目の前に、黒いものが飛んで見える、糸くずのようなものが見える……こうした見え方の異常があったら、飛蚊症かもしれません。みさき眼科クリニックの石岡みさき先生に飛蚊症について伺いました。
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飛蚊症は、老化現象のひとつ。気にせずつき合っていこう
飛蚊症は、目を開けているときに、虫が飛んでいるように見える、糸くずのようなものが見える状態のこと。特に、白い壁などを見ているときに、はっきりと自覚することが多く、視線を動かすと“見えるもの”が追いかけてくるような動きをすることもあります。
「原因は、加齢です。ほぼ、すべての人に起こるといっていいでしょう。眼球は硝子体というジェル状の物質で満たされていますが、加齢で硝子体に濁りが生じ、その影が網膜に映ることで、虫や糸くずのようなものが見えるのです」(石岡先生)
また、加齢で硝子体が縮むことがあり、それにつられて網膜にぴったりくっついていた硝子体が前方に移動することで、丸い「輪」のようなものが見える場合もあります。
「加齢が原因の場合、硝子体のにごりは取り除く必要はないもので、したがって治療法もありません。見えているものが消えることはありませんが、将来的にも、視力や見え方などに影響を与えることもありません。症状は不快かもしれませんが、老化現象の一つと捉え、なるべく気にせず、つきあっていきましょう」(石岡先生)
急にいつもと違う症状が出たら、網膜剥離のサインかも
しかし、網膜に穴があく「網膜裂孔」、網膜がはがれる「網膜剥離」でも、飛蚊症が起こります。次のような症状には、注意が必要です。
・急に視力が低下する
・稲妻のような光が見える
・見えている飛蚊症の数が急に増える
・視野が大きく欠ける
などです。
「急にいつもと違う症状が現れ、ひと晩たっても消えないようであれば、なるべく早く眼科を受診しましょう。一刻を争うわけではありませんが、放っておくと失明の恐れもあります」(石岡先生)
網膜は神経の一種。はがれた期間が長くなるほど、視力の回復がしにくく、見えにくさが残ってしまうそうです。網膜剥離の手術は入院が必要ですが、日帰りで可能な場合もあります。一方、穴があいただけの場合は、日帰りのレーザー手術も可能です。
飛蚊症が現れたら、散瞳検査を
飛蚊症の症状が現れたら、網膜に異常がいないかどうか確かめるためにも、眼科で散瞳検査を受けてみましょう。
「散瞳検査は、点眼薬で瞳を広げて行う検査ですが、薬が切れて瞳が元に戻るまでの4~5時間は周囲がぼんやり見えるため、運転ができないなど日常生活に支障が出ることもあります。仕事は半休を取るなど、ゆったり時間を確保できる日がおすすめです」(石岡先生)
取材・文/海老根祐子