検査を受け、定期的にクリーニングをしたり、正しい歯磨きを心がけたりすれば、口内の悪玉菌を減らして虫歯や歯周病を防ぐことができます」
日々、体型やヘアメイクなどに磨きをかけている人でも、口の中のケアを意外とおろそかにしていることもあるかも!? 大きな病気を引き起こす可能性もあるなんて、恐ろしいですね。ぜひ今一度、毎日の歯磨きや口腔ケアを見直してみませんか?