便秘に悩む女性は、じつに2人に1人というデータがあります。けれども、そもそも「便秘ってなに?」「便秘になると腸内は、どう変わるの?」――知っているようでいて知らないことも多いのではないでしょうか。「腸活 基本のキ」第4回では、メジャーな症状でありながらも、意外と知られていない便秘の実態について、おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎先生に伺いました。
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便秘の定義を知っている?! 実は幅広い便秘の症状
医学的な根拠に基づく医療指針「慢性便秘症診療ガイドライン2017」には「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」が、便秘の定義と記されています。もう少し分かりやすく説明すると、出るべき便がスッキリかつ、しっかりと出ない状態を便秘と呼びます。
具体的には、3日以上、便が出ない状態が便秘。また、便が毎日出る、1日に何回も出る、そして下痢をしている場合であっても、お腹が張る、残便感がある、お腹に違和感がある、お腹が痛い場合は、便秘といえます。
加えて、胃に不調を感じる、吐き気がある、背中や腰が痛い場合も、便秘の可能性があります。
「胃痛などの不調を感じて、胃カメラで検査をしても異常がない場合、実は、便秘が原因の場合があります。便が腸にたまった状態が続くと、食べ物が胃に長く留まることになり、胃痛や胃もたれの症状を招くことがあるのです。また、排便が滞ると、腸内にたまった圧を上から出そうとして吐き気を感じることも。そのほか、背中や腰に痛みがあり、整形外科で治療を受けているのに、なかなか改善できない場合も、便秘が痛みを引き起こしているケースがあります。不調が続く場合は、専門医を受診してみてください」(大竹先生)
その便秘、全身に悪影響を及ぼしてるかも……
便が腸の中に長くとどまっていると、便の水分がどんどん吸収されて硬くなります。硬くなった便は腸内で動きにくく、排出されにくいため、便秘につながるのです。
便秘になると、腸内環境が悪くなり、腸内細菌の悪玉菌が増殖します。悪玉菌は有害物質を作り出し、有害物質は腸壁から血液中に吸収されて体内をめぐります。その結果、肌荒れや頭痛、肩こり、だるさ、肥満など、全身に悪影響を及ぼすことに。
「さらに、悪玉菌は発がん物質を作り出すこともあります。腸内環境の影響を受けやすいがんと考えられているのが、大腸がん、肝臓がん、乳がんです。便秘を甘く考えず、腸内環境を整えることが、がんのリスク回避のためにも大切です」(大竹先生)
便秘にまつわる素朴なギモン Q&A
●なぜ、便秘は女性に多いの?
「女性ホルモンが大きく関係しています。厚生労働省のデータによると、便秘を訴える男性は100人中26人。女性は48.7人(平成25年国民生活基礎調査)と、便秘に悩む女性が多いことが報告されています。便秘が女性に多い理由は3つあります。」(大竹先生)
【理由1 女性ホルモンの影響】
生理前になると、女性ホルモンの黄体ホルモンが分泌されますが、黄体ホルモンには血管に水分を引き込む働きがあります。そのため、便の水分が奪われ、硬くなって便秘につながるのです。
【理由2 筋力の弱さ】
男性に比べて筋肉量が少ない女性は、排便を促す腹筋まわりのインナーマッスルも弱く、便秘を招きやすいのです。
【理由3 ダイエットによる悪影響】
胃に食べ物が入った重みで腸が刺激され、便が排出されます。ダイエットで食事制限すると、腸への刺激が少なくなり便秘がちに。また、減量を目的とした偏った食事が、便通をよくする植物繊維を不足させ、便秘を招くケースもあります。
●運動しているのに便秘を改善できなのは、なぜ?
「激しい運動は腸の動きを止めます。運動をすると腸が動き、便通がよくなりますが、長距離のマラソンやジョギングなど、激しい運動は腸の動きを止めてしまい逆効果に。おすすめの運動は、ウォーキングです。歩く振動で腸の蠕動運動が活発になり、自然な形で便意をもよおし、便秘を解消することができます。厚生労働省では、1日8000歩のウォーキングが推奨されています。」(大竹先生)
●野菜を食べても、便秘が続いています…。
「不溶性食物繊維のとりすぎが原因かもしれません。野菜にも多く含まれる食物繊維は便秘解消に効果的ですが、食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。不溶性植物繊維はとりすぎると便秘を悪化させることがあるので気をつけてください。不溶性植物繊維を多く含む食材は、キャベツ、レタス、芋、こんにゃく、玄米など。2種類の食物繊維をバランスよくとることが大切です。」(大竹先生)
今すぐ、便通がよくなる「考える人」の前傾姿勢
スムーズな排便のために即実践したい、排便時の姿勢があります。一般的な洋式トイレでの姿勢をご紹介します。
便座に座ったら、ロダンの「考える人」のようなかっこうをイメージしましょう。かかとを少し浮かせて前傾姿勢になり、太ももに肘をつけます。
その姿勢で、深呼吸をしながら、お腹に「の」の字を書くように時計回りにマッサージ。逆回りは逆効果になるのでNG。そして、排便の時間は3分以内に。長時間いきむと、痔につながる危険があります。
「便通をよくするには、便意を感じたら、すぐにトイレに行くのが鉄則。便意を我慢し続けていると、直腸性便秘を起こしやすくなります。直腸性便秘とは、肛門のすぐ近くの直腸まで便がきているのに排便につながらない便秘の症状です。浣腸をして排便をするクセがついている人も、直腸性便秘をおこしやすいので気をつけましょう」(大竹先生)
次回は、「第二の脳」と呼ばれる腸の働きについて、大竹先生に詳しく教えてもらいます。消化・吸収だけではない腸のすばらしい役割について知っていきましょう!
取材・文/野口美奈子 イラスト/黒川ゆかり